スターリングの公式とその証明
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スターリングの公式(スターリングの近似,Stirling’s approximation)の意味と証明を解説します。
スターリングの公式の意味
スターリングの公式の意味
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スターリングの公式
における は「だいたい同じ」という大雑把な意味で使われています。 はネイピア数です。 -
スターリングの公式を数学的にきちんと書くと, となります。紫の式の両辺の比が で1に収束することを意味します。
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試しに を極限の中身 に代入して計算すると約 になります。 だと約 です。精度良いですね!
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スターリングの公式は階乗 を指数関数 などで近似する公式です。統計力学(物理の一分野)や組み合わせ数学で用いられます。階乗よりも指数関数の方が扱いやすい場合が多いので嬉しいです。
スターリングの公式の別バージョン
スターリングの公式の別バージョン
スターリングの公式には
以外にも様々なバージョンが存在します。例えば, を無視して,より粗い
を使うこともあります。また,それぞれ対数を取って
という式を使うこともあります。また,より精密な評価:
もあります。どれくらい精度の良い近似が必要かによって使い分けます。
スターリングの公式の証明
スターリングの公式の証明
スターリングの公式を証明します。ウォリスの公式を用いた厳密な証明を解説します。
を示すのが目標です。
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Step1: が で定数 に収束することを示す。
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Step2:ウォリスの公式を用いて定数 が であることを示す。
Step1では「単調減少で下に有界な数列は収束する」ことを使います(この定理は,自然対数の底(ネイピア数)の定義:収束することの証明でも登場しました)。
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より は下に有界。
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次に, が単調減少であることを示す。これは, を示せばよい。
これが正であることは微分すれば簡単に示せる(→微分を用いた不等式証明の問題の左側の不等式)。 -
さらに,収束先が でないこと(正であること)を示す。上式と,微分を用いた不等式証明の問題の右側の不等式より,
よって,
より ,つまり
Step2の証明は,見た目は複雑ですが,やっていることはとても単純です。
まず,ウォリスの公式:
を書き下して階乗が出現する形に表す(→補足):
次に,上式をstep1の結果が使える形に変形する:
よって,
となり,
より
式変形がやや複雑なので分かりにくい人は,実際に くらいまで書き下していくと理解しやすいでしょう。
補足:
および
を使います。
もう少し簡単な不等式
もう少し簡単な不等式
粗いスターリングの公式 に関連して,以下の不等式が成立します。上記のスターリングの公式の証明はやや大変でしたが,以下の不等式なら比較的簡単に証明できます。
正の整数 に対して
を評価したい。積なので対数を取って和にして評価する。
のグラフを描いて短冊形の面積を考えると,
左辺と右辺を計算すると,
よって,各辺の指数を取ると
となり目標の不等式を得る。
スターリングの公式を背景とする入試問題があってもよさそうです。
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