二次関数の決定とその背景

二次関数の決定とは,与えられた条件を満たす二次関数を求める問題です。

この記事では, 二次関数の決定問題の解き方二次関数の決定の背景 について解説します。

二次関数の決定(パターン1)

二次関数の決定には大きく3つのパターンがあります。1つずつ解説します。

例題1

(1,0),(2,3),(3,8)(1,0), (2,3), (3,8) を通る二次関数を求めよ。

求める二次関数を y=ax2+bx+cy=ax^2+bx+c とおく。

(1,0)(1,0) を通るので,x=1,y=0x=1,y=0 を代入すると

0=a+b+c0=a+b+c

同様に,(2,3),(3,8)(2,3),(3,8) を通るので

3=4a+2b+c8=9a+3b+c 3=4a+2b+c\\ 8=9a+3b+c

この連立方程式を解くと,a=1,b=0,c=1a=1,b=0,c=-1 となる。

よって,求める二次関数は y=x21y=x^2-1 である。

ポイント

このように,通る3点が与えられる二次関数の決定問題は,

二次関数を y=ax2+bx+cy=ax^2+bx+c とおいて,a,b,ca,b,c を計算する

という方法で解けます。

→高校数学の問題集 ~最短で得点力を上げるために~のT26では,本問の別解と,このような「二次関数の決定」で計算ミスをしないためのコツも紹介しています。

二次関数の決定(パターン2)

例題2

頂点の座標が (1,1)(1,1) で,(2,2)(2,2) を通る二次関数を求めよ。

求める二次関数を y=a(xp)2+qy=a(x-p)^2+q とおく。

頂点の座標が (1,1)(1,1) なので,p=q=1p=q=1 である。

よって,二次関数の式は

y=a(x1)2+1 y=a(x-1)^2+1

となる。この式に (2,2)(2,2) を代入すると

2=a(21)2+1 2=a(2-1)^2+1

となる。これを解くと

2=a+1a=1 2=a+1\\ a=1

となる。よって,求める二次関数は, y=(x1)2+1y=(x-1)^2+1 である。

ポイント

このように,頂点や軸に関する条件が与えられる二次関数の決定問題は,

二次関数を y=a(xp)2+qy=a(x-p)^2+q とおいて,a,p,qa,p,q を計算する

という方法で解けます。

二次関数の決定(パターン3)

例題3

xx 軸との交点が (1,0)(1,0)(2,0)(2,0)(0,2)(0,2) を通る二次関数を求めよ。

求める二次関数を y=a(xx1)(xx2)y=a(x-x_1)(x-x_2) とおく。

xx 軸との交点が (1,0)(1,0)(2,0)(2,0) なので,x1=1,x2=2x_1=1,x_2=2 が分かる:

y=a(x1)(x2) y=a(x-1)(x-2)

この式に (0,2)(0,2) を代入すると,

2=a(1)(2) 2=a(-1)(-2)

よって,a=1a=1 である。

つまり,求める二次関数は y=(x1)(x2)y=(x-1)(x-2) である。

ポイント

このように,xx 軸との交点(共有点)の条件が与えられる二次関数の決定問題は,

二次関数を y=a(xx1)(xx2)y=a(x-x_1)(x-x_2) とおいて,a,x1,x2a,x_1,x_2 を計算する

という方法で解けます。

3つのパターンまとめ

  • パターン1:通る3点が与えられたら
    y=ax2+bx+cy=ax^2+bx+c とおいて,a,b,ca,b,c を計算する

  • パターン2:頂点や軸の情報が与えられたら
    y=a(xp)2+qy=a(x-p)^2+q とおいて,a,p,qa,p,q を計算する

  • パターン3:xx 軸との共有点が与えられたら
    y=a(xp)(xq)y=a(x-p)(x-q) とおいて,a,x1,x2a,x_1,x_2 を計算する

以下では,二次関数の決定問題の「パターン1」の背景を説明します。

nn 次関数の決定には条件が n+1n+1 個いる

これまでの計算を振り返りましょう。

二次関数を決定するためには,3つの条件が必要です。特に,パターン1で見たように,通る3点が与えられたら,二次関数は1つに決まります。

より一般に,以下の定理が成立します。

定理

n+1n+1(xi,yi)(i=1,2,,n+1(x_i,y_i)\:(i=1,2,\cdots, n+1,ただし xix_i は互いに異なる)を通る nn 次以下の関数がただ1つ存在する。

nn 次以下」と書いたのは「通る3点が直線上にある場合は,二次関数は存在せず一次関数が1つ定まる」というような例外があるからです。

ほとんどの場合はちょうど nnの関数が1つ定まります。

証明

この定理の証明は2通りあります。

  1. 高校数学の範囲で理解できる方法
  2. ヴァンデルモンド行列の行列式(大学で学ぶ線形代数の知識)を用いる方法。→ヴァンデルモンド行列式の証明と応用例

以下では,上記の証明1を紹介します。以下の2つにわけて証明します。

  • 前半:与えられた n+1n+1 点を通る nn 次以下の関数は多くても1つ
  • 後半:実際にその1つを構成できる
前半の証明

y=f(x), y=g(x)y=f(x), y=g(x) が与えられた点をすべて通る nn 次以下の関数とすると,

f(xi)=g(xi)(i=1,2,,n+1) f(x_i)=g(x_i)\:(i=1,2,\cdots,n+1) である。

h(x)=f(x)g(x)h(x) = f(x) - g(x) とおくと,各 k (1kn+1)k \ (1 \leqq k \leqq n+1) について h(xk)=0h(x_k) = 0 である。

よって,因数定理より,

f(x)g(x)=a(xx1)(xx2)(xxn+1) f(x)-g(x)=a(x-x_1)(x-x_2)\cdots(x-x_{n+1})

となる。

a=0a=0 でないと右辺が n+1n+1 次になってしまうので a=0a=0 である。

すなわち f(x)=g(x)f(x)=g(x) である。

ラグランジュの補間公式

証明の後半です。「通る n+1n+1 点を通る nn 次以下の関数を構成できる」方法を述べます。

一般的に書くと大変なので,n=2n=2 の場合で説明します。

ラグランジュの補間公式

(a,A),(b,B),(c,C)(a,A),(b,B),(c,C) を通る二次関数の方程式は,

y=A(xb)(xc)(ab)(ac)+B(xa)(xc)(ba)(bc)+C(xa)(xb)(ca)(cb)y=A\dfrac{(x-b)(x-c)}{(a-b)(a-c)}+B\dfrac{(x-a)(x-c)}{(b-a)(b-c)}+C\dfrac{(x-a)(x-b)}{(c-a)(c-b)}

実際に代入すれば,与えられた3点を通ることが確認できます。美しいです。

しかし,この公式は分数がたくさん出てきて思いのほか計算が大変なので,二次関数の決定問題で使うのはオススメしません。

一般的な nn 次関数の場合や,難問への応用は ラグランジュの補間公式とその応用例 で解説しています。

私は「理論的に美しい定理」も「実戦で威力を発揮するテクニック」のどちらも好きです。

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