4乗の和,べき乗の和の公式

S1=t=1nt=12n(n+1)S_1=\displaystyle\sum_{t=1}^nt=\dfrac{1}{2}n(n+1)

S2=t=1nt2=16n(n+1)(2n+1)S_2=\displaystyle\sum_{t=1}^nt^2=\dfrac{1}{6}n(n+1)(2n+1)

S3=t=1nt3={12n(n+1)}2S_3=\displaystyle\sum_{t=1}^nt^3=\left\{\dfrac{1}{2}n(n+1)\right\}^2

S4=t=1nt4=130n(n+1)(2n+1)(3n2+3n1)S_4=\displaystyle\sum_{t=1}^nt^4=\dfrac{1}{30}n(n+1)(2n+1)(3n^2+3n-1)

S5=t=1nt5=112n2(n+1)2(2n2+2n1)S_5=\displaystyle\sum_{t=1}^nt^5=\dfrac{1}{12}n^2(n+1)^2(2n^2+2n-1)

3乗の和の公式までは教科書で扱っているので証明は省略します。3乗の和まで公式があるのなら4乗や5乗の和はどうなるのか気になるところです。4乗以降の公式を覚える必要はありませんが,一般化したくなる気持ちは重要です。

一般的に kk 乗の和 SkS_k の公式は以下の3つの道具を用いて導くことができます:

  • (t+1)k+1tk+1=i=0kk+1Citi(t+1)^{k+1}-t^{k+1}=\displaystyle\sum_{i=0}^{k}{}_{k+1}\mathrm{C}_it^i
  • 階差数列の和の考え方
  • 1,2,,k11, 2, \cdots, k-1 乗の和の公式

4乗の和の公式の証明

具体的に4乗の和の公式を求めてみます。

証明

恒等式, (t+1)5t5=5t4+10t3+10t2+5t+1 (t+1)^{5}-t^{5}=5t^4+10t^3+10t^2+5t+1

において両辺 t=1t=1 から nn まで和を取る:

(n+1)51=5S4+10S3+10S2+5S1+n (n+1)^5-1=5S_4+10S_3+10S_2+5S_1+n

ここで,左辺については階差数列の和の「打ち消し合う」考え方を用いた。

上式に S1,S2,S3S_1, S_2, S_3 の公式を代入して S4S_4 について解くと求める公式が得られる:

(n+1)51=5S4+104n2(n+1)2+106n(n+1)(2n+1)+52n(n+1)+n\begin{aligned} &(n+1)^5-1\\ &=5S_4+\dfrac{10}{4}n^2(n+1)^2\\ &\quad +\dfrac{10}{6}n(n+1)(2n+1)+\dfrac{5}{2}n(n+1)+n \end{aligned}

S4=15n5+12n4+13n3130n=130n(n+1)(2n+1)(3n2+3n1)\begin{aligned} S_4 &= \dfrac{1}{5}n^5+\dfrac{1}{2}n^4+\dfrac{1}{3}n^3-\dfrac{1}{30}n\\ &=\dfrac{1}{30}n(n+1)(2n+1)(3n^2+3n-1) \end{aligned}

後半の式の展開や因数分解はなかなか複雑でよい練習問題です。一度手を動かして計算してみてください!

5乗の和の公式の証明

4乗の和の公式と全く同様にして証明できます。

証明

恒等式, (t+1)6t6=6t5+15t4+20t3+15t2+6t+1 (t+1)^{6}-t^{6}=6t^5+15t^4+20t^3+15t^2+6t+1

において両辺 t=1t=1 から nn まで和を取る:

(n+1)61=6S5+15S4+20S3+15S2+6S1+n (n+1)^6-1=6S_5+15S_4+20S_3+15S_2+6S_1+n

ここで,左辺については階差数列の和の「打ち消し合う」考え方を用いた。

上式に S1,S2,S3,S4S_1, S_2, S_3, S_4 の公式を代入して S5S_5 について解くと求める公式が得られる:

S5=112n2(n+1)2(2n2+2n1) S_5=\dfrac{1}{12}n^2(n+1)^2(2n^2+2n-1)

5乗の和の公式となると計算がかなり複雑です(複雑なので省略しました)。

※この方法と似ていますが,→部分分数分解など差に分解する4つの恒等式の最後では「xnx^n を差に分解する恒等式」を用いて求める手法を紹介しています。

kk 乗の和の公式(ファウルハーバーの公式)

原理的には上記の方法で全ての kk に対して順々にべき乗の和の公式を求めることができます。実際に kk 乗の和を求めてみると,計算は煩雑で,残念ながら結果も以下のような複雑な形になります:

ファウルハーバーの公式

Sk=1k+1i=1k+1(1)δi,kk+1CiBk+1iniS_k=\dfrac{1}{k+1}\sum_{i=1}^{k+1}(-1)^{\delta_{i,k}}{}_{k+1}\mathrm{C}_iB_{k+1-i}n^i

ただし,

  • BjB_j はベルヌーイ数と呼ばれる数列。(→ベルヌーイ数とゼータ関数
  • δi,k\delta_{i,k} はクロネッカーのデルタ(i=ki=k のときに 11 でそうでないとき 00

です。

一般的な公式はいまいちピンときませんが,44 乗の和,55 乗の和の公式を証明した方法を一般化して,数学的帰納法を使うことで以下の「kk 乗和の公式のわかりやすい性質」が示せます。

  • kk 乗和の公式は k+1k+1 次多項式で表すことができる。
  • その多項式の k+1k+1 次の係数は 1k+1\dfrac{1}{k+1}

数学的帰納法のパターン3のよい練習問題になります。

+α+\alpha

kk 乗和をマスターしたら次は「等比×等差」型 t=1ntrt \sum_{t=1}^n t r^t 型に挑戦してみましょう。→ 等差×等比,2乗×等比の和を求める2通りの方法

複雑な計算で心が折れないようにゴツイ数式に慣れておきましょう。

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