フランダースの不等式とその証明

フランダース(Flanders)の不等式

任意の三角形 ABCABC について,

sin⁡Asin⁡Bsin⁡C≤(332π)3ABC \sin A\sin B\sin C\leq\left(\dfrac{3\sqrt{3}}{2\pi}\right)^3ABC

Abi-Khuzam の不等式とも言います。右辺の ABCABC は,角 AA,角 BB,角 CC それぞれの(弧度法での)大きさの積という意味です。角度とその sin⁡\sin が混在している幾何不等式です。

正三角形の場合

A=B=C=π3A=B=C=\dfrac{\pi}{3} の場合に等号が成立していることは,簡単に確認できます。実際,

sin⁡Asin⁡Bsin⁡C=(sin⁡60∘)3=(32)3 \sin A\sin B\sin C=(\sin 60^{\circ})^3=\left(\dfrac{\sqrt{3}}{2}\right)^3

は ABC=(π3)3ABC=\left(\dfrac{\pi}{3}\right)^3 であることから分かります。

イェンゼンの不等式を用いた証明

前提知識として,イェンゼンの不等式が必要です。

証明

示すべき不等式を,左辺のみが変数になるように変形する:

sin⁡Asin⁡Bsin⁡CABC≤(332π)3 \dfrac{\sin A\sin B\sin C}{ABC}\leq \left(\dfrac{3\sqrt{3}}{2\pi}\right)^3

この左辺の対数を取ると,

log⁡sin⁡AA+log⁡sin⁡BB+log⁡sin⁡CC \log \dfrac{\sin A}{A}+\log \dfrac{\sin B}{B}+\log \dfrac{\sin C}{C}

となることに注意して,f(x)=log⁡sin⁡xx (0<x<π)f(x)=\log\dfrac{\sin x}{x}\:(0 < x<\pi) とおくと, f′(x)=cos⁡xsin⁡x−1xf'(x)=\dfrac{\cos x}{\sin x}-\dfrac{1}{x},f′′(x)=−1sin⁡2x+1x2<0f''(x)=-\dfrac{1}{\sin^2x}+\dfrac{1}{x^2} < 0 なので,f(x)f(x) は上に凸である。

よって,イェンゼンの不等式より,

f(A)+f(B)+f(C)≤3f(π3)=log⁡(332π)3 f(A)+f(B)+f(C) \leq 3f\left(\dfrac{\pi}{3}\right)=\log \left(\dfrac{3\sqrt{3}}{2\pi}\right)^3

となり,目標の不等式を得る。

未定乗数法を用いた証明

前提知識として,ラグランジュの未定乗数法と例題が必要です。

証明の概略

f(A,B,C)=sin⁡Asin⁡Bsin⁡CABC(0<A,B,C<π )f(A,B,C)=\dfrac{\sin A\sin B\sin C}{ABC} \quad (0 < A,B,C <\pi\:) とおく。ff は連続微分可能である。

A=B=CA=B=C のとき f=(332π)3f=\left(\dfrac{3\sqrt{3}}{2\pi}\right)^3 となる。

また,ff が極値を取るのが A=B=CA=B=C の場合だけであることがラグランジュの未定乗数法を用いれば分かる。

実際,g(A,B,C)=A+B+C−πg(A,B,C)=A+B+C-\pi,L=f−λgL=f-\lambda g とおくと,∂L∂A=∂L∂B\dfrac{\partial L}{\partial A}=\dfrac{\partial L}{\partial B} から tan⁡AA=tan⁡BB\dfrac{\tan A}{A}=\dfrac{\tan B}{B} が分かる。そこから A=BA=B が分かる。

よって,ff は A=B=CA=B=C で最小または最大となる。他の適当な(なんでもよい)1点を代入することにより「最小」ではなく「最大」であることが分かる。

やっぱり対称な不等式はとても美しいです!