ペル方程式に関する基本的な性質まとめ
整数 と に関する不定方程式: をペル方程式と言う。
ペル方程式について,大学入試レベルで知っておくと便利な知識を整理しました。
より一般に, という形の不定方程式をペル方程式と呼ぶこともありますが,ここでは「ペル型方程式」と呼んで区別します。
二次の不定方程式をペル方程式に帰着させる
二次の不定方程式をペル方程式に帰着させる
二次の不定方程式 の多くがペル型方程式に帰着できます。
両辺 倍して とおくと,
となりペル型方程式に帰着される。
が整数なら も整数なので上記のペル型方程式の整数解 が求まればもとの整数解も全て求まる。
平方完成するとペル型方程式に帰着される:
ここで, とおくと,
となる。 が整数なら も整数なので上記のペル型方程式の整数解 が求まればもとの整数解も全て求まる。
ペル方程式についての性質
ペル方程式についての性質
ペル方程式 について考えます。
まず, が解なら なども解なので がともに非負である解を考えます。
次に, は自明な解なのでそれ以外の解について考えます。
が平方数の場合,左辺が と因数分解できるので簡単に解けます。そこで,以下では が平方数でない場合の定理を述べます。
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定理1
ペル方程式には必ず自明でない解が無限個存在する。 -
定理2
ペル方程式の解の中で を最小にするような解を とおく。すると,自然数 を用いて
という形で書ける もまたペル方程式の解であり,それで全てを尽くす。 -
定理3
上記の を見つけるそれなりに速いアルゴリズムがある。
定理の証明は難しいので割愛します,より詳細を知りたい方はペル方程式(英語サイト)を参照して下さい。証明を知らなくても入試で不利になることはありません。定理2を背景とする問題はたまに出題されます。
ペル方程式の解について
ペル方程式の解について
初期解について
定理2における を初期解と言います。初期解を求めてしまえば定理2によりペル方程式の一般解が求められます。
初期解を求めるのは時に難しい
初期解を求めるのは簡単ではありません。例えば の場合だと初期解は です。直感では無理ですね。そこで定理3が活躍します。
歴史についてちょっとした小噺
7世紀にインドの数学者ブラーマグプタはその著書『ブラーマ・スプタ・シッダーンタ』で の初期解が であることを証明しています。
ちなみに『ブラーマ・スプタ・シッダーンタ』は について記述された本であると言われています。
解が無限に得られることについて追記
定理2と関連して,ペル方程式の解が つ見つかればそれをもとに無限個の解を作り出すことができます。→ブラーマグプタの恒等式 の一番下をご覧ください。
より一般のペル方程式
一般のペル型方程式については定理1は成り立ちません。 例えば, について考えると, となり平方剰余の考え方から左辺は絶対に の倍数にならないので整数解は持ちません。→平方剰余と基本的な問題
連分数展開への応用
連分数展開を用いるとペル方程式の解を構成できます。大雑把なイメージとしては の解は, を満たすので, を有理数 で近似するために連分数展開する……という感じです。
詳細は ペル方程式の連分数を用いた魔法の解法(tsujimotterのノートブック) をご参照ください。 -
ペル方程式の世界はもっともっと広いですが,自分も深く理解していないので概観になってしまいましたm(__)m
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