定理1
ヴァンデルモンド行列 Vn の行列式について,
detVn=1≤i<j≤n∏(xj−xi)
因数定理を用いたおもしろい証明を紹介します。
証明1
ヴァンデルモンド行列の行列式
detVn
は変数
x1,x2,⋯,xn
に関する多項式である。行列式の性質「2
つの列が同じなら行列式は
0」より
x1=x2
のときは行列式が
0
となるので因数定理より
detVn
は
x2−x1
を因数に持つ。
同様に考えると,detVn は,ある多項式 f(x) を用いて
detVn=f(x)1≤i<j≤n∏(xj−xi)
と書けることがわかる。
あとは
f(x)=1
を示せばよい。
行列式の定義
detAn=σ∈Sn∑sgn(σ)i=1∏naiσ(i)
より
detVn
は
x1,x2,⋯,xn
に関して
21n(n−1)
次式である。よって
f(x)
は定数:
detVn=C1≤i<j≤n∏(xj−xi)
あとは
x2x32x43⋯xnn−1
(対角線上の数を掛けあわせたもの,σ
が恒等置換に対応)の係数を比較すれば
C=1
となる。
帰納法とラプラス展開を用いて証明することもできます。
証明2
n=1 のとき,detV1=1 となり成立。
n=k−1 のときを仮定して n=k でも成り立つことを示す。一般の場合に書くと複雑なので k=4 の場合を書く。
det⎝⎛1x1x12x131x2x22x231x3x32x331x4x42x43⎠⎞
について,2~4列目から1列目を引くことにより
det⎝⎛1x1x12x130x2−x1x22−x12x23−x130x3−x1x32−x12x33−x130x4−x1x42−x12x43−x13⎠⎞
と等しい。ラプラス展開すると,右下 3×3 部分が残って
det⎝⎛x2−x1x22−x12x23−x13x3−x1x32−x12x33−x13x4−x1x42−x12x43−x13⎠⎞
と等しい。3行目から2行目の x1 倍を引いて,そのあとで2行目から1行目の x1 倍を引くと,
det⎝⎛x2−x1x22−x1x2x23−x1x22x3−x1x32−x1x3x33−x1x32x4−x1x42−x12x4x43−x1x42⎠⎞
と等しい。i 行目の各要素は xi+1−x1 を因数に持つので,上式は (x2−x1)(x3−x1)(x4−x1)×
det⎝⎛1x2x221x3x321x4x42⎠⎞
となりサイズが1つ小さいヴァンデルモンド行列式に帰着できた。