不等式 に関する58記事をまとめました。くわしくは各リンク先を見てください。
不等式のポイント1
不等式では,方程式と同じく両辺に同じ数を足したり引いたりできる。つまり移項できる。
→一次不等式の解き方と検算方法
例題
次の不等式を解け。
(1) log2(x+3)<2log2(x+1)
(2) log0.5x+1≧log2(x+1)
(3) (log2x)2≦log2x+2
→対数不等式の例題と解き方
ジョルダンの不等式
0≤x≤2π
において,
π2x≤sinx≤x
→ジョルダンの不等式とその3通りの証明
三角不等式
x
の「大きさ」を
∥x∥
と書くとき,いろいろな「大きさ」に対して以下の不等式が成立する。
∥x+y∥≦∥x∥+∥y∥

→いろいろな三角不等式(絶対値,複素数,ベクトル)
分数不等式とは,
2−x−2x−4≧x−16
のように,分数式を含む不等式のことです。
→分数不等式のおすすめの解き方と例題
問題
eπ>πe を証明せよ。
→有名不等式 e^π > π^e の証明
相加相乗平均の不等式
相加平均≧相乗平均
つまり,すべての a,b>0 に対して 2a+b≧ab
→相加相乗平均の不等式:意味・例題・おもしろい証明
f(x)=axm+bx−n(x>0)
(ただし
m,n
は正の有理数で a,b>0)という関数の最小値は,相加相乗平均の不等式を使って求めることができる。
→相加相乗平均の不等式を用いて関数の最小値を求める
コーシーシュワルツの不等式
任意の実数 ai,bi に対して,
(a12+a22)(b12+b22)≧(a1b1+a2b2)2(a12+a22+a32)(b12+b22+b32)≧(a1b1+a2b2+a3b3)2
という不等式が成立する。
より一般に,任意の正の整数 n に対して,
(i=1∑nai2)(i=1∑nbi2)≧(i=1∑naibi)2
という不等式が成立する。
→コーシーシュワルツの不等式とそのエレガントな証明
有名不等式
任意の実数 a,b,c に対して,
a2+b2+c2≥ab+bc+ca
等号成立条件は,a=b=c である。
→有名不等式a^2+b^2+c^2≧ab+bc+caのいろいろな証明
ヤングの不等式(Young's inequality)
a,b>0,p,q>1,p1+q1=1
のとき,
pap+qbq≥ab
等号成立条件は ap=bq
→ヤングの不等式の3通りの証明
ルートの和を上からおさえる公式
ax+by≦(a2+b2)(x+y)
→ルートの和とシュワルツの不等式
方針
対数関数と1次関数の積なので,2階微分は扱いやすい式(有理式)になることが分かります。多少計算は大変ですが,見通しが立っているので安心して計算できます。
→微分を用いた不等式証明の問題
有名不等式
任意の正の実数 x に対して
logx≦x−1
→有名不等式logx≦x-1の証明と入試問題
二項係数の上界・下界
-
(kn)k≦nCk≦(kne)k
-
n+112nH(nk)≦nCk≦2nH(nk)
→二項係数の上界・下界を与える4つの不等式
オイラーの定数
γ=n→∞lim(k=1∑nk1−logn)
をオイラーの定数(オイラー・マスケローニ定数)といいます。
→オイラーの定数γの意味と東大の過去問
京都大学特色入試2024大問1
2 以上の自然数 n に対して,n を割り切る素数の個数を f(n) とする。例えば n=120 のとき,120 を割り切る素数は 2 と 3 と 5 なので,f(120)=3 である。不等式 f(n)≧2n を満たす 2 以上の自然数 n をすべて求めよ。
→素因数の数の評価~京大特色2024
問題(東北大学理学部数学科2022AO)
n を3以上の整数とする。正 n 角形 A の周の長さと円 C の周の長さが等しいとき,A の面積 S と C の面積 T の大小を比べよ。
→円と正多角形の間の等周問題~東北大学AO2022
定理
π を円周率とする。正の整数 n に対し
anbn=∫02−31+x21−x4ndx=∫02−31+x21+x4n+2dx
とおく。
- n→∞liman=n→∞limbn=12π を示せ。
- 3.141<π<3.142を証明せよ。ただし
1.7320508<3<1.7320509
である。
→arctan のマクローリン展開を用いた円周率の計算~大阪大学挑戦枠2013
京大特色2020 第3問
整数
k,n は 0≦k<n を満たすとする。以下の設問に答えよ。
-
f(x)=xn,g(x)=xk とする。1≦x<y に対して,次の不等式がなりたつことを示せ。
∣∣f(x)−f(y)g(x)−g(y)∣∣<x1
-
f(x),g(x) を実数係数の整式で,f(x) の次数を n とし,g(x) の次数を k 以下とする。f(x0) が整数となるすべての実数 x0 に対して g(x0) も整数となるとき,g(x) は x によらず一定の整数値をとることを示せ。
→多項式関数の性質の活用~京大特色2020から
京都大学特色入試2025第3問
座標平面における領域
A={(x,y)∣y≧ex}
で定まる図形 A を考える。A に対して,原点を中心とする回転や平行移動を,何回か行って得られる図形を n 個用意し,それぞれ A1,A2,⋯,An とする。
このとき,A1,A2,⋯,An により座標平面を覆うことのできる n の最小値を求めよ。
→図形と図形で”はさみうち”~京大特色2025第3問
京大特色2025 第4問
自然数 n に対して,関数 fn(x) を次で帰納的に定める。
f1(x)fn(x)=sinx=sin(fn−1(x))(n=2,3,4,⋯)
また,L を正の実数とし,
fn(a)−La=0
を満たす実数の個数を AL,n とする。このとき,以下の設問に答えよ。
- L≦1 のとき,n→∞limAL,n の値を求めよ。
- L>1 のとき,n→∞limAL,n の値を求めよ。
ただし,0 以上の実数からなる数列 {an} が,任意の n に対して an+1≦an を満たすとき,数列 {an} が収束することを用いてもよい。
→sin を繰り返し当てはめた関数の問題~京大特色2025第4問
京大特色2025 第1問
n を自然数とする。実数 x に対し,x を超えない最大の整数を [x] とし,f(x)=x−[x] と定める。このとき,1 よりも大きく,かつ整数でないような実数 x のうちで,
n→∞limf(nf(nx)1)=21
を満たすものをすべて求めよ。
→ガウス関数と極限の融合問題~京大特色2025第1問
3変数の対称な(または巡回的な)不等式証明の問題は,2変数の不等式を3つ足し合わせる,または掛け合わせることで証明できることが多い。
→数学オリンピック突破のための不等式証明のコツ
斉次式化
条件付きの対称な不等式の証明問題は,全ての項の次数を一致させる(斉次式にする)と見通しがよくなることが多い。
→不等式証明のコツ2:斉次式化
Schur の不等式
x,y,z≥0
に対して,
xr(x−y)(x−z)+yr(y−z)(y−x)+zr(z−x)(z−y)≥0
等号成立条件は,
- r>0 のときは,x=y=z or x,y,z のうち1つが0で残りの2つが等しい場合。
- r≤0 のときは,x=y=z
→Schurの不等式の証明と例題
イェンゼンの不等式(Jensen's inequality,凸不等式)
f(x) が凸関数のとき,
- 任意の x1,…,xn と
- λi≧0,i=1∑nλi=1 を満たす任意の λ1,…,λn
に対して,
i=1∑nλif(xi)≧f(i=1∑nλixi)
が成立する。
→イェンゼンの不等式の3通りの証明
Ravi変換
三角形の各辺の長さが変数の不等式証明問題は,Ravi変換と呼ばれる以下の置き換えを用いるとほとんどの場合でうまくいく。
Ravi変換:a=x+y,b=y+z,c=z+x
→不等式証明のコツ3:Ravi変換
重み付き相加相乗平均の不等式
非負実数
a1,a2,⋯,an
と重み
w1,w2,⋯,wn
に対して以下の不等式が成立する。
i=1∑nwiai≥i=1∏naiwi
等号成立条件は
a1=a2=⋯=an
→重み付き相加相乗平均の不等式の意味とその証明
分数の和を下から抑える公式
bi>0(i=1⋯n)
のとき,以下の不等式が成立する。
∑biai2≥∑bi(∑ai)2
等号成立条件は a と b が平行であること。
シグマの和は
1
から
n
まで取る。
→シュワルツの不等式の応用公式と例題
Muirheadの不等式
各成分が非負で非増加な数列
a=(a1,a2,⋯,an),b=(b1,b2,⋯,bn)
と,任意の非負実数
x1,x2,⋯,xn
に対して,[a]⪰[b]
ならば
sym∑i=1∏nxiai≥sym∑i=1∏nxibi
が成立する。等号成立条件は,a=b
または,
x1=x2=⋯=xn
である。
→Muirheadの不等式と具体例
Nesbittの不等式
a,b,c>0
のとき以下の不等式が成立する。
b+ca+c+ab+a+bc≥23
→Nesbittの不等式の6通りの証明
エルデスモーデルの定理

任意の三角形
ABC
において,その内部の任意の点
O
から各辺に下ろした垂線の足を
P,Q,R
とおくとき,以下の不等式が成立する。
OA+OB+OC≥2(OP+OQ+OR)
→エルデス・モーデルの定理の証明
並べ替え不等式(再配列不等式,rearrangement inequality)
- x1≧x2≧⋯≧xn
- y1≧y2≧⋯≧yn
- {1,2,⋯,n}
の並べ替え
{σ(1),σ(2),⋯,σ(n)}
に対して,
i=1∑nxiyi≧i=1∑nxiyσ(i)≧i=1∑nxiyn−i+1
→並べ替え不等式の証明と例題
チェビシェフの不等式(Chebyshev's sum inequality)
2n 個の実数 x1,x2,…,xn,y1,y2,…,yn が
- x1≥x2≥⋯≥xn
- y1≥y2≥⋯≥yn
を満たすとき,
n1i=1∑nxiyi≥(n1i=1∑nxi)(n1i=1∑nyi)≥n1i=1∑nxiyn+1−i
が成立する。
→チェビシェフの不等式の2通りの証明と例題
ヘルダーの不等式(一般形)
aij≥0,wi>0,i=1∑mwi=1 のとき,
i=1∏m(j=1∑naij)wi≥j=1∑n(i=1∏maijwi)
である。等号成立条件は m 本のベクトル (a1j,a2j,…,anj)(j=1,2,…,m) たちが全て平行のとき。
→ヘルダーの不等式の証明と例題
Weitzenböckの不等式
三角形
ABC
の三辺の長さを
a,b,c,面積を
S
とおくと以下の不等式が成立する。
a2+b2+c2≥43S
→Weitzenböckの不等式
トレミーの不等式
任意の四角形
ABCD
において,
AB×CD+AD×BC≧AC×BD
が成立する。等号成立条件は,四角形
ABCD
が円に内接する四角形であること。
→トレミーの不等式の証明と例題
条件式
abc=1
を持つ不等式証明の問題では,以下のいずれかの変換でうまくいく場合が多い。
変換1:a=yx,b=zy,c=xz
変換2:a=x1,b=y1,c=z1
→条件式abc=1を持つ不等式の証明
→Cauchy Reverse Technique
ライプニッツ(Leibniz)の不等式
三角形
ABC
の三辺の長さを
a,b,c,外接円の半径を
R
とおくと,
a2+b2+c2≤9R2
が成立する。
→ライプニッツの不等式の3通りの証明
方針
とりあえず展開してみると「数列の積の和」が出現します。並べ替え不等式で一発です。
→n変数の不等式証明のテクニック
isolated fudging
f(a,b,c)+f(b,c,a)+f(c,a,b)≧k
を証明する代わりに
f(a,b,c)≧ar+br+crkar
を証明する手法。
→isolated fudging
Karamataの不等式
- [a]⪰[b] を満たす実数の列 a=(a1,a2,⋯,an),b=(b1,b2,⋯,bn)
- f(x) は微分可能で凸
このとき,
f(a1)+f(a2)+⋯+f(an)≥f(b1)+f(b2)+⋯+f(bn)
である。
→Karamataの不等式
ニュートン(Newton)の不等式
n
変数の
k
次の基本対称式を
S(n,k)
とおき,d(n,k)=nCkS(n,k)
とおく。
このとき,d(n,k)2≥d(n,k−1)d(n,k+1) である。
→ニュートンの不等式の具体例
問題
非負実数
a,b,c
に対して
3(2a+b)(2b+c)(2c+a)≥3ab+bc+ca
を証明せよ。
→数学オリンピック対策問題(不等式)
累乗平均の不等式(power mean inequality)
任意の非負の実数 xk たちと正の実数 p に対して
f(p)=(n1k=1∑nxkp)p1
とおくと f(p) は単調増加である。
→累乗平均の不等式の具体例と証明
ベルヌーイの不等式
任意の正の整数
n
と
−1
より大きい実数
x
に対して,
(1+x)n≥1+nx
が成立する。
→ベルヌーイの不等式
Klamkinの不等式
x,y,z
と非負整数
n
,三角形の内角
A,B,C
に対して以下の不等式が成立する。
x2+y2+z2≥2(−1)n+1(yzcosnA+zxcosnB+xycosnC)
等号成立条件は,sinnA,sinnB,sinnC がいずれも 0 でないもとで,
sinnAx=sinnBy=sinnCz
である。
→Klamkinの不等式
マクローリン(Maclaurin)の不等式
n
変数
k
次の基本対称式を
nCk
で割ったものを
dk
とする。このとき,
d1≥d221≥d331≥⋯≥dnn1
→対称式に関するマクローリンの不等式
フランダース(Flanders)の不等式
任意の三角形
ABC
について,
sinAsinBsinC≤(2π33)3ABC
→フランダースの不等式とその証明
Hadwiger-Finsler の不等式
2ab+2bc+2ca−a2−b2−c2≥43S
等号成立条件は三角形
ABC
が正三角形であること。
→Hadwigerの不等式
ミンコフスキー(Minkowski)の不等式
1≤p≤∞
のとき,
∥x+y∥p≤∥x∥p+∥y∥p
となる。
→ミンコフスキーの不等式とその証明
Popoviciu の不等式
f(x)
が下に凸な関数のとき,任意の
x,y,z
に対して(※),
f(x)+f(y)+f(z)+3f(3x+y+z)≥2{f(2x+y)+f(2y+z)+f(2z+x)}
→Popoviciu の不等式
Hlawka’s Inequality
任意の複素数
x,y,z
に対して,
∣x∣+∣y∣+∣z∣+∣x+y+z∣≥∣x+y∣+∣y+z∣+∣z+x∣
が成立する。
→Hlawka's Inequality とその証明
Ky Fanの不等式
0 以上 21 以下である
n 個の実数 x1,x2,…,xn に対して,G′G≤A′A
ただし,A と G は xi たちの相加平均と相乗平均:
- A=nx1+x2+⋯+xn
- G=nx1x2…xn
A′ と G′ は (1−xi) たちの相加平均と相乗平均:
- A′=n(1−x1)+(1−x2)+⋯+(1−xn)
- G′=n(1−x1)(1−x2)…(1−xn)
→Ky Fanの不等式
カールマンの不等式(Carleman's inequality)
非負の数 a1,a2,... について,
n=1∑∞(a1a2⋯an)n1≤en=1∑∞an
→ハーディの不等式・カールマンの不等式
アダマールの不等式(Hadamard's inequality)
n×n の複素行列 A に対して,
∣detA∣≤c1c2⋯cn
ただし,ci は i 列目の長さ:ci=∣a1i∣2+∣a2i∣2+⋯+∣ani∣2
→アダマールの不等式