条件式abc=1を持つ不等式の証明
条件式 を持つ不等式証明の問題では,以下のいずれかの変換でうまくいく場合が多い。
変換1:
変換2:
条件式abc=1を持つ不等式証明問題
条件式abc=1を持つ不等式証明問題
数学オリンピックで頻出のタイプです。
条件付きの不等式証明問題には斉次式化という一般的なテクニックあります。→不等式証明のコツ2:斉次式化
しかし,条件式が の場合には斉次式化以外にも有効なテクニックがあるのです。
このテクニックを用いるIMOの過去問を解説します。
変換1を用いる問題
変換1を用いる問題
変換2を用いる問題
変換2を用いる問題
1995年国際数学オリンピックカナダ大会の第2問です。
を満たす正の実数 に対して,以下の不等式が成立することを示せ:
分母の次数が大きいので変換2を用います。分数の和を下からおさえたいので,シュワルツの不等式の応用公式が使いたくなります。
と置換すると,与えられた不等式は,
この左辺はシュワルツの不等式の応用公式,相加相乗平均の不等式を用いて評価できる:
(左辺)
この問題は上記の解答以外にも様々な別解が考えられそうです。例えば,右辺が なのでNesbittの不等式も連想されます。
上記の変換が有効な理由
上記の変換が有効な理由
変換1では,変数 を無次元化しています。そのため,もとの不等式を0次の斉次式にできます。これは斉次式化の特殊ケースですが,愚直に斉次式化するよりも式が簡単になる場合が多いです。
変換2は,分母の次数が分子の次数より高い場合に有効です。逆数を取ることで与式が簡単になる上に, という条件式は保存されます。
数オリの問題の中で不等式証明問題が最も「知識,テクニックが通用する」分野だと思います。
Tag:国際数学オリンピックの過去問