平均値の定理の意味・証明・応用例題2パターン

平均値の定理

axba\leqq x\leqq b で微分可能な関数 f(x)f(x) に対して,

f(b)f(a)ba=f(c)\dfrac{f(b)-f(a)}{b-a}=f'(c)

を満たす ccaabb の間に存在する。

平均値の定理についてわかりやすく説明します。

具体例

a=1,b=3,f(x)=x2a=1,b=3,f(x)=x^2 として平均値の定理を使ってみましょう。f(x)=2xf'(x)=2x なので,平均値の定理は

321231=2c\dfrac{3^2-1^2}{3-1}=2c を満たす cc1133 の間に存在する

となります。実際,上の式を変形すると c=2c=2 となり,式を満たす cc1133 の間にありました。

平均値の定理の意味

平均値の定理は一見複雑ですが,「傾き」という図形的な意味を考えれば理解しやすいです。平均値の定理の式 f(b)f(a)ba=f(c)\dfrac{f(b)-f(a)}{b-a}=f'(c) について,

  • 左辺は (a,f(a))(a,f(a))(b,f(b))(b,f(b)) を結ぶ直線の傾き
  • 右辺は x=cx=c における接線の傾き 平均値の定理の意味

つまり「赤い直線紫の直線 が平行」となる cc が存在する,というのが平均値の定理です。

定理自体は比較的理解しやすいのですが,実際に入試問題などに応用するのが難しい定理です。そこで,この記事では平均値の定理の頻出応用例を2パターン解説します。

平均値の定理の応用

1. 不等式の証明

平均値の定理を使って不等式の証明をする問題は頻出です。

f(b)f(a)f(b)-f(a) という形を含む不等式証明では,平均値の定理を疑いましょう。

2001年名古屋大学理系第1問です。露骨に平均値の定理を使う問題です。

例題1

ee を自然対数の底とする。 ep<qe\leqq p <q のとき以下の不等式を証明せよ:

log(logq)log(logp)<qpe\log(\log q)-\log (\log p)<\dfrac{q-p}{e}

解答

f(x)=log(logx)f(x)=\log(\log x) とおくと,証明すべき不等式は,

f(q)f(p)qp<1e\dfrac{f(q)-f(p)}{q-p} <\dfrac{1}{e}

となる。ここで平均値の定理より,

(左辺)=f(c)=f'(c) となる ccppqq の間に存在する。

実際,合成関数の微分公式を用いて f(x)f(x) の導関数を計算すると f(x)=1xlogxf'(x)=\dfrac{1}{x\log x} であるので,証明すべき不等式は,

clogc>ec\log c > e となる。

ここで g(x)=xlogxg(x)=x\log x について考えると,g(x)=1+logxg'(x)=1+\log x より xex\geqq e では g(x)g(x) は単調増加。よって,e<ce <c より g(e)<g(c)g(e) <g(c) ,つまり clogc>ec\log c > e を得る。

2.漸化式と極限

an+1=f(an)a_{n+1}=f(a_n) 型の漸化式で表される数列の極限を求める問題」でも平均値の定理は活躍します。このタイプの問題の基本的な考え方は漸化式で表される数列の極限で詳しく解説しています。

平均値の定理を使うことで所望の不等式:

an+1α<kanα|a_{n+1}-\alpha| <k|a_n-\alpha| を示しにいきます。

2005年東京大学理系第3問です。

問題

f(x)=x2(1+e2(x1))f(x)=\dfrac{x}{2}(1+e^{-2(x-1)}) とする。

(1)x>12x > \dfrac{1}{2} ならば 0f(x)<120\leqq f'(x) <\dfrac{1}{2} を示せ。

(2)x0x_012\dfrac{1}{2} より大きい正の数とし,数列 {xn}\{x_n\}xn+1=f(xn)x_{n+1}=f(x_n) で定める。このとき limnxn=1\displaystyle\lim_{n\to\infty}x_n=1 を証明せよ。

(1)は単なる計算問題です。省略します。

(2)の解答

f(1)=1f(1)=1 に注意する。平均値の定理より,( xn1x_n\neq 1 のもとで)

f(xn)f(1)xn1=f(c)\dfrac{f(x_n)-f(1)}{x_n-1}=f'(c) となる cc11xnx_n の間に存在する。

よって,(1)と合わせると「 xn>12,xn1x_n > \dfrac{1}{2},\:x_n\neq 1 」のもとで

xn+11<12xn1|x_{n+1}-1| <\dfrac{1}{2}|x_n-1|

この不等式が得てしまえばあとは簡単。

  • x0=1x_0=1 のとき,数列 {xn}\{x_n\} の各項は全て 11 なのでOK。

  • x01x_0\neq 1 のとき,数列 {xn}\{x_n\} の各項は「xn>12,xn1x_n > \dfrac{1}{2},\:x_n\neq 1」を満たす(数学的帰納法で簡単に証明できる)ので,上記の不等式を繰り返し適用できる: xn1<12nx01|x_n-1| <\dfrac{1}{2^n}|x_0-1| ここで nn\to\infty とすると,右辺 0\to 0 なので limnxn=1\displaystyle\lim_{n\to\infty}x_n=1 を得る。

平均値の定理の証明

冒頭で紹介した「平均値の定理は傾きに関する定理」が理解できれば直感的には納得できますが,平均値の定理の厳密な証明はけっこう大変です。

具体的には,最大値の原理→ロルの定理→平均値の定理 という順番で証明していきます。詳細は ロルの定理,平均値の定理とその証明)をご覧ください。

補足

  • axba\leqq x\leqq b で微分可能な関数」という条件は,もう少し緩められます。具体的には,区間 [a,b][a,b] で連続かつ (a,b)(a,b) で微分可能な関数ならOKです(端っこは微分不可能でも連続ならOKです)。

  • この記事で紹介したのは「ラグランジュの平均値の定理」です。より一般的な「コーシーの平均値の定理」もあります。

  • 平均値の定理を一般化した「テイラーの定理」はテイラー展開の基礎です。→テイラーの定理の例と証明

  • 平均値の定理を使うと「微分がプラスなら単調増加」という大事な定理を簡単に証明できます。詳細は単調増加・単調減少の意味と覚えておくべき性質の性質1を参照してください。

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