固有値,固有ベクトルの定義と具体的な計算方法

更新日時 2021/03/07

Axundefined=λxundefinedA\overrightarrow{x}=\lambda \overrightarrow{x}

が成立するとき xundefined\overrightarrow{x}AA の固有ベクトル,λ\lambdaAA の固有値と言う。ただし,AA は正方行列,xundefined\overrightarrow{x}0undefined\overrightarrow{0} でないベクトル,λ\lambda は スカラー。

固有値・固有ベクトルの重要性,および正方行列が与えられたときに固有値と固有ベクトルを求める具体的な計算方法を解説します。

目次
  • 固有値,固有ベクトルの重要性

  • 特性方程式

  • 実際の計算手順

  • 具体例(二次の正方行列)

  • 諸注意

固有値,固有ベクトルの重要性

固有値・固有ベクトルは行列が登場するあらゆるところに顔を出す非常に重要な概念です。

  • 統計学における主成分分析
  • 量子力学におけるシュレーディンガー方程式
  • 二次曲面の分類(シルベスター標準形)
  • マルコフ連鎖
  • グラフ理論

そのため,大学の講義の期末試験,工学系の大学院入試,数学検定1級などでは固有値,固有ベクトルを求めさせる問題が頻出です。

特性方程式

固有値,固有ベクトルを計算するために必要となる定理を解説します。以下を理解するには行列式(det\det)に関する知識が必要です。→行列式の3つの定義と意味

λ\lambdaAA の固有値     det(AλI)=0\iff \det(A-\lambda I)=0

det(AλI)=0\det(A-\lambda I)=0AA の特性方程式(固有方程式)と言います。

証明

Axundefined=λxundefinedA\overrightarrow{x}=\lambda \overrightarrow{x}

を変形すると,(AλI)xundefined=0(A-\lambda I)\overrightarrow{x}=0 (★)となる。

よって,

λ\lambdaAA の固有値

    xundefined\iff \overrightarrow{x} についての方程式(★)が xundefined0undefined\overrightarrow{x}\neq \overrightarrow{0} なる解を持つ

    (AλI)\iff (A-\lambda I) の列ベクトルたちが一次従属

    det(AλI)=0\iff \det(A-\lambda I)=0

nn 次方程式の解は(重複度込みで)nn 個ある(→代数学の基本定理とその初等的な証明)ので nn 次正方行列の固有値は(重複度込みで)nn 個あることが分かります。

実際の計算手順

実際に固有値,固有ベクトルを求めたいときには,

step1:特性方程式 det(AλI)=0\det(A-\lambda I)=0 を解いて固有値を求める。

step2:その各々の解に対して (AλI)xundefined=0(A-\lambda I)\overrightarrow{x}=0 を満たす xundefined0undefined\overrightarrow{x}\neq \overrightarrow{0} を求める。

ということをします。step1でもstep2でも方程式を解かないといけないのでけっこうめんどうです。具体的に計算させる問題としては,n=3n=3 の場合が頻出です。

具体例(二次の正方行列)

計算練習にどうぞ!

例題

A=(3122)A=\begin{pmatrix} 3&1\\ 2&2\\ \end{pmatrix}

の固有値と固有ベクトルを求めよ。

  • AλI=(3λ122λ)A-\lambda I=\begin{pmatrix} 3-\lambda & 1\\ 2 & 2-\lambda \end{pmatrix}
    より特性方程式は,(3λ)(2λ)2=0(3-\lambda)(2-\lambda)-2=0
    これを解くと λ=1,4\lambda=1, 4 となり固有値が求まった。

  • λ=1\lambda=1 に対応する固有ベクトルは,
    (AI)xundefined=(2121)xundefined=0(A-I)\overrightarrow{x}=\begin{pmatrix} 2&1\\ 2&1\end{pmatrix}\overrightarrow{x}=0
    の解なので固有ベクトルは (12)\begin{pmatrix}1\\-2\end{pmatrix}\: (の定数倍)

  • λ=4\lambda=4 に対応する固有ベクトルは,
    (A4I)xundefined=(1122)xundefined=0(A-4I)\overrightarrow{x}=\begin{pmatrix} -1&1\\ 2&-2\end{pmatrix}\overrightarrow{x}=0
    の解なので固有ベクトルは (11)\begin{pmatrix}1\\1\end{pmatrix}\: (の定数倍)

※三次以上でも同様です。三次の場合,特性方程式が三次方程式になる&固有ベクトルを三本求めるために三回連立方程式を解かないといけないのでかなりめんどうです。しかしながら各種試験では平気で出題されるのでできるようにしておきましょう。

諸注意

  • xundefined\overrightarrow{x} が固有値 λ\lambda に対応する固有ベクトルのとき,kxundefined(k0)k\overrightarrow{x}\:(k\neq 0) も固有ベクトルです。そのため,固有ベクトルで重要なのは方向のみです。反対向き(k<0k<0 の場合)含め,長さは自由に決められます。

  • なお,上記の手順だけでは不十分な場合(AA が対角化できない場合)も稀に登場します。しかし,実際工学的に登場する行列はほとんどが対角化できる&対角化できない場合を厳密に議論するのはけっこうめんどうなので省略します。特性方程式が重解を持たない場合は問題なしです!

学部1年で習う線形代数の一つの目標は固有値の概念を理解することだと思います。

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