スターリングの公式とその証明

更新日時 2022/05/26
スターリングの公式

n!2πn(ne)nn!\fallingdotseq\sqrt{2\pi n}\left(\dfrac{n}{e}\right)^n スターリングの公式

スターリングの公式(スターリングの近似,Stirling’s approximation)の意味と証明を解説します。

目次
  • スターリングの公式の意味

  • スターリングの公式の別バージョン

  • スターリングの公式の証明

  • もう少し簡単な不等式

スターリングの公式の意味

  • スターリングの公式
    n!2πn(ne)nn!\fallingdotseq\sqrt{2\pi n}\left(\dfrac{n}{e}\right)^n
    における \fallingdotseq は「だいたい同じ」という大雑把な意味で使われています。e=2.718e=2.718\cdots はネイピア数です。

  • スターリングの公式を数学的にきちんと書くと, limnn!en2πnnn=1\displaystyle\lim_{n\to\infty}\dfrac{n!e^n}{\sqrt{2\pi n}n^n}=1 となります。紫の式の両辺の比が nn\to\infty で1に収束することを意味します。

  • 試しに n=10n=10 を極限の中身 n!en2πnnn\dfrac{n!e^n}{\sqrt{2\pi n}n^n} に代入して計算すると約 1.0081.008 になります。n=20n=20 だと約 1.0041.004 です。精度良いですね!

  • スターリングの公式は階乗 n!n! を指数関数で近似する公式です。統計力学(物理の一分野)や組み合わせ数学で用いられます。 階乗よりも指数関数の方が扱いやすい場合が多いので嬉しいです。

スターリングの公式の別バージョン

スターリングの公式には

n!2πn(ne)nn!\fallingdotseq\sqrt{2\pi n}\left(\dfrac{n}{e}\right)^n

以外にも様々なバージョンが存在します。例えば,2πn\sqrt{2\pi n} を無視して,より粗い

n!(ne)nn!\fallingdotseq \left(\dfrac{n}{e}\right)^n

を使うこともあります。また,それぞれ対数を取って

logn!nlognn+12log(2πn)\log n!\fallingdotseq n\log n-n+\dfrac{1}{2}\log(2\pi n)

logn!nlognn\log n!\fallingdotseq n\log n-n

という式を使うこともあります。また,より精密な評価:

n!2πn(ne)n(1+112n)n!\fallingdotseq\sqrt{2\pi n}\left(\dfrac{n}{e}\right)^n\left(1+\dfrac{1}{12n}\right)

もあります。どれくらい精度の良い近似が必要かによって使い分けます。

スターリングの公式の証明

スターリングの公式を証明します。ウォリスの公式を用いた厳密な証明を解説します。

limnn!en2πnnn=1\displaystyle\lim_{n\to\infty}\dfrac{n!e^n}{\sqrt{2\pi n}n^n}=1

を示すのが目標です。

方針
  • Step1: an=n!ennnna_n=\dfrac{n!e^n}{n^n\sqrt{n}}nn\to\infty で定数 A>0A > 0 に収束することを示す。

  • Step2:ウォリスの公式を用いて定数 AA2π\sqrt{2\pi} であることを示す。

Step1では「単調減少で下に有界な数列は収束する」ことを使います(この定理は,自然対数の底(ネイピア数)の定義:収束することの証明でも登場しました)。

Step1の証明
  • an>0a_n>0 より ana_n は下に有界。

  • 次に,ana_n が単調減少であることを示せす。これは,loganan+1>0\log\dfrac{a_{n}}{a_{n+1}}>0 を示せばよい。
    loganan+1=logn!en(n+1)n+1n+1nnn(n+1)!en+1=log(n+1)(n+1)e(1+1n)n+12=(n+12)log(1+1n)1\log\dfrac{a_n}{a_{n+1}}\\ =\log\dfrac{n!e^n(n+1)^{n+1}\sqrt{n+1}}{n^n\sqrt{n}(n+1)!e^{n+1}}\\ =\log\dfrac{(n+1)}{(n+1)e}\left(1+\dfrac{1}{n}\right)^{n+\frac{1}{2}}\\ =\left(n+\dfrac{1}{2}\right)\log\left(1+\dfrac{1}{n}\right)-1
    これが正であることは微分すれば簡単に示せる。(→微分を用いた不等式証明の問題の左側の不等式)。

  • さらに,収束先が正であることを示す。上式と,微分を用いた不等式証明の問題の右側の不等式より,
    loganan+1<14n(n+1)=14(1n1n+1)\log\dfrac{a_n}{a_{n+1}}<\dfrac{1}{4n(n+1)}=\dfrac{1}{4}\left(\dfrac{1}{n}-\dfrac{1}{n+1}\right)
    よって,loga1an<k=1n114(1k1k+1)<14\log\dfrac{a_1}{a_n}<\displaystyle\sum_{k=1}^{n-1}\dfrac{1}{4}\left(\dfrac{1}{k}-\dfrac{1}{k+1}\right)<\dfrac{1}{4}
    a1=ea_1=e より 1logan<141-\log a_n<\dfrac{1}{4},つまり an>e34a_n>e^{\frac{3}{4}}

Step2の証明は,見た目は複雑ですが,やっていることはとても単純です。

Step2の証明

まず,ウォリスの公式:

n=1(2n)2(2n1)(2n+1)=π2\displaystyle\prod_{n=1}^{\infty}\dfrac{(2n)^2}{(2n-1)(2n+1)}=\dfrac{\pi}{2}

を書き下して階乗が出現する形に表す(→補足):

limn24n(n!)4((2n)!)2(2n+1)=π2\displaystyle\lim_{n\to\infty}\dfrac{2^{4n}(n!)^4}{((2n)!)^2(2n+1)}=\dfrac{\pi}{2}

次に,上式をstep1の結果が使える形に変形する:

limn24n2n+1(n!ennnn)4{(2n)2n2n(2n)!e2n}2n24n+1=π2\displaystyle\lim_{n\to\infty}\dfrac{2^{4n}}{2n+1}\left(\dfrac{n!e^n}{n^n\sqrt{n}}\right)^4\left\{\dfrac{(2n)^{2n}\sqrt{2n}}{(2n)!e^{2n}}\right\}^2\dfrac{n}{2^{4n+1}}=\dfrac{\pi}{2}

よって,

A4A2limnn2(2n+1)=π2\dfrac{A^4}{A^2}\displaystyle\lim_{n\to\infty}\dfrac{n}{2(2n+1)}=\dfrac{\pi}{2}

となり,14A2=π2\dfrac{1}{4}A^2=\dfrac{\pi}{2}

A>0A>0 より A=2πA=\sqrt{2\pi}

式変形がやや複雑なので分かりにくい人は,実際に n=3n=3 くらいまで書き下していくと理解しやすいでしょう。

補足:

113(2n1)=242n(2n)!=2nn!(2n)!\dfrac{1}{1\cdot 3\cdot\cdots \cdot (2n-1)}\\ =\dfrac{2\cdot 4\cdot \cdots\cdot 2n}{(2n)!}\\ =\dfrac{2^nn!}{(2n)!}

および

113(2n+1)=242n(2n+1)!=2nn!(2n)!(2n+1)\dfrac{1}{1\cdot 3\cdot\cdots \cdot (2n+1)}\\ =\dfrac{2\cdot 4\cdot \cdots\cdot 2n}{(2n+1)!}\\ =\dfrac{2^nn!}{(2n)!(2n+1)}

を使います。

もう少し簡単な不等式

粗いスターリングの公式 n!(ne)nn!\fallingdotseq \left(\dfrac{n}{e}\right)^n に関連して,以下の不等式が成立します。上記のスターリングの公式の証明はやや大変でしたが,以下の不等式なら比較的簡単に証明できます。

定理

e(ne)nn!e(n+1e)n+1e\left(\dfrac{n}{e}\right)^n\leq n!\leq e\left(\dfrac{n+1}{e}\right)^{n+1}

証明

n!n! を評価したい。積なので対数を取って和にして評価する。

log(n!)=k=1nlogk\log(n!)=\displaystyle\sum_{k=1}^n\log k

y=logxy=\log x のグラフを描いて短冊形の面積を考えると,

1nlogxdxlog(n!)1n+1logxdx\displaystyle\int_1^n\log xdx\leq \log(n!)\leq\displaystyle\int_1^{n+1}\log xdx

左辺と右辺を計算すると,

nlognn+1log(n!)(n+1)log(n+1)nn\log n-n+1\leq \log(n!)\leq (n+1)\log(n+1)-n

よって,各辺の指数を取ると

nnenen!(n+1)n+1enn^ne^{-n}e\leq n!\leq (n+1)^{n+1}e^{-n}

となり目標の不等式を得る。

スターリングの公式を背景とする入試問題があってもよさそうです。

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