テイラーの定理とテイラー展開~例と証明
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閉区間 で 回微分可能な関数 について,
を満たす が存在する。
テイラーの定理について,例・テイラー展開との関係・証明をわかりやすく説明します。
テイラーの定理の意味
テイラーの定理の意味
テイラーの定理は,関数 を, の近くで多項式に近似するときに使える定理です。具体例で見てみましょう。
,, としてテイラーの定理を適用してみると,
より, となる が と の間に存在することがわかる。
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の近くでは, は非常に に近い値になります。つまり, は の近くで に近似できると言えます。複雑な関数を多項式で近似できるといろいろ嬉しいです!
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近似の誤差が最後の項 です。剰余項と言います。これは の多項式ではないです( は の値に依存する)。
平均値の定理との関係
平均値の定理との関係
テイラーの定理は平均値の定理の一般化です。実際,テイラーの定理で とすると,以下のようになります:
閉区間 で微分可能な関数 について, を満たす が存在する。
赤い式を変形すると になります。これは平均値の定理そのものです。→平均値の定理の意味・証明・応用例題2パターン
テイラーの定理とテイラー展開
テイラーの定理とテイラー展開
テイラーの定理で とすれば,誤差も になって以下の式が成立するはず(期待):
例えば, とすると,
になることが期待できます。 とすれば誤差も になるという期待が正しいかどうか,もう少し考えてみましょう。
剰余項の評価
テイラーの定理:
について,シグマの部分は 次の多項式です。誤差(剰余項)は です。剰余項に現れる の分母は の階乗で,分子は が指数にあるので(そして,指数関数よりも階乗の方が発散が早いので), があまり大きくなければ, で に収束しそうです。
例えば, 階微分が のべき乗で抑えられるとき,つまり 「ある定数 が存在して,すべての と に対して が成立する」 とき, となります。すなわち, となります。これがテイラー展開の原理です。テイラー展開の背後には平均値の定理の一般化であるテイラーの定理があるというわけです。
いつでもテイラー展開の等式が成立するわけではありません。剰余項が に収束することの確認が必要です。以下の例は,いずれも正しい等式です。剰余項が になることを確認してみると良い練習になります。
テイラーの定理の証明
テイラーの定理の証明
式はけっこう複雑ですが,ロルの定理を認めれば,高校範囲でも十分理解できる証明です。
関数 をもとに,新しい関数 を構成します。 にロルの定理を適用すると, に対するテイラーの定理が導出できます。
となるような定数 を取ってくる。
となる の存在を示すのが目標である。
ここで,新たな関数 を以下のように定義する:
すると,
- ( の定め方から分かる)
- (代入すると簡単に分かる)
なのでロルの定理が使える。つまり,ある が存在して となる。
次に, において実際に を計算していく:
一つ目のシグマと二つ目のシグマがほとんど打ち消し合ってくれるので,
よって, から となり目標が証明された。
補足
補足
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「 において 回微分可能」という条件は,もう少し弱められます。具体的には「閉区間 において 回連続微分可能 かつ開区間 において 回微分可能」としても成立します。
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が より小さい側でも同じ定理が成立します。つまり, で 回微分可能な関数 について,同じ式を満たす が存在します。
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この記事では,剰余項が というタイプのテイラーの定理を紹介しました。他にもいろいろな剰余項の表し方があり,それぞれ定理の前提条件も微妙に異なります。 →テイラーの定理(Wikipedia)
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のときのテイラー展開をマクローリン展開と言います。マクローリン展開の具体例はマクローリン展開を参照して下さい。
証明中,二つのシグマがバサッと打ち消し合うのが素晴らしいですね。