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ビネ・コーシーの定理とその証明

更新日時 2021/03/07
ビネ・コーシーの定理

AAm×nm\times n 行列,BBn×mn\times m 行列とする。

mnm\leq n なら,detAB=SdetA[S]detB[S]\det AB=\displaystyle\sum_{S}\det A[S]\det B[S]

AABB は正方行列とは限りませんが,ABABm×mm\times m の正方行列なので行列式が定義できます。行列積 ABAB の行列式を AA の(部分行列の)行列式と BB の(部分行列の)行列式で表す美しい公式です。

ビネ・コーシーの公式,コーシー・ビネの公式などとも呼ばれます。

目次
  • 主張の補足と具体例

  • 考察

  • 定理の証明

主張の補足と具体例

Σ\Sigma の部分について,SS{1,,n}\{1,\cdots, n\} の部分集合で要素数が mm のもの全体を動きます。例えば m=2,n=3m=2,\:n=3 の場合,SS{1,2}\{1,2\}{1,3}\{1,3\}{2,3}\{2,3\} を動きます。

A[S]A[S]AA から SS に対応する列を取り出した行列です。 B[S]B[S]BB から SS に対応する行を取り出した行列です。以下の例を見れば分かりやすいでしょう。

m=2,n=3 の場合の例

(a11a12a13a21a22a33)(b11b12b21b22b31b32)\begin{pmatrix}a_{11}&a_{12}&a_{13}\\a_{21}&a_{22}&a_{33}\end{pmatrix}\begin{pmatrix}b_{11}&b_{12}\\b_{21}&b_{22}\\b_{31}&b_{32}\end{pmatrix} の行列式は,

det(a11a12a21a22)det(b11b12b21b22)\det\begin{pmatrix}a_{11}&a_{12}\\a_{21}&a_{22}\end{pmatrix}\det\begin{pmatrix}b_{11}&b_{12}\\b_{21}&b_{22}\end{pmatrix}

+det(a11a13a21a23)det(b11b12b31b32)+\det\begin{pmatrix}a_{11}&a_{13}\\a_{21}&a_{23}\end{pmatrix}\det\begin{pmatrix}b_{11}&b_{12}\\b _{31}&b_{32}\end{pmatrix}

+det(a12a13a22a23)det(b21b22b31b32)+\det\begin{pmatrix}a_{12}&a_{13}\\a_{22}&a_{23}\end{pmatrix}\det\begin{pmatrix}b_{21}&b_{22}\\b_{31}&b_{32}\end{pmatrix}

考察

  • m=nm=n の場合,detAB=detAdetB\det AB=\det A\det B という重要な公式と一致します。

  • m>nm > n の場合,ABAB のランクは mm 未満なので行列式は 00 です。

  • m=2m=2 の場合からコーシー・シュワルツの不等式を証明することができます。 実際,A=(a1a2a3b1b2b3)A=\begin{pmatrix}a_{1}&a_{2}&a_{3}\\b_{1}&b_{2}&b_{3}\end{pmatrix}B=(a1b1a2b2a3b3)B=\begin{pmatrix}a_{1}&b_{1}\\a_{2}&b_{2}\\a_{3}&b_{3}\end{pmatrix} とおくと定理の左辺は (a12+a22+a32)(b12+b22+b32)(a1b1+a2b2+a3b3)2(a_1^2+a_2^2+a_3^2)(b_1^2+b_2^2+b_3^2)-(a_1b_1+a_2b_2+a_3b_3)^2 となり,定理の右辺は (a1b2a2b1)2+(a1b3a3b1)2+(a2b3a3b2)20(a_1b_2-a_2b_1)^2+(a_1b_3-a_3b_1)^2+(a_2b_3-a_3b_2)^2\geq 0 となります。ラグランジュの恒等式とその仲間もどうぞ。

定理の証明

ブロック行列の行列式の公式を用いて証明します。けっこう難しいです。

証明

T=(IBA0)T=\begin{pmatrix}I&B\\A&0\end{pmatrix} という行列を考える。ブロック行列の行列式の公式より

detT=detIdet(AB)=(1)mdetAB\det T=\det I\det (-AB)=(-1)^m\det AB

一方,detT=σi=1m+ntiσ(i)\det T=\displaystyle\sum_{\sigma}\prod_{i=1}^{m+n} t_{i\sigma(i)} という式から考えてみる。

ビネコーシーの定理の証明

00 を選ばないために)AA から mm 個,II の対角成分から nmn-m 個,BB から mm 個選んだ項のみが残る。そのような項は「 AABBm×mm\times m の部分行列(ただし AA の列のインデックスと BB の行のインデックスは一致するようなもの)の行列式の展開項の組」と1対1に対応する。

ただし,符号については (1)m(-1)^m 倍ずれる(→補足)。よって,

detT=(1)mSdetA[S]detB[S]\det T=(-1)^m\displaystyle\sum_{S}\det A[S]\det B[S]

となる。以上2式より定理は証明された。

補足

ビネコーシーの定理の証明2

σ\sigma を整える(互換を繰り返して恒等置換にする)

AA の部分を整える +B+B の部分を整える(さきほどの図の青◯に対応する置換→この図の◯に対応する置換)
++i=1,,mi=1,\cdots,m に対して)n+in+iSSii 番目を交換(合計 mm 回交換)

証明を分かりやすく伝えるのが非常に難しい定理だと感じました。

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