サラスの公式と使い方

サラスの公式

3×3の行列の行列式は

左上から右下にかけて足す」マイナス「右上から左下にかけて足す

という方法で計算できる。 サラスの公式

サラスの公式の意味と応用を紹介します。実は大学入試でも役立つおもしろい公式です。

サラスの公式の使用例を見てみましょう。

例題1

(012343210)\begin{pmatrix}0&1&2\\3&4&-3\\-2&-1&0\end{pmatrix} の行列式を計算せよ。

証明

左上から右下にかけて足す」と,

0×4×0+1×(3)×(2)+2×3×(1)=0+66=0\begin{aligned} &0\times 4\times 0+1\times (-3)\times (-2)+2\times 3\times (-1)\\ &=0+6-6\\ &=0 \end{aligned}

サラスの公式の例

右上から左下にかけて足す」と

0×(3)×(1)+1×3×0+2×4×(2)=0+016=16\begin{aligned} &0\times (-3)\times (-1)+1\times 3\times 0+2\times 4\times (-2)\\ &=0+0-16\\ &=-16 \end{aligned}

サラスの公式の例

答えはなので,1616

  • このように,サラスの公式を使うと,3×3行列の行列式の計算をすばやくできます。
  • 例題1のように,いくつかの要素が 00 である場合は特に楽に計算できます。

証明

サラスの公式がなぜ成り立つかを説明します。証明というほどのものではありません。置換による行列式の定義をきちんと書くだけです。

証明

行列式の3つの定義・性質・意味で述べた「行列式の置換による定義」より,

(a11a12a13a21a22a23a31a32a33)\begin{pmatrix} a_{11} & a_{12} &a_{13}\\ a_{21} & a_{22} &a_{23}\\ a_{31} & a_{32} &a_{33}\\ \end{pmatrix} の行列式は,

a11a22a33+a12a23a31+a13a21a32a_{11}a_{22}a_{33}+a_{12}a_{23}a_{31}+a_{13}a_{21}a_{32}
a11a23a32a12a21a33a13a22a31-a_{11}a_{23}a_{32}-a_{12}a_{21}a_{33}-a_{13}a_{22}a_{31}

となる。赤い部分は「左上から右下へ」で計算できる。紫の部分は「右上から左下へ」で計算できる。

  • なお,2×2行列も同じような公式が成立します。実際,(a11a12a21a22)\begin{pmatrix}a_{11}&a_{12}\\a_{21}&a_{22}\end{pmatrix} の行列式は a11a22a_{11}a_{22}a12a21-a_{12}a_{21}となります。

サラスの公式の応用

サラスの公式は大学受験でも活躍します。四面体の体積をすばやく計算できます。

四面体の体積を求める公式

座標空間上の4点 O(0,0,0),A(x1,y1,z1),B(x2,y2,z2),C(x3,y3,z3)O(0,0,0),A(x_1,y_1,z_1), B(x_2,y_2,z_2),C(x_3,y_3,z_3) に対して四面体 OABCOABC の体積は, 16y1z2x3+z1x2y3+x1y2z3z1y2x3x1z2y3y1x2z3=16det(x1y1z1x2y2z2x3y3z3)\begin{aligned} &\dfrac{1}{6}|y_1z_2x_3+z_1x_2y_3+x_1y_2z_3\\ &\quad -z_1y_2x_3-x_1z_2y_3-y_1x_2z_3|\\ &=\dfrac{1}{6}\left|\det\begin{pmatrix}x_1&y_1&z_1\\x_2&y_2&z_2\\x_3&y_3&z_3\end{pmatrix}\right| \end{aligned}

つまり,以下の手順で体積が計算できます!

  1. 座標を並べた行列 X=(x1y1z1x2y2z2x3y3z3)X=\begin{pmatrix}x_1&y_1&z_1\\x_2&y_2&z_2\\x_3&y_3&z_3\end{pmatrix} を書く
  2. その行列式 detX\det X をサラスの公式で計算する
  3. 最後に 16\dfrac{1}{6} 倍する。

例題

例題2

O(0,0,0),A(0,1,2),B(3,4,3),C(2,1,0)O(0,0,0),A(0,1,2),B(3,4,-3),C(-2,-1,0) のとき,四面体 OABCOABC の体積を計算せよ。

解答
  1. X=(012343210)X=\begin{pmatrix}0&1&2\\3&4&-3\\-2&-1&0\end{pmatrix} の行列式を計算すればよい。

  2. サラスの公式を使って計算すると,例題1で計算したように 1616 になる

  3. よって体積は,166=83\dfrac{16}{6}=\dfrac{8}{3}

面積を求める公式

四面体の体積は3×3行列の行列式で表せました。同様に,三角形の面積は2×2行列の行列式で表せます。

三角形の面積求める公式

座標平面上の3点 O(0,0),A(x1,y1),B(x2,y2)O(0,0), A(x_1,y_1), B(x_2,y_2) に対して,三角形 OABOAB の面積は,
12x1y2y1x2=12det(x1y1x2y2)\dfrac{1}{2}|x_1y_2-y_1x_2| =\dfrac{1}{2}\left|\det\begin{pmatrix}x_1&y_1\\x_2&y_2\end{pmatrix}\right|

原点が含まれない場合

面積or体積を求めたい図形の頂点に原点が含まれない場合は,いずれかの頂点が原点に重なるように全ての頂点を平行移動して考えます。

A(1,3),B(1,3),C(0,1)A(1,3), B(-1,-3), C(0,-1) として三角形 ABCABC の面積を求めたいときは,各頂点を yy 方向に1ずらして A(1,4),B(1,2),C(0,0)A'(1,4), B'(-1, -2), C'(0,0) として

三角形 ABCABC の面積=三角形 ABCA'B'C' の面積 =1(2)4(1)2=1=\frac{1\cdot(-2)-4\cdot(-1)}{2}=1

とすればよい。

面積・体積公式の応用例としては,以下があります。

四面体の体積を求める公式の証明

愚直に体積を計算していく方針ですが,座標空間の便利な道具を駆使することで簡単な計算で証明できます。

使う道具は以下の3つです:

証明

三角形 OABOAB を底面とする四面体と見て体積を計算する。

三角形 OABOAB の面積 SS は,

S=12OA×OB×sinAOB=12OA×OB×1cos2AOB=12OA2OB2(OAundefinedOBundefined)2=12(x12+y12+z12)(x22+y22+z22)(x1x2+y1y2+z1z2)2=12(y1z2y2z1)2+(z1x2z2x1)2+(x1y2x2y1)2\begin{aligned} S &= \dfrac{1}{2}OA\times OB\times\sin \angle AOB\\ &= \dfrac{1}{2}OA\times OB\times\sqrt{1-\cos^2\angle AOB}\\ &= \dfrac{1}{2}\sqrt{OA^2OB^2- \left( \overrightarrow{OA}\cdot \overrightarrow{OB} \right)^2}\\ &= \dfrac{1}{2}\sqrt{(x_1^2+y_1^2+z_1^2)(x_2^2+y_2^2+z_2^2)-(x_1x_2+y_1y_2+z_1z_2)^2}\\ &= \dfrac{1}{2}\sqrt{(y_1z_2-y_2z_1)^2+(z_1x_2-z_2x_1)^2+(x_1y_2-x_2y_1)^2} \end{aligned}

次に,三角形 OABOAB を含む平面の方程式を求める。法線ベクトルはベクトルの外積を用いて,

OAundefined×OBundefined=(y1z2y2z1,z1x2z2x1,x1y2x2y1) \overrightarrow{OA}\times \overrightarrow{OB}=(y_1z_2-y_2z_1,z_1x_2-z_2x_1,x_1y_2-x_2y_1) と表せるので,求める平面が原点を通ることに注意すると,

(y1z2y2z1)x+(z1x2z2x1)y+(x1y2x2y1)z=0 (y_1z_2-y_2z_1)x+(z_1x_2-z_2x_1)y+(x_1y_2-x_2y_1)z=0

となる。

最後に三角形 OABOAB と点 CC の距離 hh を求める。点と平面の距離公式より,

h=(y1z2y2z1)x3+(z1x2z2x1)y3+(x1y2x2y1)z3(y1z2y2z1)2+(z1x2z2x1)2+(x1y2x2y1)2 h=\dfrac{|(y_1z_2-y_2z_1)x_3+(z_1x_2-z_2x_1)y_3+(x_1y_2-x_2y_1)z_3|}{\sqrt{(y_1z_2-y_2z_1)^2+(z_1x_2-z_2x_1)^2+(x_1y_2-x_2y_1)^2}}

ここで,求める体積は 13Sh\dfrac{1}{3}Sh だが SShh の分母が打ち消し合って hh の分子の 16\dfrac{1}{6} 倍が残り,証明された。

なお,この公式を応用することで六辺の長さから四面体の体積を求める公式も導出できます。→四面体の体積を求める2つの公式with行列式

サラスの公式で計算するときは「右端と左端はつながっているいわゆるドラクエスタイル」をイメージするとよいです。

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