漸化式の特性方程式の意味とうまくいく理由
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漸化式の特性方程式の意味と,特性方程式を使った解き方・うまくいく理由を解説します。
- 定数項つきの二項間漸化式
- 三項間漸化式
- 項間漸化式
の順に解説します。
定数項つきの二項間漸化式
定数項つきの二項間漸化式
- という漸化式に対して, についての方程式 のことを特性方程式と呼ぶことがあります。
- 漸化式の と を同じ変数 で置き換えたものなので覚えやすいです。
という漸化式について,特性方程式は です。これを解くと です。
- 特性方程式の解 をもとに,漸化式が解けます。具体的には, と変形します。
という漸化式を解きましょう。
さきほど計算したように でした。
よって と変形できます。
これは,数列 が公比 の等比数列であることを表しています。また,初項は です。よって, つまり が答えになります。
なぜうまくいくのか
という漸化式を, と変形できれば が等比数列であることを使って漸化式が解けます。そのような を探したいです。そこで,紫文字の式を漸化式を使って変形すると, となります。移項すると,結局 が を満たせば紫文字の式が成立することがわかります。このような嬉しい を探すための式が特性方程式です。たまたまもとの漸化式で と置いた式と一致するので覚えやすいです。
三項間漸化式
三項間漸化式
- という三項間漸化式に対して, についての方程式 のことを特性方程式と呼びます。
- 例えば, の特性方程式は です。
- 三項間漸化式は,特性方程式を使って解くことができます。実際,特性方程式の解を とおくと,( の場合),一般項は と表せます。解き方の詳細は 三項間漸化式の3通りの解き方 を参照してください。
- なぜ特性方程式でうまくいくのかは,後述の「 項間漸化式」で紹介します。
k+1項間漸化式
k+1項間漸化式
定数係数の隣接 項間漸化式を考えます。 の場合がさきほどの三項間漸化式です。
という漸化式について, 次方程式 を特性方程式と言う。特性方程式の解 が全て異なるとき,数列 の一般項は と表せる( は初期条件によって決まる定数)。
特性方程式が解ければ漸化式が構成できるというわけです!
この定理を理解するには行列の知識(高校数学範囲外)が必要です。証明を2つ紹介します。
が を満たすこと(※)は簡単に確認できる。実際,各 は特性方程式の解なので である。これを 倍して から まで加えると(※)を得る。あとは,どんな初期条件 であっても,うまいこと を選べば初期条件を満たせることを示す必要がある。これは, が異なるときに からなるヴァンデルモンド行列の行列式が でないことからわかる。→ヴァンデルモンド行列式の証明と応用例
(一般の場合も同様なので)表記簡略化のために ,つまり四項間漸化式の場合で説明する。
漸化式は行列とベクトルを用いて,
と表現できる。左辺のベクトルを ,右辺の行列を とおくと, と書ける。
よって,これを繰り返し用いると となる。
は初期条件から計算できるので,一般項を求めるためには を計算すればよい。
行列 の特性方程式 と定理の主張内で定義した特性方程式 は一致する(これは行列式を実際に計算すると分かる→注)。よって, の解 は の固有値である。→固有値,固有ベクトルの定義と具体的な計算方法
の固有値が全て異なるとき,ある正則行列 を用いて と対角化できる。ただし, は を対角成分に持つ対角行列。→行列の対角化の意味と具体的な計算方法
よって, の各成分は の線形結合で表せる。よって, の各成分も の線形結合で表せる。
注: の場合,
は簡単に確認できます。一般の場合も同様です。
特性方程式という用語について
特性方程式という用語について
- 定数項つきの二項間漸化式
- 三項間漸化式
- 項間漸化式
を紹介しました。
- 2と3における「漸化式の特性方程式」は,3の証明2で見たように,行列の特性方程式に由来しています。つまり,由緒正しい「特性方程式」と言えます。英語でも Characteristic Equation と言います。
- 一方,1における「漸化式の特性方程式」は単なる平行移動の定数をうまく決めるための方程式です。そのため「特性方程式」と呼ぶのは不適切な気もします。実際,英語で漸化式の Characteristic Equation が1の意味で使われるのは見たことがないです。なお,1次分数型の漸化式でも「平行移動の定数をうまく決めるための方程式」が活躍します。→一次分数型の漸化式の解法と例題
高校生にも理解して欲しい定理ですが,線形代数の知識がガッツリ必要なのが残念です。