三項間漸化式の3通りの解き方

三項間漸化式:

an+2=pan+1+qana_{n+2}=pa_{n+1}+qa_n

の3通りの解法と,それぞれのメリットデメリットを解説します。

  1. 特性方程式を用いた解法
  2. 答えを気合いで予想する
  3. 行列の nn 乗を求める方法

例題として,a1=1,a2=1,an+2=5an+16ana_1=1,a_2=1,a_{n+2}=5a_{n+1}-6a_n を解きます。

特性方程式の解が重解になる場合は最後に補足します。

1:特性方程式を用いた解法

教科書に載っている定番の解法です。

解答1

特性方程式 x25x+6=0x^2-5x+6=0 の解は x=2,3x=2,3 であり,漸化式は以下のように変形できる:

an+22an+1=3(an+12an)a_{n+2}-2a_{n+1}=3(a_{n+1}-2a_{n})

an+23an+1=2(an+13an)a_{n+2}-3a_{n+1}=2(a_{n+1}-3a_{n})

よって,上の式から an+12ana_{n+1}-2a_n は公比 33 の等比数列となる:

an+12an=3n1(a22a1)=3n1a_{n+1}-2a_n=3^{n-1}(a_2-2a_1)=-3^{n-1}

同様に下の式から an+13ana_{n+1}-3a_n は公比 22 の等比数列となる:

an+13an=2n1(a23a1)=2na_{n+1}-3a_n=2^{n-1}(a_2-3a_1)=-2^n

以上2つの式から an+1a_{n+1} を消去する:

an=2n3n1a_n=2^n-3^{n-1}

メリット:定番の方法だから安心感がある

デメリット:記述量が少し多い

→高校数学の問題集 ~最短で得点力を上げるために~のT39では,より計算が複雑な応用問題と「計算ミスを減らすコツ」も紹介しています。

2:答えを気合いで予想する

三項間漸化式の特性方程式の解を α,β\alpha,\beta とおくと,漸化式の一般項は

an=Aαn+Bβna_{n}=A\alpha^n+B\beta^n

と表される。A,BA,B は初期条件から求める。

解答2

特性方程式 x25x+6=0x^2-5x+6=0 の解は x=2,3x=2,3 である。…(1)

一般項を以下の形と予想する。

an=2nA+3nBa_{n}=2^nA+3^nB

実際に漸化式に代入すると成立していることが分かる。…(2)

ここで,n=1,2n=1,2 を代入すると,

1=2A+3B,1=4A+9B1=2A+3B,1=4A+9B

これを解いて A=1,B=13A=1,B=-\dfrac{1}{3}

よって,an=2n3n1a_{n}=2^n-3^{n-1}

記述式の場合(1)の文言は不要ですが,(2)は必須です。

メリット:記述量が少ない,一般の nn 項間漸化式に拡張できる,漸化式の構造が微分方程式の構造に似ていることが分かる

デメリット:邪道なので解法1を覚えた上で使うのがよい

ちなみに四項間漸化式 an+3=pan+2+qan+1+rana_{n+3}=pa_{n+2}+qa_{n+1}+ra_{n} の場合は,x3=px2+qx+rx^3=px^2+qx+r の解を α,β,γ\alpha,\beta,\gamma とすると一般項は an=Aαn+Bβn+Cγna_n=A\alpha^n+B\beta^n+C\gamma^n

と書けます。nn 項間漸化式でも同様です!→漸化式の特性方程式の意味とうまくいく理由

行列の nn 乗を用いる方法

漸化式の一般的な議論をする際には重要な考え方です。

解答3

与えられた漸化式は行列を用いて以下のように変形できる:

(an+2an+1)=(5610)(an+1an)\begin{pmatrix} a_{n+2}\\a_{n+1} \end{pmatrix} =\begin{pmatrix} 5&-6\\ 1&0\end{pmatrix} \begin{pmatrix} a_{n+1}\\a_{n}\end{pmatrix}

よって,この式を繰り返し用いると,

(an+1an)=(5610)n1(a2a1)\begin{pmatrix} a_{n+1}\\a_{n} \end{pmatrix} =\begin{pmatrix} 5&-6\\ 1&0\end{pmatrix}^{n-1} \begin{pmatrix} a_{2}\\a_{1}\end{pmatrix}

となるので,行列の nn 乗(正確には n1n-1 乗)を求める問題に帰着される。

行列の nn 乗は対角化なり予想して帰納法なりで解くことができる(詳細省略)。

メリット:一般の nn 項間漸化式に拡張できる,線形代数のよい練習になる

デメリット:行列の nn 乗を求めるのがめんどう,記述量が多い

補足:特性方程式が重解を持つ場合

特性方程式の解が α\alpha(重解)の場合は,いずれの方法でも微妙に修正が必要になります。

  • 方法1では,an+1pan=qαna_{n+1}-pa_n=q\alpha^n という形の式が本来なら2つ構成できるのですが,重解の場合は1つしか作れません。その場合は直接この式を解くことになります。両辺を αn+1\alpha^{n+1} で割って bn=anαnb_{n}=\dfrac{a_n}{\alpha^n} と置くと二項間漸化式 bn+1=Abn+Bb_{n+1}=Ab_{n}+B 型に帰着されます。

  • 方法2では,漸化式の一般項は an=(An+B)αna_n=(An+B)\alpha^n という形になります。 A,BA,B は初期条件から求めます。

  • 方法3では,固有値が縮退して対角化できない可能性があります。その場合はジョルダン標準形を用いて行列の nn 乗を求めることになります。

なぜ教科書から行列を消したんだあああ!

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