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和の期待値は期待値の和

更新日時 2021/03/07

確率変数 X,YX,Y と期待値に関して以下が成立する:

E[X+Y]=E[X]+E[Y]E[X+Y]=E[X]+E[Y]

より一般的には,E[i=1nXi]=i=1nE[Xi]\displaystyle E[\sum_{i=1}^nX_i]=\sum_{i=1}^nE[X_i]

目次
  • 期待値の和=和の期待値

  • 期待値の線形性の応用例

  • 期待値の線形性の応用例2

  • 和の期待値=期待値の和,の証明

期待値の和=和の期待値

上記の公式は 「和の期待値は期待値の和に等しい」ことを表しています。期待値のこのような性質を「期待値の線形性」と言います。(線形性についてのより詳しい説明は高校数学における線形性の8つの例参照)

期待値の線形性は XXYY が独立でなくてもどんな場合にも成立する強力な公式です。

期待値の線形性は数学Cの教科書に載っています。

期待値の線形性の応用例

例題

サイコロを2つ振った時に出る目の総和の期待値を求めよ。

解答

気合いで 62=366^2=36 通り計算してもよいが,「期待値の和=和の期待値」を用いると簡単。

サイコロ1つ振った時の期待値は 1+2+3+4+5+66=72\dfrac{1+2+3+4+5+6}{6}=\dfrac{7}{2} なので,

E[X1+X2]=2E[X1]=7E[X_1+X_2]=2E[X_1]=7

このように, 期待値の線形性は同じ試行を繰り返し行うときの和の期待値を求める際に活躍します。

期待値の線形性の応用例2

次は期待値の線形性を知らないと直感的には分かりにくい例です。

例題2

各桁が独立に確率 12\dfrac{1}{2}1122 であるような 99 桁の数字の並びがある。このとき「 111111 」と並ぶ部分の個数の期待値を求めよ。例えば「 111221111111221111 」は1〜3,6〜8,7〜9番目の三箇所とみなす。

解答

1〜3の部分が「 111111 」と並ぶ確率は 18\dfrac{1}{8} 。同様に他の部分についても 11 が三つ並ぶ確率は同じで,候補は7箇所あるので,18+18++18=78\dfrac{1}{8}+\dfrac{1}{8}+\cdots +\dfrac{1}{8}=\dfrac{7}{8}

このように, 確率変数たちが独立でない場合も期待値の線形性は成立します。

和の期待値=期待値の和,の証明

和の期待値=期待値の和が成立することは,本質的にはシグマが線形性を持つことによります。証明中にはシグマがたくさん出てきて一見ゴツイ式になりますが,内容は単純なので1行1行じっくり読んで理解してみてください!

なお,以下では X=xX=x となる確率を P(X=x)P(X=x) と表し,Y=yY=y となる確率を P(Y=y)P(Y=y) と表します。

また,X=xX=x となり,かつ Y=yY=y となる確率を P(X=x,Y=y)P(X=x,Y=y) と表します。

P(Y=y)P(Y=y)XX の値で場合分けすることにより

xP(X=x,Y=y)=P(Y=y)\displaystyle\sum_{x}P(X=x,Y=y)=P(Y=y)

が成立することに注意しておきます。(周辺化と言います)

同様に, yP(X=x,Y=y)=P(X=x)\displaystyle\sum_{y}P(X=x,Y=y)=P(X=x) も成立します。

方針:期待値の定義に従って左辺を計算して右辺と一致することを証明します。式変形の際にシグマの線形性と上記で準備した周辺化の公式を用います。

証明

E[X+Y]=xy(x+y)P(X=x,Y=y)=xyxP(X=x,Y=y)+xyyP(X=x,Y=y)=xxyP(X=x,Y=y)+yyxP(X=x,Y=y)=xxP(X=x)+yyP(Y=y)=E[X]+E[Y]E[X+Y]\\ =\displaystyle\sum_x\sum_y(x+y)P(X=x,Y=y)\\ =\displaystyle\sum_x\sum_yxP(X=x,Y=y)+\sum_x\sum_yyP(X=x,Y=y)\\ =\displaystyle\sum_xx\sum_yP(X=x,Y=y)+\sum_yy\sum_xP(X=x,Y=y)\\ =\displaystyle\sum_xxP(X=x)+\sum_yyP(Y=y)\\ =E[X]+E[Y]

変形の詳細説明です。

2行目:期待値の定義

3行目:シグマの線形性

4行目:2つのシグマの分解(シグマ計算を機械的に行うための3つの公式

5行目:周辺化の公式

最終行:期待値の定義

ちなみに,大学数学では確率変数が離散ではなく連続の場合も扱うことになりますが,その場合にも「期待値の和=和の期待値」は成立します。連続確率変数の場合の公式は積分の線形性から導かれます。

離散の場合,シグマの線形性→期待値の線形性

連続の場合,積分の線形性→期待値の線形性

Tag:期待値と分散に関する公式一覧

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