望遠鏡和~部分分数分解など差に分解する4つの恒等式

∑k=1nak\displaystyle\sum_{k=1}^na_k を計算したいときに,ak=bk+1−bka_k=b_{k+1}-b_{k} と分解できれば,途中の項が打ち消し合って ∑k=1nak=bn+1−b1 \sum_{k=1}^na_k=b_{n+1}-b_1 のように計算できる。

この記事では,数列の計算をする上で重要なテクニックを紹介します。

この方法は望遠鏡和(telescoping sum)とも呼ばれています。

部分分数分解

この「差に分解する」手法の中でもっとも有名なものが部分分数分解です。

部分分数分解とは, 5x−1(x+1)(x−2)=2x+1+3x−2 \dfrac{5x-1}{(x+1)(x-2)}=\dfrac{2}{x+1}+\dfrac{3}{x-2} のように多項式の分数を分解することをいいます。

頻出パターン

受験レベルで覚えておくべき等式は以下の2つです:

  1. 1x(x−1)=1x−1−1x\dfrac{1}{x(x-1)}=\dfrac{1}{x-1}-\dfrac{1}{x}

  2. 1x(x−1)(x−2)=12{1(x−1)(x−2)−1x(x−1)}\dfrac{1}{x(x-1)(x-2)}=\dfrac{1}{2}\left\{\dfrac{1}{(x-1)(x-2)}-\dfrac{1}{x(x-1)}\right\}

→ 部分分数分解の3通りの方法

これらの公式を活用する例題は分数で表された数列の和の問題と一般化をどうぞ。

応用パターン

直接部分分数分解できない場合でも「不等式で評価してから分解する」使い方もあります:

例

x>1x > 1 のとき

1x2<1x(x−1)=1x−1−1x \dfrac{1}{x^2} <\dfrac{1}{x(x-1)}=\dfrac{1}{x-1}-\dfrac{1}{x}

階乗の形を差に分解する

  1. n−1n!=1(n−1)!−1n!\dfrac{n-1}{n!}=\dfrac{1}{(n-1)!}-\dfrac{1}{n!}

右辺から左辺に行くのは簡単ですが,左辺を見た時に右辺に分解するのは覚えていないと難しいです。

この恒等式は例えば漸化式を解くのに使えます。

例題

a1=2a_1=2 のもとで漸化式 an+1=(n+1)an+na_{n+1}=(n+1)a_n+n を解け。

→階乗を用いる漸化式の解法

xnx^n を差に分解する

  1. x(x−1)=13{(x+1)x(x−1)−x(x−1)(x−2)}x(x-1)=\dfrac{1}{3}\{(x+1)x(x-1)-x(x-1)(x-2)\}

両辺を x(x−1)x(x-1) で割って 33 倍すると 3=(x+1)−(x−2)3=(x+1)-(x-2) となり正しいことが分かります。

この公式の応用例として x2x^2 の和を計算する問題があります。4乗の和,べき乗の和の公式で解説した公式です。

例

∑k=1nk2=16n(n+1)(2n+1)\displaystyle\sum_{k=1}^nk^2=\dfrac{1}{6}n(n+1)(2n+1) を証明せよ

解答

上記の等式に対して両辺和を取ると,

∑k=1nk2−∑k=1nk=13(n+1)n(n−1) \sum_{k=1}^nk^2-\sum_{k=1}^n k = \dfrac{1}{3} (n+1)n(n-1)

ここで ∑k=1nk=12n(n+1)\displaystyle\sum_{k=1}^nk=\dfrac{1}{2}n(n+1) を用いると, ∑k=1nk2=13(n+1)n(n−1)+12n(n+1)=16n(n+1)(2n+1)\begin{aligned} \sum_{k=1}^nk^2 &= \dfrac{1}{3} (n+1)n(n-1)+\dfrac{1}{2}n(n+1)\\ &= \dfrac{1}{6}n(n+1)(2n+1) \end{aligned} となる。

一般化

St=∑k=1nktS_t=\displaystyle\sum_{k=1}^nk^t とおきます。

等式4を一般化すると x(x−1)⋯(x−t−1)x(x-1)\cdots (x-t-1) という形の多項式を「差の形」で表すことができます。その等式と S1,S2,⋯ ,St−1S_1, S_2,\cdots, S_{t-1} を用いて StS_t を計算できます。

別の観点

4を一般化した式を使うことで,以下の式を導けます。

∑k=1nk(k+1)…(k+m−1)=1m+1n(n+1)…(n+m)\begin{aligned} &\sum_{k=1}^nk(k+1)\dots(k+m-1)\\ &=\dfrac{1}{m+1}n(n+1)\dots (n+m) \end{aligned}

この式は,「連続する mm 個の整数の積の和」が

「連続する(m+1)個の整数の積」÷(m+1) \text{「連続する} (m+1) \text{個の整数の積」} \div (m+1)

になることを表しています。

「差に分解して和と取る手法」のことを,望遠鏡和(telescoping sum)と言うこともあるようです。