代数学の基本定理とその初等的な証明

更新日時 2021/03/07
代数学の基本定理

複素数係数の nn 次方程式は複素数の範囲で(重複度も含めて)nn 個の解を持つ。

代数学の基本定理の意味と証明を解説します。

目次
  • 代数学の基本定理の意味

  • 代数学の基本定理の証明

  • 証明を完結させる

代数学の基本定理の意味

  • 複素数係数の nn 次方程式とは複素数 a0,a1,,an(an0)a_0,a_1,\cdots,a_n\:(a_n\neq 0) を用いて anxn+an1xn1++a1x1+a0=0a_nx^n+a_{n-1}x^{n-1}+\cdots +a_1x_1+a_0=0 と表すことができる方程式です。

  • 実数は複素数の一種です。よって「実数係数の nn 次方程式」は「複素数係数の nn 次方程式」でもあるので実数係数の nn 次方程式も nn 個の解を持つことが分かります。

  • 「重複度を含めて」なので重解は2つ,三重解は3つとカウントします。

2次方程式の場合の例

2次方程式 ax2+bx+c=0(a0)ax^2+bx+c=0\:(a\neq 0) は,複素数の範囲で必ず2つの解を持つ(重解は2つとカウント)。

代数学の基本定理の証明

定理の主張に複素数が入っているのでどうしても複素数の議論が必要です。複素数平面の知識があると理解しやすいでしょう。

使う道具は数学的帰納法,因数定理,最大値の原理です。

証明

複素数 xx に対して関数

f(x)=anxn+an1xn1++a1x+a0f(x)=|a_nx^n+a_{n-1}x^{n-1}+\cdots +a_1x+a_0|

(複素数の絶対値)を考える。

xx の絶対値が十分大きい時には anxna_nx^n が支配的で,f(x)f(x) はいくらでも大きくなる。

よって,ある大きな実数 RR が存在して x>R|x| > R なら f(x)>f(0)f(x) > f(0)

よって,最小値を与える xcx_cxR|x| \leq R 内にあるとしてよい(注1)。

f(xc)0f(x_c)\neq 0 と仮定すると xxxcx_c から少し動かすことで f(x)f(x) をより小さくできるので矛盾(注2)。

つまり f(xc)=0f(x_c)=0 である。よって因数定理より,もとの方程式は x=xcx=x_c を解に持ち,

(xxc)p(x)=0(x-x_c)p(x)=0 (ただし p(x)p(x)n1n-1 次式)

と因数分解できる。帰納法の仮定より p(x)=0p(x)=0 は解を n1n-1 個持つので代数学の基本定理が示された。

注1:厳密には上記の議論で 最小値を取るとしたら xR|x| \leq R なる xx であることが分かりました。 そして実際に最小値が存在することは最大値の原理「有界閉区間(orコンパクト集合)上の連続関数は最大値,最小値を持つ」から分かります。

注2:ごまかしたので以下できちんと証明します。

証明を完結させる

xcx_c から少し動かして xc+ϵx_c+\epsilon としたときに f(x)f(x) の値をより小さくできることを証明すれば完了です。そのような複素数 ϵ\epsilon を工夫して作り出せば勝ちです。

証明

f(xc+ϵ)f(xc)<0f(x_c+\epsilon)-f(x_c) <0 となるような ϵ\epsilon の存在を示せばよい。

f(xc+ϵ)f(xc)=A0+A1ϵ+A2ϵ2++AnϵnA0f(x_c+\epsilon)-f(x_c)\\ =|A_0+A_1\epsilon+A_2\epsilon^2+\cdots +A_n\epsilon^n|-|A_0|

ここで,A0,A1,,AnA_0, A_1,\cdots ,A_nf(xc+ϵ)f(x_c+\epsilon) を展開して ϵ\epsilon について整理したときの係数。

また,A0=f(xc)0|A_0|=f(x_c)\neq 0

ここで A1,A2,,AnA_1, A_2,\cdots ,A_n のうち 00 でない最初のものを AkA_k とおく。

f(xc+ϵ)f(xc)=A0+Akϵk+ϵf(x_c+\epsilon)-f(x_c)=|A_0+A_k\epsilon^k+\epsilon の高次の項 A0|-|A_0|

となる。ϵ\epsilon の絶対値が十分小さいとき ϵ\epsilon の高次の項は無視できそう。

そこで,tt をとある小さな正の実数として,Akϵk=tkA0A_k\epsilon^k=-t^kA_0 となるような ϵ\epsilon を持ってくる。

具体的には,ϵ=tA0Akk\epsilon=t\sqrt[k]{-\dfrac{A_0}{A_k}} とおく。

kk 乗して zz になる複素数は一般に kk 個あるが,どれでもよい。それを zk\sqrt[k]{z} と表した。)

すると,このように定めた ϵ\epsilon に対して

f(xc+ϵ)f(xc)=A0(1tk)+F(t)A0f(x_c+\epsilon)-f(x_c)=|A_0(1-t^k)+F(t)|-|A_0|

となる。ただし,F(t)F(t)ttkk 乗より高次の項。

これは tt を十分小さな実数とすれば負になる。

証明の後半部分はわりと難しいですが,代数学の基本定理の証明を理解できたときの喜びはひとしおです。

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