ベータ関数の積分公式

ベータ関数の積分公式

m,nm, n00 以上の整数のとき,以下のような積分公式が成立する:

(i) 第一種オイラー積分 αβ(xα)m(βx)ndx=m!n!(m+n+1)!(βα)m+n+1 \int_{\alpha}^{\beta} (x-\alpha)^m(\beta-x)^ndx=\dfrac{m!n!}{(m+n+1)!} (\beta-\alpha)^{m+n+1} (ii) 特に,α=0,β=1\alpha=0, \beta=1 とすると, 01xm(1x)ndx=m!n!(m+n+1)! \int_0^1 x^m(1-x)^ndx=\dfrac{m!n!}{(m+n+1)!}

ベータ関数の積分公式の応用

  • 例えば,(i) で m=n=1m=n=1 とすると, αβ(xα)(βx)dx=(βα)36\displaystyle\int_{\alpha}^{\beta}(x-\alpha)(\beta-x)dx=\dfrac{(\beta-\alpha)^3}{6} となり,放物線と直線で囲まれた部分の面積を求める有名公式になります。

  • また,三次関数と直線で囲まれた部分の面積 3次関数と直線で囲まれた面積 を求める際に出てくる積分 aαβ(xα)(βx)2dxa\displaystyle\int_{\alpha}^{\beta}(x-\alpha)(\beta-x)^2dx も,(i) で m=1,n=2m=1, n=2 とおくことで,一瞬で計算できます: aαβ(xα)(βx)2dx=a12(βα)4a\displaystyle\int_{\alpha}^{\beta}(x-\alpha)(\beta-x)^2dx=\dfrac{a}{12}(\beta-\alpha)^4

  • 傘型分割を使う問題でも大活躍します。→傘型分割(傘型積分)と斜回転体の体積

ベータ関数の積分公式の証明

この公式を証明せよという問題が某予備校の全国模試や大学入試問題として出題されたこともあります。証明方法も理解しておきましょう。

方針

まず,公式 (ii)

01xm(1x)ndx=m!n!(m+n+1)! \int_0^1 x^m(1-x)^ndx=\dfrac{m!n!}{(m+n+1)!}

を証明します。関数の積の積分なので部分積分を用います。(i)は,(ii)をうまく変数変換すると導けます。

証明

I(m,n)=01xm(1x)ndx I(m, n)= \int_0^1 x^m(1-x)^ndx とおく。

部分積分により,

I(m,n)=[xm+1m+1(1x)n]01+01xm+1m+1n(1x)n1dx=nm+1I(m+1,n1)=nm+1n1m+2I(m+2,n2)==m!n!(m+n)!I(m+n,0)=m!n!(m+n)!01xm+ndx=m!n!(m+n+1)!\begin{aligned} &I(m, n)\\ &=\left[\dfrac{x^{m+1}}{m+1} (1-x)^n\right]^1_0 + \int_{0}^{1}\dfrac{x^{m+1}}{m+1}n(1-x)^{n-1}dx\\ &=\dfrac{n}{m+1}I(m+1, n-1)\\ &=\dfrac{n}{m+1}\dfrac{n-1}{m+2}I(m+2, n-2)\\ &=\cdots \\ &=\dfrac{m!n!}{(m+n)!}I(m+n, 0)\\ &=\dfrac{m!n!}{(m+n)!}\displaystyle\int_{0}^{1}x^{m+n}dx\\ &=\dfrac{m!n!}{(m+n+1)!} \end{aligned}

ベータ関数の積分の証明

変形のイメージを図に示す。

これで公式 (ii) が証明できたので,次は(i)を示す。

公式(ii)において積分区間を α\alpha から β\beta にするために,y=(βα)x+αy=(\beta-\alpha)x+\alpha と置換すると,

xm(1x)n=(yα)m(βy)n(βα)m+ndydx=βα x^m(1-x)^n=\dfrac{(y-\alpha)^m(\beta-y)^n}{(\beta-\alpha)^{m+n}}\\ \dfrac{dy}{dx}=\beta-\alpha より,

αβ(yα)m(βy)n(βα)(m+n+1)dy=m!n!(m+n+1)!\begin{aligned} &\int_{\alpha}^{\beta} (y-\alpha)^m(\beta-y)^n(\beta-\alpha)^{-(m+n+1)}dy\\ &=\dfrac{m!n!}{(m+n+1)!} \end{aligned} となる。

両辺に (βα)m+n+1(\beta-\alpha)^{m+n+1} をかけると公式(i)になる。

ベータ関数とその性質

(ii) 01xm(1x)ndx=m!n!(m+n+1)!\displaystyle\int_0^1 x^m(1-x)^ndx=\dfrac{m!n!}{(m+n+1)!} の左辺において,m,nm, n が整数でない場合の積分も考えてみましょう。

実は,そのような定積分の値はベータ関数と呼ばれます。つまり,ベータ関数 B(p,q)\mathrm{B} (p,q) は以下の式で定義されます。

ベータ関数の定義

B(p,q)=01xp1(1x)q1dx \mathrm{B} (p, q) = \int_0^1x^{p-1} (1-x)^{q-1}dx

証明は 重積分の変数変換とヤコビアン の例題4をご覧ください。

ガンマ関数との関係

ベータ関数は階乗の一般化であるガンマ関数を用いて以下のように表されます(→ガンマ関数(階乗の一般化)の定義と性質):

ベータ関数とガンマ関数の関係

B(p,q)=Γ(p)Γ(q)Γ(p+q) \mathrm{B} (p,q)=\dfrac{\Gamma(p)\Gamma(q)}{\Gamma(p+q)}

ガンマ関数は自然数 mm に対して Γ(m)=(m1)!\Gamma(m)=(m-1)! が成立するので,上記の公式に p=m+1,q=n+1p=m+1, q=n+1 を代入すると,公式 (ii) になります。つまり,この記事で紹介した公式は, ベータ関数とガンマ関数の関係の特殊な場合と言えます。

他の公式

ベータ関数の公式
  1. B(p,q)=B(q,p)\mathrm{B} (p,q) = \mathrm{B} (q,p)
  2. pB(p,q+1)=qB(p+1,q)p \mathrm{B} (p,q+1) = q \mathrm{B} (p+1,q)
  3. B(p,q)=B(p+1,q)+B(p,q+1)\mathrm{B} (p,q) = \mathrm{B} (p+1,q) + \mathrm{B} (p,q+1)
証明
  1. 定義式の積分について t=1st = 1-s と置換すると計算できる。

  2. 部分積分を用いる: pB(p,q+1)=01pxp1(1x)qdx=[xp(1x)q]01+01qxp(1x)q1dx=qB(p+1,q)\begin{aligned} &p \mathrm{B} (p,q+1)\\ &= \int_0^1 px^{p-1} (1-x)^{q}dx\\ &= \Big[ x^p (1-x)^{q} \Big]_0^1 + \int_0^1 qx^p (1-x)^{q-1} dx \\ &= q\mathrm{B} (p+1,q) \end{aligned}

  3. 右辺から計算する: B(p+1,q)+B(p,q+1)=01{xp(1x)q1+xp1(1x)q}dx=01{x+(1x)}xp1(1x)q1dx=01xp1(1x)q1dx=B(p,q)\begin{aligned} &\mathrm{B} (p+1,q) + \mathrm{B} (p,q+1)\\ &= \int_0^1 \{ x^p (1-x)^{q-1} + x^{p-1} (1-x)^q \} dx\\ &= \int_0^1 \{ x + (1-x) \} x^{p-1} (1-x)^{q-1} dx\\ &= \int_0^1 x^{p-1} (1-x)^{q-1} dx\\ &= \mathrm{B} (p,q) \end{aligned}

三角関数での表示

t=sin2θt = \sin^2 \theta とすると 1t=cos2θ1-t = \cos^2 \thetadt=2sinθcosθdt = 2 \sin \theta \cos \theta となるため B(p,q)=20π2sin2p1θcos2q1θdθ \mathrm{B} (p,q) = 2\int_0^{\frac{\pi}{2}} \sin^{2p-1} \theta \cos^{2q-1} \theta d\theta と変形できます。

ベータ関数を覚えておくと,入試の時も積分計算が早くなります。

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