はさみうちの原理の証明
任意の自然数 に対して(または十分大きな に対して) が成立し,
かつ なら
はさみうちの原理の意味・例題・証明をわかりやすく説明します。
はさみうちの原理の意味
はさみうちの原理の意味
- はさみうちの原理は,数列の極限を求めるときに使える定理です。
- 極限を求めたい数列 よりも小さい数列 と大きい数列 の極限が両方とも なら,挟まれた の収束先も になる,という定理です。
を計算せよ。
より, である。
- 小さい数列の極限は
- 大きい数列の極限は
よって,間に挟まれた数列の極限も となる。
- はさみうちの原理のことを英語では Squeeze Theorem なども言います。原理と呼ぶことが多いですが「定理」です。
- 感覚的には当然成り立つであろう定理ですが,以下できちんと証明します(証明には 論法, 論法という大学数学の道具を用いるので大学入試で問われることはありません)。
証明の準備(極限の定義)
証明の準備(極限の定義)
はさみうちの原理を証明する準備として,極限の定義をきちんとします。
とは,
「任意の正の実数 に対して,ある が存在して なら が成立する」
厳密に書くと分かりにくいですが,意味は難しくありません。
「
を大きくすると
はいくらでも
に近づく」
→「
が十分大きいなら
はいくらでも
に近づく」
→「どんなに小さい正の数
に対しても
が十分大きいなら
となる」
→「任意の正の実数
に対して,ある
が存在して
なら
が成立する」
これで極限の意味が厳密に定義されたので,はさみうちの原理が証明できます。
はさみうちの原理の証明
はさみうちの原理の証明
まずは仮定と目標の式をきちんと表現しておきます。
仮定は,
- 任意の に対してある が存在して なら
- 任意の に対してある が存在して なら
目標は,
- 任意の に対してある が存在して なら
仮定の2つ目と3つ目より,
任意の に対して となるように を取れば なら かつ である。
仮定の1つめと合わせると である。
つまり, である。よって,はさみうちの原理が示された。
関数版のはさみうちの原理
関数版のはさみうちの原理
ここまでは数列の極限を考えましたが,関数の極限についてもはさみうちの原理が成立します。
任意の正の実数 に対して(または十分大きな に対して) かつ なら
証明も数列版とほとんど同じです。極限の定義をきちんとしておきましょう。
とは,
「任意の正の実数 に対して,ある が存在して なら が成立する」
仮定より 任意の に対して
-
ある が存在して, なら
-
ある が存在して なら
よって, となるように を取れば なら かつ
よって, である。
つまり, である。
練習問題
練習問題
を計算せよ。
であることとはさみうちの原理から,極限値は になります。これは 減衰曲線 と呼ばれる重要な曲線です。
論法が大学数学最初の関門です。高校生のうちに雰囲気だけでも理解しておくとよいでしょう。→イプシロンデルタ論法とイプシロンエヌ論法