偏微分の順序交換の十分条件とその証明
更新
実用上多くの場合,偏微分の順序交換が可能。
つまり,
偏微分の順番を交換できるための十分条件,交換不可能な例などを整理しました。
記号の意味,具体例
記号の意味,具体例
順序交換可能であるための有名な十分条件
順序交換可能であるための有名な十分条件
偏微分の順序交換が可能であるための十分条件を三つ紹介します。定理の強さ(仮定のゆるさ)は定理3>定理2>定理1です。
二変数関数 が 級(全ての二階の偏導関数が存在して連続)なら
三階以上についても同様です。例えば 級なら などが成立します。
二変数関数 について, と が存在していずれも連続なら である。
や の存在は仮定しません。実用上は多くの場合定理2で事足ります。
二変数関数 について, が存在して が連続なら が存在して である。
と のうち 片方が存在して連続ならOKという定理2よりゆるい条件です。
なお,定理1〜3において「二変数関数 について」の部分を「多変数関数 について」と置き換えても成立します。
定理2の証明
定理2の証明
偏微分の定義&平均値の定理を用いて定理2を証明します。
という量を二通りの方法で変形していく。
1.まず, とおくと,
であるので平均値の定理より
となる 以上 未満の が存在する。
つまり,
もう一度(今度は について)平均値の定理を使うと,
となる より大きく 未満の の存在が分かる。
2.今度は先に について平均値の定理を使い,後から について平均値の定理を使うことで,
となる より大きく 未満の の存在が分かる。
3.以上より,
ここで, の極限を取ると と が連続であることから が分かる。
順序交換できない例
順序交換できない例
偏微分の順序交換ができない有名な例です(この例は解析概論から)。
の領域では普通に微分でき, が成立しますが,原点でめんどうなことが起こります。計算すると となります(詳細略)。
解析学の記事は細かいミスをしないように注意するのがなかなか大変です。