三次不等式の解き方・例題3問

三次不等式とは,x37x+6>0x^3-7x+6> 0 のような,三次の項を含む不等式のことです。

この記事では,三次不等式の解き方をわかりやすく説明します。

三次不等式の解き方:因数分解

三次不等式は因数分解できれば解けます。

例題1

三次不等式 x37x+6>0x^3-7x+6> 0 を解け。

解答

左辺を因数分解する。方程式の有理数解についての定理を知っていると因数分解しやすい。

  • f(x)=x37x+6f(x)=x^3-7x+6 として,f(x)=0f(x)=0 を満たす整数 xx66 の約数である。例えば x=1x=1 とすると,f(1)=17+6=0f(1)=1-7+6=0 なので,因数定理より f(x)f(x)(x1)(x-1) を因数に持つ。
  • f(x)f(x)(x1)(x-1) で割ると,f(x)=(x1)(x2+x6)f(x)=(x-1)(x^2+x-6)
  • 第二項はさらに因数分解できて,f(x)=(x1)(x2)(x+3)f(x)=(x-1)(x-2)(x+3)

よって,x=3,1,2x=-3,1,2f(x)f(x) の符号が変わる。f(x)f(x) の符号は,

  • x<3x<-3 のとき マイナス×マイナス×マイナス=マイナス
  • 3<x<1-3<x<1 のとき プラス
  • 1<x<21<x<2 のとき マイナス
  • 2<x2<x のとき プラス

よって,f(x)f(x)プラスになるのは 3<x<1,2<x-3<x<1,2<x

補足

  • 三次に限らず,多項式の不等式は因数分解できれば解けます。二次不等式も四次以上の高次不等式も同じです。
  • 因数分解した後は,すべての場合の符号を調べるというよりも「解をまたぐと符号が反転する」という意識があると楽です。
  • ただし,(x1)(x+2)2>0(x-1)(x+2)^2>0 のように重解を含む場合は,符号が反転しないこともあるので注意が必要です。
  • 符号ミスを減らすために,最後に x=0,100x=0,100 などを代入して検算するとよいです。例えば例題1の場合,x=0,100x=0,100 はもとの不等式を満たしますが,たしかに解の範囲に入っています。

→高校数学の問題集 ~最短で得点力を上げるために~のT22でも,三次不等式の問題と計算ミスを減らすコツを紹介しています。

最後まで因数分解できない場合

例題2

三次不等式 x3+x2+x30x^3+x^2+x-3\leq 0 を解け。

解答

例題1と同じく因数分解する。左辺に x=1x=1 を代入すると 00 になるので (x1)(x-1) で割れる:

x3+x2+x3=(x1)(x2+2x+3)x^3+x^2+x-3\\ =(x-1)(x^2+2x+3)

ところが,第二項はこれ以上因数分解できない。平方完成すると,

x2+2x+3=(x+1)2+2x^2+2x+3=(x+1)^2+2 となり,常に正である。よって,三次不等式の左辺の符号は (x1)(x-1) の符号と同じ。

よって,答えは x10x-1\leq 0 つまり,x1x\leq 1

補足

  • 今回は因数分解できない部分 x2+2x+3x^2+2x+3 を平方完成したら正であることがわかりました。
  • しかし,因数分解できない部分が x2+2x1x^2+2x-1 だったらどうでしょうか?これを平方完成すると (x+1)22(x+1)^2-2 ですが「常に正」とは言えません。実は,この場合は,(x+1+2)(x+12)(x+1+\sqrt{2})(x+1-\sqrt{2}) と実数の範囲でさらに因数分解できます。つまり,二次式部分は平方完成すれば「符号が常に一定になる」または「実数の範囲で一次式に因数分解できる」となります。いずれにせよ平方完成すれば符号がわかります。

四次不等式

四次以上の高次不等式でも解き方は同じです。「できるだけ因数分解する」「因数分解できない部分は平方完成などで符号を調べる」です。

例題3

四次不等式 x4+x3x10x^4+x^3-x-1\geq 0 を解け。

解答

x=1x=1 を代入すると左辺は 00 になるので,(x1)(x-1) で割れる:

x4+x3x1=(x1)(x3+2x2+2x+1)x^4+x^3-x-1\\ =(x-1)(x^3+2x^2+2x+1)

さらに x=1x=-1 を代入すると左辺は 00 になるので,(x+1)(x+1) で割れる:

(x1)(x3+2x2+2x+1)=(x1)(x+1)(x2+x+1)(x-1)(x^3+2x^2+2x+1)\\ =(x-1)(x+1)(x^2+x+1)

3つめの因数を平方完成する:

(x1)(x+1)(x2+x+1)=(x1)(x+1){(x+12)2+34}(x-1)(x+1)(x^2+x+1)\\ =(x-1)(x+1)\left\{\left(x+\dfrac{1}{2}\right)^2+\dfrac{3}{4}\right\}

よって,四次不等式の左辺は (x1)(x+1)(x-1)(x+1) の符号と同じ。不等式の解は,x1,1xx\leq -1,1\leq x

グラフは描かなくても良い

  • 二次不等式の解き方(2通りの考え方)と例題 では,関数のグラフを描くことで二次不等式を解く方法も紹介しました。結局は f(x)=0f(x)=0 を解く必要があるので因数分解と同じ計算が必要なのですが,グラフを描くことで符号ミスをしにくいです。
  • しかし,三次以上の場合は関数のグラフを描くのがやや大変なので,因数分解→符号を丁寧に調べる(グラフは描かない)というのがおすすめです。

多項式の不等式の問題は,実質因数分解の問題というわけです。微分などは不要です。