1. 高校数学の美しい物語
  2. ラグランジュの恒等式とその仲間

ラグランジュの恒等式とその仲間

更新日時 2021/03/07

有名な恒等式たちについて解説します。

1. ブラーマグプタ-フィボナッチ恒等式(BF恒等式)

(a2+b2)(c2+d2)=(acbd)2+(ad+bc)2=(ac+bd)2+(adbc)2(a^2+b^2)(c^2+d^2)\\ =(ac-bd)^2+(ad+bc)^2\\ =(ac+bd)^2+(ad-bc)^2

2. ブラーマグプタの恒等式

(a2+nb2)(c2+nd2)=(acnbd)2+n(ad+bc)2=(ac+nbd)2+n(adbc)2(a^2+nb^2)(c^2+nd^2)\\ =(ac-nbd)^2+n(ad+bc)^2\\ =(ac+nbd)^2+n(ad-bc)^2

3. ラグランジュの恒等式

(i=1nai2)(i=1nbi2)=(i=1naibi)2+1i<jn(aibjajbi)2(\displaystyle\sum_{i=1}^na_i^2)(\sum_{i=1}^nb_i^2)\\ =\displaystyle(\sum_{i=1}^na_ib_i)^2+\sum_{1\leq i < j \leq n}(a_ib_j-a_jb_i)^2

4. ビネ-コーシーの恒等式

(i=1naici)(i=1nbidi)=(i=1naidi)(i=1nbici)+1i<jn(aibjajbi)(cidjcjdi)(\displaystyle\sum_{i=1}^na_ic_i)(\sum_{i=1}^nb_id_i)\\=\displaystyle(\sum_{i=1}^na_id_i)(\sum_{i=1}^nb_ic_i)+\sum_{1\leq i < j \leq n}(a_ib_j-a_jb_i)(c_id_j-c_jd_i)

ラグランジュの恒等式とビネコーシーの恒等式は,シグマのせいでごちゃごちゃしているように見えますが,実は非常に美しい恒等式です。

以上の恒等式は全て有名なので,なんとなく頭の片隅にとどめておきましょう,覚えるならブラーマグプタとラグランジュがおすすめです。

目次
  • 恒等式たちの関係

  • 恒等式の証明

  • 恒等式の応用

恒等式たちの関係

恒等式の関係

  • ブラーマグプタの恒等式で n=1n=1 としたものがBF恒等式となっています。
  • ラグランジュの恒等式で n=2n=2 としたものがBF恒等式となっています。
  • ビネ-コーシーの恒等式で ai=ci,bi=dia_i=c_i, b_i=d_i としたものがラグランジュ恒等式となっています。
  • ビネ-コーシーの恒等式を行列に拡張したビネ-コーシーの定理というのがあります。
  • BF恒等式を拡張したオイラーの4平方恒等式というものもあります。以上をまとめると図のようになります。

恒等式の証明

BF恒等式やブラーマグプタの恒等式は,右辺を展開して左辺と一致することがすぐに確認できます。

上述した包含関係より,ビネ-コーシーの恒等式を証明すればラグランジュの恒等式も証明されるので,ビネ-コーシーの恒等式を証明します。

証明

1i<jn(aibjajbi)(cidjcjdi)=1i<jn(aibjcidj+ajbicjdi)+i=1naibicidi1i<jn(aibjcjdi+ajbicidj)i=1naibicidi=i=1nj=1naibjcidji=1nj=1naibjcjdi=(i=1naici)(i=1nbidi)(i=1naidi)(i=1nbici)\displaystyle\sum_{1\leq i < j \leq n}(a_ib_j-a_jb_i)(c_id_j-c_jd_i)\\ =\displaystyle\sum_{1\leq i < j \leq n}(a_ib_jc_id_j+a_jb_ic_jd_i)+\sum_{i=1}^na_ib_ic_id_i\\ \:\:-\displaystyle\sum_{1\leq i < j \leq n}(a_ib_jc_jd_i+a_jb_ic_id_j)-\sum_{i=1}^na_ib_ic_id_i\\ =\displaystyle\sum_{i=1}^n\sum_{j=1}^na_ib_jc_id_j-\sum_{i=1}^n\sum_{j=1}^na_ib_jc_jd_i\\ =\displaystyle(\sum_{i=1}^na_ic_i)(\sum_{i=1}^nb_id_i)-(\sum_{i=1}^na_id_i)(\sum_{i=1}^nb_ic_i)

ビネコーシーの恒等式の証明

2行目への式変形の際に同じものを足して引きました。(第2項と第4項)

4行目の変形へは少しわかりにくいので,イメージを図に示します。

(赤+青)+緑=全体

また,最終行への変形の際にシグマの分解を用いました。(→シグマ計算を機械的に行うための3つの公式)

恒等式の応用

1. シュワルツの不等式の証明

ラグランジュの恒等式から,i=1nai2i=1nbi2(i=1naibi)2\displaystyle\sum_{i=1}^na_i^2\sum_{i=1}^nb_i^2 \geq (\sum_{i=1}^na_ib_i)^2 が一瞬でわかるので,ラグランジュの恒等式はシュワルツの不等式の証明そのものになっています。

2:ペル方程式への応用

x2ny2=1x^2-ny^2=1 をペル方程式と言い,ペル方程式の整数解を求める問題が広く研究されています。

ペル方程式の整数解 (x1,y1),(x2,y2)(x_1,y_1),\:(x_2, y_2) (同じものでもよい)が見つかれば,ブラーマグプタの恒等式で a=x1,b=y1,c=x2,d=y2,n=na=x_1,\:b=y_1,\:c=x_2,\:d=y_2,\:n=-n として,

(x1x2ny1y2)2n(x1y2y1x2)2=1(x_1x_2-ny_1y_2)^2-n(x_1y_2-y_1x_2)^2=1

となるので,(x1x2ny1y2,x1y2y1x2)(x_1x_2-ny_1y_2,x_1y_2-y_1x_2) もペル方程式の解であることが分かります。

こうして, 2つ(または1つ)の整数解から無数の整数解を生成することができます。

僕の好きな恒等式はラグランジュの恒等式です!

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