ガンマ関数(階乗の一般化)の定義と性質

更新日時 2022/01/23

ガンマ関数と呼ばれる有名な関数について,定義と性質を整理しました。

「階乗 n!n! の整数以外への拡張」とみなせるおもしろい関数です。

目次
  • ガンマ関数の定義

  • 階乗の一般化であること

  • ガンマ関数の定義(完全版)

  • 1/2でのガンマ関数の値

  • ガンマ関数の無限積表示

  • 極限による定義から性質の証明

  • 関連する話題

ガンマ関数の定義

ガンマ関数の定義(正の実数の場合)

正の実数 xx に対して,

Γ(x)=0tx1etdt\Gamma(x)=\displaystyle\int_0^{\infty}t^{x-1}e^{-t}dt

を返す関数 Γ(x)\Gamma(x) をガンマ関数と呼ぶ。

  • 積分区間の上端が ++\infty であり,高校数学では扱いません。広義積分と呼ばれます。→広義積分の意味といろいろな例
  • 広義積分と言うと難しそうですが,要は定積分の極限 lima0,babtx1etdt\displaystyle\lim_{a\to 0,b\to\infty}\int_a^b t^{x-1}e^{-t}dt のことです。
  • この極限は収束することが知られています。
  • ガンマ関数のグラフは図のようになります。xx の増加とともに Γ(x)\Gamma(x) の値は爆発的に増えていきます。 ガンマ関数

階乗の一般化であること

ガンマ関数の定義は一見複雑そうですが,実は階乗の一般化になっています。

ガンマ関数の性質1

任意の正の整数 nn に対して,

Γ(n+1)=n!\Gamma(n+1)=n!

Γ(n)=n!\Gamma(n)=n! ではなく 11 ズレることに注意して下さい。

この性質は,部分積分を使って簡単に証明できます。

証明

Γ(1)=0etdt=[et]0=1\Gamma(1)=\displaystyle\int_0^{\infty}e^{-t}dt=[-e^{-t}]_0^{\infty}=1

また,任意の正の整数 nn に対して,

Γ(n)=0tn1etdt=[tn1et]00{(n1)tn2et}dt=0+(n1)0tn2etdt=(n1)Γ(n1)\Gamma(n)=\displaystyle\int_0^{\infty}t^{n-1}e^{-t}dt\\ =\displaystyle[-t^{n-1}e^{-t}]_0^{\infty}-\int_0^{\infty}\{-(n-1)t^{n-2}e^{-t}\}dt\\ =\displaystyle 0+(n-1)\int_0^{\infty}t^{n-2}e^{-t}dt\\ =(n-1)\Gamma(n-1)

以上より Γ(n+1)=n!Γ(1)=n!\Gamma(n+1)=n!\Gamma(1)=n! となる。

高校数学ではとりあえず便利だから 0!=10!=1,と定義されますが,Γ(1)=1\Gamma(1)=1 となることからも 0!=10!=1 とするのが自然ですね。→0の階乗を1と定義する理由

ガンマ関数の定義(完全版)

性質2の証明で Γ(n)=(n1)Γ(n1)\Gamma(n)=(n-1)\Gamma(n-1) という式が出てきましたが,この導出に nn が整数であることは使っていないので,以下の性質2が成立します。

ガンマ関数の性質2

任意の正の実数 xx に対して,

Γ(x+1)=xΓ(x)\Gamma(x+1)=x\Gamma(x)

性質2をもとに,00 以下の整数」を除いた複素数全体でガンマ関数が定義されます。

ガンマ関数の定義

x∉{0,1,2,}x\not\in\{0,-1,-2,\cdots\} なる複素数 xx に対して,以下のように定まる Γ(x)\Gamma(x) をガンマ関数と呼ぶ。

  • xx の実部が正なら
    Γ(x)=0tx1etdt\Gamma(x)=\displaystyle\int_0^{\infty}t^{x-1}e^{-t}dt
    とする。
  • xx の実部が 00 以下なら,すべての aa
    Γ(a)=Γ(a+1)a\Gamma(a)=\dfrac{\Gamma(a+1)}{a} が成り立つように Γ(x)\Gamma(x) を定める。

例えば,Γ(2.5)\Gamma(-2.5)Γ(0.5)\Gamma(0.5) の値をもとに Γ(0.5)(2.5)(1.5)(0.5)\dfrac{\Gamma(0.5)}{(-2.5)(-1.5)(-0.5)} と定まります。

1/2でのガンマ関数の値

ガンマ関数の性質3

Γ(12)=π\Gamma\left(\dfrac{1}{2}\right)=\sqrt{\pi}

これはガウス積分を使うことで簡単に導出できます。→ガウス積分の公式の2通りの証明

証明

Γ(12)=0t12etdt\Gamma\left(\dfrac{1}{2}\right)=\displaystyle\int_0^{\infty}t^{-\frac{1}{2}}e^{-t}dt

ここで t=u2t=u^2 と置換すると,上式は

0u1eu22udu=20eu2du=π\displaystyle\int_0^{\infty}u^{-1}e^{-u^2}2udu\\ =2\displaystyle\int_0^{\infty}e^{-u^2}du\\ =\sqrt{\pi}

性質2:Γ(x+1)=xΓ(x)\Gamma(x+1)=x\Gamma(x)
性質3:Γ(12)=π\Gamma\left(\dfrac{1}{2}\right)=\sqrt{\pi}

を組み合わせると,Γ(n+12)\Gamma\left(n+\dfrac{1}{2}\right) の値を求めることができます。

例えば,0.5!0.5! に相当する値 Γ(32)\Gamma\left(\dfrac{3}{2}\right)

Γ(32)=12Γ(12)=π2\Gamma\left(\dfrac{3}{2}\right)=\dfrac{1}{2}\Gamma\left(\dfrac{1}{2}\right)=\dfrac{\sqrt{\pi}}{2} と分かります。

ガンマ関数の無限積表示

ガンマ関数の性質4

Γ(x)=limnnxn!x(x+1)(x+2)(x+n)\Gamma(x)=\displaystyle\lim_{n\to\infty}\dfrac{n^xn!}{x(x+1)(x+2)\cdots(x+n)}

xx が正の実数の場合について導出します。

導出

Γ(x)=0tx1etdt=limn0ntx1etdt=limn0ntx1(1tn)ndt\Gamma(x)\\ =\displaystyle\int_0^{\infty}t^{x-1}e^{-t}dt\\ =\displaystyle\lim_{n\to\infty}\int_0^nt^{x-1}e^{-t}dt\\ =\displaystyle\lim_{n\to\infty}\int_0^nt^{x-1}\left(1-\dfrac{t}{n}\right)^{n}dt

(→2つめの等号については後ほど補足)

極限の中身を ana_n とく。tn=u\dfrac{t}{n}=u と置換すると,

an=nx01ux1(1u)ndua_n=n^{x}\displaystyle\int_0^1u^{x-1}(1-u)^ndu

部分積分を n+1n+1 回すると,(1u)n(1-u)^n の微分が消えてくれて,結局

an=nxn!x(x+1)(x+2)(x+n)a_n=n^x\dfrac{n!}{x(x+1)(x+2)\cdots(x+n)}

となる。

補足:2つめの等号について,ネイピア数の定義より正しそうですが,きちんとした証明はできておりません。はさみうちの原理を使えばできるようです,ご存じの方は教えて下さいm(_ _)m

なお,性質4の右辺の極限は xx が負でも収束します。より具体的には「xx00 以下の整数ではない複素数」なら収束します。これをガンマ関数の定義とみなすこともできます。

ガンマ関数の定義(極限によるもの)

x∉{0,1,2,}x\not\in\{0,-1,-2,\cdots\} なる複素数 xx に対して,

Γ(x)=limnnxn!x(x+1)(x+2)(x+n)\Gamma(x)=\displaystyle\lim_{n\to\infty}\dfrac{n^xn!}{x(x+1)(x+2)\cdots(x+n)}

を返す関数 Γ(x)\Gamma(x) をガンマ関数と呼ぶ。

広義積分による定義と極限による定義は同値です。

極限による定義から性質の証明

ガンマ関数の極限による定義:

Γ(x)=limnnxn!x(x+1)(x+2)(x+n)\Gamma(x)=\displaystyle\lim_{n\to\infty}\dfrac{n^xn!}{x(x+1)(x+2)\cdots(x+n)}

から,
性質1:Γ(n+1)=n!\Gamma(n+1)=n!
性質3:Γ(12)=π\Gamma\left(\dfrac{1}{2}\right)=\sqrt{\pi}
を導出してみます。どちらもおもしろいです!

性質1の導出

例として,n=4n=4 の場合について確認する。一般の場合も同様。

Γ(4)=limnn4n!4×5××(n+4)=limnn4×3!(n+1)(n+2)(n+3)(n+4)=3!\Gamma(4)=\displaystyle\lim_{n\to\infty}\dfrac{n^4n!}{4\times 5\times \cdots\times (n+4)}\\ =\displaystyle\lim_{n\to\infty}\dfrac{n^4\times 3!}{(n+1)(n+2)(n+3)(n+4)}\\ =3!

性質3の導出

Γ(12)=limnnn!12×32×52××2n+12=limn2n(2n)!!(2n+1)!!\Gamma\left(\dfrac{1}{2}\right)=\displaystyle\lim_{n\to\infty}\dfrac{\sqrt{n}n!}{\frac{1}{2}\times\frac{3}{2}\times\frac{5}{2}\times\cdots\times\frac{2n+1}{2}}\\ =\displaystyle\lim_{n\to\infty}\dfrac{2\sqrt{n}(2n)!!}{(2n+1)!!}

よって,

Γ(12)2=limn4n{(2n)!!}2(2n1)!!(2n+1)!!(2n+1)\Gamma\left(\dfrac{1}{2}\right)^2=\displaystyle\lim_{n\to\infty}\dfrac{4n\{(2n)!!\}^2}{(2n-1)!!(2n+1)!!(2n+1)}

右辺は,ウォリスの公式より π\pi に収束する。

参考:ウォリスの公式とその2通りの証明

関連する話題

  • 大学入試にも役立つ積分公式としてベータ関数の積分公式がありますが,ベータ関数とガンマ関数には深い関係があります。

  • 階乗を近似する公式としてスターリングの公式がありますが,スターリングの公式は正の整数以外でも使えます。

高校時代,アルファベットの TT (ティー)とギリシャ文字の Γ\Gamma (ガンマ)を読み間違えて苦労したことがあります。