フェルマーの小定理の証明と例題
が素数で, が の倍数でない正の整数のとき
フェルマーの小定理の意味と例
フェルマーの小定理の意味と例
とは「 と を で割った余りが等しい」という意味です。 →合同式の意味とよく使う6つの性質
, の場合を見てみます。 を計算すると,
なので, を で割った余りは です。つまり, となりフェルマーの小定理が成立しています。
フェルマーの小定理の証明
フェルマーの小定理の証明
2通りの証明を紹介します。 以下,このページでは全て なので を省略します。
数学的帰納法による証明
に関する数学的帰納法を用いて証明します。「 と が互いに素なときは合同式の両辺を で割ることができる」を使います。
任意の正の整数 に対して であることを示す (そうすれば, と が互いに素なとき両辺を で割ってフェルマーの小定理がわかる)。
のとき,明らかに
また,二項定理を用いることで,
(→補足)
よって, なら,
以上から数学的帰納法より,全ての に対して
補足:途中の式変形で が素数で のとき が の倍数という性質を用いました。 これは有名な性質です。 詳細は二項係数の有名公式一覧と2つの証明方針
なお,上記で示した以下の主張をフェルマーの小定理として覚えてもよいでしょう:
素数 と全ての正の整数
に対して
が成立する。
整数の有名な性質を利用した美しい証明
有名な定理「 と が互いに素なとき, を で割った余りはすべて異なる」を用います。この定理を知らない人は,一次不定方程式ax+by=cの整数解の中央当たりに2行ほどで証明しているので参考にしてください。
方針で述べたことと, は全て の倍数でないので,
を で割った余りを並べると から までが全て1回ずつ登場する。よって,
ここで, は と互いに素なので両辺を で割って,
を得る。
フェルマーの小定理の応用例
フェルマーの小定理の応用例
フェルマーの小定理を応用すると,以下の定理を証明できます。
と 以外の任意の素数 について, の倍数となるような 「すべてのケタが1である整数()」 が存在する。
詳細は →レプユニット数
フェルマーの小定理は他にも
- RSA暗号で「複号がうまくいく」ことの証明にも使います。→RSA暗号の仕組みと安全性
- 素数か合成数かを(確率的に)判定する方法としても使われます。→素因数分解の難しさと素数判定
- フィボナッチ数列の余りの周期性に関する美しい定理の証明にも使われます。→数列における余りの周期性(特にフィボナッチ数列)
フェルマーの小定理を使う問題
フェルマーの小定理を使う問題
フェルマーの小定理は,数学オリンピックの整数分野で頻出の定理です。以下は2005年国際数学オリンピックメキシコ大会の第4問です。
「数列 の全ての項と互いに素」な自然数を全て求めよ。
素数 が と互いに素なら も と互いに素になります。逆も然り。つまり素数の場合だけ考えればよいのです(第一関門)。
問題の流れから「数列の全ての項と互いに素」という強い条件を満たす数は少ないと予想できます。よって,「ある例外を除いて素数 は数列 のどこかの項の約数になっている」ことを証明すればよいわけです(第二関門)。
を で割った余りを評価するときにはフェルマーの小定理が活躍します。そこで, を示そうと思いますが,うまくいきません。右辺が になるように色々試すと でうまくいくことが分かります(第三関門)。
のとき,
を示す。
と は互いに素なので,両辺を 倍した以下の式を示せば良い:
ところが,これはフェルマーの小定理より成立する。
よって,候補は のみ。 は の約数で, は の約数なので不適。答えは のみ。
数学オリンピック対策をしっかりしていれば第二関門までは行きたいところです。
フェルマーの最終定理と区別するために「小」定理という名前がついてしまったかわいそうな定理です。
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