数列における余りの周期性(特にフィボナッチ数列)
数列における余りの周期性について,以下の2つの話題を紹介します。
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漸化式で表される数列における,割り算の余りの周期性(受験レベル)
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特に,フィボナッチ数列における周期について(難しい)
最後に,関連する入試問題として一橋大学の問題を紹介します。
余りの周期性
余りの周期性
漸化式で表される数列の各項を特定の整数 で割った余りを考えると,ループするという性質が(多くの場合)成立します。
例えば, で表されるフィボナッチ数列の各項を で割った余りがループする(途中から同じパターンを繰り返す)ことを証明してみます。
各項を で割った余りは の 通りで有限個。よって,各項を で割った余りを初項から十分並べると,同じ2連続のパターンが現れる。同じ2連続のパターンが現れると,漸化式より,その後に続く数字たちの余りも同じなのでループする。
数列の各項は整数となる。各項を で割った余りは の 通りである。よって,隣り合うペア をそれぞれ で割った余りのパターンは,高々 通りである。よって,数列の最初の ペアを見ると,鳩の巣原理より,パターンが同じペア が存在する。(ただし, )
よって,漸化式を使うと, で割った余りについて がわかる。つまり,帰納的に,任意の非負整数 に対して,
であることがわかる。言い換えると, 以上である任意の整数 に対して,
これは,数列の余りがループすること(そして,ループの周期が の約数であること)を表している。
フィボナッチ数列における余りの周期
フィボナッチ数列における余りの周期
実は,フィボナッチ数列については,余りの周期について,より詳しい性質が知られています:
を素数とし, とする。
を で割った余りが または なら,周期は の約数
を で割った余りが または なら,周期は の約数
この記事では,上記の定理について「 で割った余りが または 」の場合のみ,証明します。
定理の証明(余りが または の場合)
定理の証明(余りが または の場合)
証明はかなり大変ですが,整数のいろいろな定理を駆使するので,理解できると楽しいです。
普通の三項間漸化式と同様に,
という「特性合同式」を考える。以下 という記載は省略する。実は, を で割った余りが または なら,この合同式を満たす 以上 以下の整数が2つ存在する(→補足1)ので,それらを とおく。
普通の三項間漸化式と同様に,一般項は
と書けそうである。実際,このようにすれば特性合同式より, を満たすので,あとは初期条件を満たすように をうまく決めればよい。初期条件は,
である。2つめの式に,特性合同式: などを用いると,
となる。これと1つめの式より,
この結果と1つめの式より, となる(→補足2)。
結局, である。この一般項の式に,フェルマーの小定理を適用すると,
であることがわかる。つまり,周期は の約数である。
補足1(特性合同式に解が存在することの証明):
まず,合同式を平方完成します。
(法
は奇数なので,両辺を
倍しても同値であることに注意)
ここで, が から の整数を動くとき, も法 において から を1回ずつ動きます。よって,
に解が2つあることを示せば,もとの特性合同式にも解が2つ存在することがわかります。
ここで,平方剰余の相互法則を使うと, を で割った余りが または なら, に解が少なくとも1つ存在することがわかります。さらに, なら, なので,2つめの解も存在します( は奇数なので と は異なる解である)。
補足2(合同式の割り算):
とは, を満たす のことです。法 と は互いに素なので,そのような は(法 においてただ1つ)存在します。合同式の意味とよく使う6つの性質
参考文献:素数と2次体の整数論(青木昇著,共立出版)
関連する入試問題
関連する入試問題
2024年一橋大学後期の問題です。
, で定まる数列 について を で割った余りを求めよ。
で割った余りはループするので頑張って計算するだけですが,周期は最大で になってしまい大変そうです。しかし,さきほどの定理を知っていれば周期が の約数であることがわかります! つまり,最大で 個くらいまで計算すればOKなので安心してゴリ押しできます。
で割った余りについて, で 以降も計算していくと で周期 のループ。
一方, を で割った余りは であるので である。
高校数学の問題集 ~最短で得点力を上げるために~ のT161では,余りの周期性に関連する別の問題と2通りの解答を紹介しています。
合同式を初めて知ったときは,「 なんて書かずに, と は で割った余りが同じ」と書けばいいじゃん,と思ったものですが,今回のように複雑な証明になると,合同式無しでは厳しいですね!