オイラー・マクローリンの和公式
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オイラー・マクローリンの和公式を紹介します。見た目はゴツいですが高校数学の範囲で理解できます。そして理解できたら楽しい定理です。
任意の正の整数 に対して,
ただし, は において 級である関数。
記号や用語の意味も含めてわかりやすく解説します。
オイラー・マクローリンの和公式の意味
オイラー・マクローリンの和公式の意味
- 公式の左辺に現れる関数の値の和 と定積分 は近そうです(曲線の下側の面積を長方形の和で近似するイメージ)。
- その近似誤差を明示的な式で表すのが,オイラー・マクローリンの和公式です。
- 右辺の1行目を移項すると,左辺は
となります。左右対称できれいですね。 - 右辺の各項の分母には階乗,分子には高階微分があり,テイラー展開となんとなく似ています。 は「どこまで展開するか」を表す正の整数で,自由に決められます。
- は定数(ベルヌーイ数), は多項式(ベルヌーイ多項式)です。詳細は後述します。 は の小数部分を表します。→ガウス記号の定義と3つの性質
- 級とは, 回微分できて 階導関数が連続という意味です。→C1級関数,Cn級関数などの意味と具体例
具体例
具体例
オイラー・マクローリンの和公式
を使って,高校数学で習う という式を導いてみます。
, としてみると,
- 左辺は
- 右辺の1行目は
- 右辺の2行目は,後述のように であることと,3階微分が であることから,
- 右辺の3行目は, の4階微分が になるので
よって,
同様に とすることで, 乗和の公式が導出できます。
ベルヌーイ数とベルヌーイ多項式
ベルヌーイ数とベルヌーイ多項式
公式に現れるベルヌーイ数 とベルヌーイ多項式 の定義を紹介します。いくつか同値な定義がありますが,そのうちの1つです。
ベルヌーイ数 は,二項係数を含む漸化式で定義されます:
具体的に計算すると, となります。
ベルヌーイ多項式 は,ベルヌーイ数と二項係数を使って定義される 次多項式です:
具体的に計算すると, となります。
ベルヌーイ数とベルヌーイ多項式について,以下の性質が成り立ちます。
- が 以上の奇数なら
- なら
2~4は定義にもとづいて簡単な計算をするだけで確認できます。1の証明はベルヌーイ数とゼータ関数も参照してください。
証明の概要
証明の概要
オイラー・マクローリンの和公式の証明の肝は「部分積分」です。
-
冒頭の定理よりも少しだけ強い以下の式を証明する:
(ただし は任意の正の整数)
実際,この式で とすれば( 以上の奇数 に対して という性質1を使うと)冒頭の式になる。 -
の場合は, に関する帰納法で証明できる。
- の場合は, と を使って簡単な計算で確認できる。
- の証明は,部分積分からわかる
という式を使う。ただし,上記の変形の途中でベルヌーイ数の性質2~4を使った。
-
一般の に対しては, の場合の結果とそれを だけ平行移動した式(合計 個)を足し合わせることで証明できる。
参考文献:ベルヌーイ数が展開する数学の分野(PDF)
(ベルヌーイ数に関するさまざまな話題がわかりやすく書かれており,おすすめです)
ベルヌーイ数の性質3と4の証明は良い計算練習になります。