ベルヌーイ数とゼータ関数
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ベルヌーイ数 を と定める。
を ベルヌーイの母関数 ということがあります。
ベルヌーイ数は数学において非常に重要な数です。特に 乗の和(べき乗の和)の公式・ゼータ関数と深い関係があります。
ベルヌーイ数の計算
ベルヌーイ数の計算
ベルヌーイ数を計算してみましょう。
の高階微分を直接計算をしても良いですが,今回は のマクローリン展開を利用して計算してみます。
と変形できる。 の項まで計算してみると
となる。つまり,
,,,, となる。ちなみに,6乗まで頑張ると,, がわかる。
奇数番目のベルヌーイ数
を 以上の奇数とするとき, である。
は偶関数である。実際 と変形できる。
つまり, の冪級数展開に奇数次の項は現れないので定理1が成立。
ベルヌーイ数を与える漸化式
級数展開からベルヌーイ数を計算するのは大変でした。実はもっと簡単な方法があります。
(ただし とする)
自明な式 の右辺の各項を級数展開すると 右辺を展開すると,
の係数を比較することで を得る。移項すると つまり という漸化式が得られる。
なお,この漸化式から帰納的にベルヌーイ数が有理数であることが示されます。
ベルヌーイ多項式
ベルヌーイ多項式
ベルヌーイ多項式を と定めます。
明らかに です。
ベルヌーイ多項式をいくつか計算すると となります。
いきなりですが,べき乗の和の公式 を思い出しましょう。
これらは,ベルヌーイ多項式と「定数倍」と「定数項」を除いて一致します! 実際,次の定理が成立します。
まず であることを示す。
ベルヌーイ多項式の定義を元に式変形をする。
なお,3つ目の等号は,, が絶対収束することから従う。(合成積(畳み込み)の意味と応用3つ を参照)
よって,
となる。 の係数を比較することで すなわち, を得る。こうして
なお,ベルヌーイ数とベルヌーイ多項式はオイラー・マクローリンの和公式にも登場します。
ファウルハーバーの公式
べき乗の和を,ベルヌーイ数で明示的に表す公式もおもしろいです。
ゼータ関数
ゼータ関数
累乗和の公式と関連するということは,ゼータ関数との関連もありそうです。
実際,ベルヌーイ数はゼータ関数と非常に深い関わりがあります。
が 以上の整数のとき,
また, が偶数のとき
証明は複素解析と数論の知識が必要となるため省略します。
この公式を用いてゼータの値を計算していきます。
第1公式
奇妙な無限和
1つ目の公式に を代入することで を得ます。 と考える(※)と という式を得ます(ただし,※の1つめの等号は正しくないです)。
自明な零点
1つ目の公式に 以上の奇数を代入しましょう。 以上の奇数 に対してベルヌーイ数 は になるのでした。 と表すと が得られます。これが自明な零点というものです。
第2公式
バーゼル問題
を代入しましょう。
こうして バーゼル問題 の解が得られます。
その他の計算
バーゼル問題 の記事に触れられていた のケースも計算してみます。
第2公式とベルヌーイ数が有理数であることから は有理数になることが示されます。
偶数のゼータはベルヌーイ数により解き明かされましたが,奇数のゼータは非常に謎が多いです。大きな未解決問題ともなっています。 に関してはアペリーの定理というものがあります。是非調べてみてください。
ガンマ関数とゼータ関数を結ぶ公式にベルヌーイの母関数が出てきます。非常におもしろいですね。