ウォリスの公式とその3通りの証明

更新日時 2023/02/08
ウォリスの公式

n=1(2n)2(2n1)(2n+1)=π2\displaystyle\prod_{n=1}^{\infty}\dfrac{(2n)^2}{(2n-1)(2n+1)}=\dfrac{\pi}{2}

つまり,

2213×4435×6657×=π2\dfrac{2\cdot 2}{1\cdot 3}\times\dfrac{4\cdot 4}{3\cdot 5}\times\dfrac{6\cdot 6}{5\cdot 7}\times\cdots=\dfrac{\pi}{2}

ウォリスの公式は,美しい無限積の公式です。

目次
  • ウォリスの公式の意味

  • ウォリスの公式の証明

  • ウォリスの公式の別証

  • ウォリスの公式の応用

ウォリスの公式の意味

  • n=1\displaystyle\prod_{n=1}^{\infty} は,n=1n=1 から順々に無限にかけ算していく(無限積)という意味です。

  • ウォリスの公式の左辺 n=1(2n)2(2n1)(2n+1)\displaystyle\prod_{n=1}^{\infty}\dfrac{(2n)^2}{(2n-1)(2n+1)} を書き下してみると, 2213×4435×6657×\dfrac{2\cdot 2}{1\cdot 3}\times\dfrac{4\cdot 4}{3\cdot 5}\times\dfrac{6\cdot 6}{5\cdot 7}\times\cdots となります。この値を計算すると円周率が登場するというのは不思議です。

  • 二重階乗(階乗の1つ飛ばしバージョン を使うと,ウォリスの公式の左辺は limn({2n}!!)2(2n1)!!(2n+1)!!\displaystyle\lim_{n\to\infty}\dfrac{(\{2n\}!!)^2}{(2n-1)!!(2n+1)!!} と書くこともできます。ただし,(2n)!!(2n)!!22 から 2n2n までの偶数の積です。(2n1)!!(2n-1)!!11 から 2n12n-1 までの奇数の積です。この表し方は,後ほど証明で使います。

ウォリスの公式の証明

方針

左辺では1個飛ばしの自然数の積が登場します。そこで,似たような形が出現する sin\sinnn 乗の積分を用います(これを自力で思いつくのはかなり厳しい)。

証明

In=0π2sinnxdxI_n=\displaystyle\int_0^{\frac{\pi}{2}}\sin^nxdx とおく。

00 から π2\dfrac{\pi}{2} では sinx0\sin x \geq 0 より,I2n+2<I2n+1<I2nI_{2n+2} <I_{2n+1} <I_{2n}

また,部分積分を用いることで,I2nI_{2n} たちが以下のように計算できる(ウォリス積分と呼ばれる有名な公式。詳細はsinのn乗,cosのn乗の積分公式を参照):

  • I2n+2=π2(2n+1)!!(2n+2)!!I_{2n+2}=\dfrac{\pi}{2}\cdot\dfrac{(2n+1)!!}{(2n+2)!!}
  • I2n+1=(2n)!!(2n+1)!!I_{2n+1}=\dfrac{(2n)!!}{(2n+1)!!}
  • I2n=π2(2n1)!!(2n)!!I_{2n}=\dfrac{\pi}{2}\cdot\dfrac{(2n-1)!!}{(2n)!!}

これらを赤字の式に代入すると,

π2(2n+1)!!(2n+2)!!<(2n)!!(2n+1)!!<π2(2n1)!!(2n)!!\dfrac{\pi}{2}\cdot\dfrac{(2n+1)!!}{(2n+2)!!} <\dfrac{(2n)!!}{(2n+1)!!} <\dfrac{\pi}{2}\cdot\dfrac{(2n-1)!!}{(2n)!!}

ここで,ウォリスの公式の左辺に出てくる {(2n)!!}2(2n1)!!(2n+1)!!\dfrac{\{(2n)!!\}^2}{(2n-1)!!(2n+1)!!} を登場させるために各辺に (2n)!!(2n1)!!\dfrac{(2n)!!}{(2n-1)!!} をかける

π22n+12n+2<{(2n)!!}2(2n1)!!(2n+1)!! <π2\dfrac{\pi}{2}\cdot\dfrac{2n+1}{2n+2} <\dfrac{\{(2n)!!\}^2}{(2n-1)!!(2n+1)!!} < \dfrac{\pi}{2}

よって,nn \to \infty とするとはさみ打ちの原理よりウォリスの公式を得る。

ウォリスの公式の別証

sin の無限乗積展開を用いた証明

以下の方法は形式的で厳密には複素関数論を必要としますが,面白い方法なので紹介しておきます。

説明

sinx\sin xx=0,±π,±2πx=0,\pm \pi,\pm 2\pi\cdots00 となるので,因数定理をイメージすると, sinx=Ax(1xπ)(1+xπ)(1x2π)(1+x2π) \sin x=Ax \left( 1-\dfrac{x}{\pi} \right) \left( 1+\dfrac{x}{\pi} \right) \left( 1-\dfrac{x}{2\pi} \right) \left( 1+\dfrac{x}{2\pi} \right) \cdots と表される(AA は定数)。

また,limx0sinxx=1\displaystyle\lim_{x\to 0}\dfrac{\sin x}{x}=1 より,A=1A=1 が分かる。

よって,上式に x=π2x=\dfrac{\pi}{2} を代入すると,

1=sinπ2=π2(1122)(1142)(1162)=π2132235425762\begin{aligned} 1&=\sin \dfrac{\pi}{2}\\ &=\dfrac{\pi}{2}\left(1-\dfrac{1}{2^2}\right)\left(1-\dfrac{1}{4^2}\right)\left(1-\dfrac{1}{ 6^2}\right)\cdots\\ &=\dfrac{\pi}{2}\dfrac{1\cdot 3}{2^2}\dfrac{3\cdot 5}{4^2}\dfrac{5\cdot 7}{6^2}\cdots \end{aligned}

となりウォリスの公式を得る。

sin の無限乗積展開はバーゼル問題の証明に用いることもできます。

ガンマ関数を用いた証明

ガンマ関数 を用いて証明をすることもできます。

証明

ガンマ関数について Γ(x)=limn0ntx1(1tn)ndt \Gamma(x) = \lim_{n\to\infty} \int_0^n t^{x-1} \left(1-\dfrac{t}{n}\right)^{n}dt が成り立つ。(→ガンマ関数 性質4の証明を参照)

t=nut = nu と置換すると 0ntx1(1tn)ndt=nx01ux1(1u)ndu \int_0^n t^{x-1} \left(1-\dfrac{t}{n}\right)^{n}dt = n^{x} \int_0^1 u^{x-1} (1-u)^n du となる。

ベータ関数の積分公式 とガンマ関数の性質を用いると

01ux1(1u)ndu=Γ(x)Γ(n+1)Γ(x+n+1)=n!x(x+1)(x+n)\begin{aligned} \int_0^1 u^{x-1} (1-u)^n du &= \dfrac{\Gamma (x) \Gamma (n+1)}{\Gamma (x+n+1)}\\ &= \dfrac{n!}{x (x+1) \cdots (x+n)} \end{aligned} を得る。

さて,今 x=12x = \dfrac{1}{2} とすると Γ(x)=π\Gamma (x) = \sqrt{\pi} であるため π=limnn12n!12322n+12=limnn122n+1n!(2n+1)!!=limn2n12(2n)!!(2n+1)!!\begin{aligned} \sqrt{\pi} &= \lim_{n\to\infty} \dfrac{n^{\frac{1}{2}} n!}{\dfrac{1}{2} \cdot \dfrac{3}{2} \cdots \dfrac{2n+1}{2}}\\ &= \lim_{n \to \infty} \dfrac{n^{\frac{1}{2}} 2^{n+1} n!}{(2n+1)!!}\\ &= \lim_{n \to \infty} \dfrac{2 n^{\frac{1}{2}} (2n)!!}{(2n+1)!!}\\ \end{aligned}

左辺の lim\lim の中を二乗することで (2n12(2n)!!(2n+1)!!)2=4n2n+1k=1n(2k)2(2k1)(2k+1)\begin{aligned} \left( \dfrac{2 n^{\frac{1}{2}} (2n)!!}{(2n+1)!!} \right)^2 &= \dfrac{4n}{2n+1} \prod_{k=1}^n \dfrac{(2k)^2}{(2k-1)(2k+1)} \end{aligned} である。

よって, n=1(2n)2(2n1)(2n+1)=limnk=1n(2k)2(2k1)(2k+1)=limn2n+12nπ2=π2\begin{aligned} \prod_{n=1}^{\infty} \dfrac{(2n)^2}{(2n-1)(2n+1)} &= \lim_{n \to \infty} \prod_{k=1}^n \dfrac{(2k)^2}{(2k-1)(2k+1)}\\ &= \lim_{n \to \infty} \dfrac{2n+1}{2n} \dfrac{\pi}{2}\\ &= \dfrac{\pi}{2} \end{aligned} を得る。

ウォリスの公式の応用

  • ウォリスの公式を用いて,似たような無限積の公式をいくつか導けます。高校数学で無限積を扱う問題はあまり出題されませんが,もし出題されたら(されていたら)その多くはウォリスの公式に関係したものでしょう。
  • ウォリスの公式は,スターリングの公式:n!2πn(ne)nn!\fallingdotseq\sqrt{2\pi n}\left(\dfrac{n}{e}\right)^n の証明にも用いられます。 →スターリングの公式の証明

「Wallis の公式」声に出して言いたい数学用語です。

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