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テイラーの定理の例と証明

更新日時 2021/03/07
テイラーの定理

閉区間 [a,b][a,b] で定義された関数 f(x)f(x)axba\leq x\leq b において nn 回微分可能なとき,

f(b)=k=0n1f(k)(a)(ba)kk!+f(n)(c)(ba)nn!f(b)=\displaystyle\sum_{k=0}^{n-1}f^{(k)}(a)\dfrac{(b-a)^{k}}{k!}+f^{(n)}(c)\dfrac{(b-a)^n}{n!}

を満たす c(a<c<b)c\:(a <c <b) が存在する。

テイラー展開の根拠となる非常に重要な定理です。

目次
  • 平均値の定理の一般化

  • テイラーの定理とテイラー展開

  • テイラーの定理の証明

  • 補足

平均値の定理の一般化

様子をつかむために具体的に n=1,2n=1,2 の場合についてテイラーの定理に登場する式を書き下してみます。

まず,n=1n=1 のとき f(b)=f(a)+f(c)(ba)f(b)=f(a)+f'(c)(b-a) となります。これは平均値の定理そのものです!→平均値の定理とその応用例題2パターン
つまり,テイラーの定理は平均値の定理の一般化になっています。

また,n=2n=2 のとき f(b)=f(a)+f(a)(ba)+f(c)(ba)22!f(b)=f(a)+f'(a)(b-a)+f''(c)\dfrac{(b-a)^2}{2!} という式になります。

テイラーの定理とテイラー展開

テイラーの定理において,aa を固定して bb を変数 xx だと考えてみます:

f(x)=k=0n1f(k)(a)(xa)kk!+f(n)(c)(xa)nn!f(x)=\displaystyle\sum_{k=0}^{n-1}f^{(k)}(a)\dfrac{(x-a)^{k}}{k!}+f^{(n)}(c)\dfrac{(x-a)^n}{n!}

このシグマの部分は n1n-1 次の多項式です(ccxx に依存するので末尾の項は xx に関する多項式ではありません)。

末尾の項: Rn=f(n)(c)(xa)nn!R_n=f^{(n)}(c)\dfrac{(x-a)^n}{n!}

を剰余項と言います。もし剰余項が十分小さければ無視することで f(x)f(x) を多項式で近似できます(複雑な関数を多項式とみなせるといろいろ嬉しい)。

実際,剰余項に現れる (xa)nn!\dfrac{(x-a)^n}{n!} の分母は nn の階乗で,分子は nn の指数関数なので,f(n)(c)f^{(n)}(c) があまり大きくなければ,nn\to\infty00 に収束しそうです。

例えば,nn 階微分が nn のべき乗で抑えられるとき,つまり「ある定数 A,BA,B が存在して,すべての nnx0x_0 に対して f(n)(x0)ABnf^{(n)}(x_0)\leq AB^n が成立する」とき,limnRn=0\displaystyle\lim_{n\to\infty}R_n=0 となります。つまり, f(x)=k=0f(k)(a)(xa)kk!f(x)=\displaystyle\sum_{k=0}^{\infty}f^{(k)}(a)\dfrac{(x-a)^{k}}{k!} となります。これがテイラー展開の原理です。テイラー展開の背後には平均値の定理の一般化であるテイラーの定理があるというわけです。

なお,a=0a=0 のときのテイラー展開をマクローリン展開と言います。マクローリン展開の具体例はマクローリン展開を参照して下さい。

テイラーの定理の証明

式はけっこう複雑ですがロルの定理を認めれば高校範囲でも十分理解できます。

方針

平均値の定理の証明に用いられるロルの定理を用います。「新たに作った関数 g(x)g(x) に対するロルの定理」と「もとの関数 f(x)f(x) に対するテイラーの定理」が対応します。

証明

f(b)=k=0n1f(k)(a)(ba)kk!+A(ba)nn!f(b)=\displaystyle\sum_{k=0}^{n-1}f^{(k)}(a)\dfrac{(b-a)^{k}}{k!}+A\dfrac{(b-a)^n}{n!}

となるような定数 AA を取ってくる。

f(n)(c)=Af^{(n)}(c)=A となる cc の存在を示すのが目標である。

ここで,新たな関数 g(x)g(x) を以下のように定義する:

g(x)=f(b)f(x)k=1n1f(k)(x)(bx)kk!A(bx)nn!g(x)=f(b)-f(x)-\displaystyle\sum_{k=1}^{n-1}f^{(k)}(x)\dfrac{(b-x)^{k}}{k!}-A\dfrac{(b-x)^n}{n!}

すると,

  • g(a)=0g(a)=0AA の定め方から分かる)
  • g(b)=0g(b)=0(代入すると簡単に分かる)

なのでロルの定理が使える。つまり,ある c(a<c<b)c\:(a <c <b) が存在して g(c)=0g'(c)=0 となる。

次に,a<x<ba<x<b において実際に g(x)g'(x) を計算していく:

g(x)=k=0n1f(k+1)(x)(bx)kk!+k=1n1f(k)(x)(bx)k1(k1)!+A(bx)n1(n1)!g'(x)=-\displaystyle\sum_{k=0}^{n-1}f^{(k+1)}(x)\dfrac{(b-x)^{k}}{k!}\\+\displaystyle\sum_{k=1}^{n-1}f^{(k)}(x)\dfrac{(b-x)^{k-1}}{(k-1)!}+A\dfrac{(b-x)^{n-1}}{(n-1)!}

一つ目のシグマと二つ目のシグマがほとんど打ち消し合ってくれるので,

g(x)=(bx)n1(n1)!(Af(n)(x))g'(x)=\dfrac{(b-x)^{n-1}}{(n-1)!}(A-f^{(n)}(x))

よって,g(c)=0g'(c)=0 から f(n)(c)=Af^{(n)}(c)=A

となり目標が証明された。

補足

  • axba\leq x\leq b において nn 回微分可能」という条件は,もう少し弱められます。具体的には「axba\leq x\leq b において n1n-1 回連続微分可能 かつ a<x<ba<x<b において nn 回微分可能」としても成立します。

  • この記事では,剰余項が Rn=f(n)(c)(xa)nn!R_n=f^{(n)}(c)\dfrac{(x-a)^n}{n!} というタイプのテイラーの定理を紹介しました。他にもいろいろな剰余項の表し方があり,それぞれ定理の前提条件も微妙に異なります。 →テイラーの定理(Wikipedia)

二つのシグマがバサッと打ち消し合うのが素晴らしいですね。

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