シグマ計算を機械的に行うための3つの公式
更新
和の記号シグマに関する計算をすばやく行うための公式を3つ紹介します。2つのシグマ(二重和)計算についても扱います。
機械的な計算のメリット
機械的な計算のメリット
シグマ計算を機械的にすばやく行うための公式を紹介します。その前に「公式丸暗記+機械的な計算」のメリットを述べておきます:
- 時間短縮になる
- 脳のエネルギーを無駄に使わないですむ
- 見通しが良くなる
シグマ計算を通じて,機械的な計算のメリットを味わってみてください。
シグマの平行移動の公式
シグマの平行移動の公式
(1)平行移動の公式:
シグマの上端,下端をそろえたいときによく使う公式です。
意味を考えれば「どちらも から までの和を表している」というだけです。よって,わざわざこの公式を覚えなくても,そのつど平行移動の意味を考えて,上端・下端・数列の添字を調整すればいいだけです。しかし,毎回意味を考えるのはめんどうなので, 上端と下端を同じ方向にずらして,添字を逆方向にずらすと覚えることをオススメします。
第二項で和が2から始まっていて嫌なので,1に揃えるために公式を使いました。「和が から始まるから下端を にするためには……?」と意味を考えるのではなく, 「シグマの上と下から1引いて添字に1足す」と機械的に計算しましょう。
この程度の公式なら,毎回意味を考えてもなんとかなりますが,二重和が登場してくると,機械的な計算なしでは相当厳しくなります。
二重和の記号の意味
二重和の記号の意味
まず,シグマが2つ並んだ二重和の記号の意味について説明しておきます。理解してる人は読み飛ばしてください。シグマが並んだ式を見てビビってしまう人は読んでみてください。
・シグマが2つ並んだ場合,内側のシグマから順番に計算します:
のすべての和
となる のすべての和
・和の最後(シグマの上端)が自明のときは,2つのシグマを簡略化して1つで書くこともあります。
のすべての和
・足し上げるときの条件をシグマの下に書くこともあります。
となる のすべての和
二重和の計算
二重和の計算
さて,いよいよ本題です。
2つのシグマの交換:
(2)
どちらも のすべての和を表しているという意味から明らかです。多くの場合においてシグマは交換できるのですが,左側のシグマの足し上げる変数が右側のシグマの上端に含まれている場合は交換できません。
はシグマを交換できない
以下の分解公式は非常に重要です。機械的に分解できるようになりましょう。
2つのシグマの分解:
(3)
分配法則 を一般化しただけの式ですが,複雑な証明の中で何気なく使われていると気づきにくいので注意しましょう。(例えば,ビネコーシーの恒等式の証明)
シグマは慣れるまではおどろおどろしいですが,慣れたら思考をサポートしてくれる強力な記号です