逆行列の定義・逆行列を求める2通りの方法と例題

更新日時 2021/12/09

正方行列の逆行列を求める方法と,具体的な計算例を解説します。

目次
  • 逆行列の定義

  • 2×2行列の逆行列の公式

  • 逆行列の求め方1:掃き出し法による計算

  • 逆行列の求め方2:余因子を用いて計算

逆行列の定義

逆行列の定義

正方行列 AA に対して,

AA1=A1A=I AA^{-1} = A^{-1}A = I

が成立するような正方行列 A1A^{-1} が存在するとき,A1A^{-1}AA逆行列と定義する。ただし,IIAA と同じサイズの単位行列。

逆行列が存在する性質の良い行列を,正則行列と呼びます。

A=(2003)A=\begin{pmatrix}2&0\\0&3\end{pmatrix} に対して,A1=(120013)A^{-1}=\begin{pmatrix}\frac{1}{2}&0\\0&\frac{1}{3}\end{pmatrix} とすると AA1=A1A=IAA^{-1}=A^{-1}A=I となるので,これが逆行列。

つまり,AA は正則行列です。一方,全ての正方行列に対し,必ず逆行列が存在するとは限りません。例えば O=(0000)O=\begin{pmatrix}0&0\\0&0\end{pmatrix} については,何をかけても OO のままなので,逆行列は存在しません。つまり,OO は正則行列ではありません。

以下では,いろいろな逆行列の求め方を解説します。

2×2行列の逆行列の公式

2×2行列の逆行列

A=(abcd)A=\begin{pmatrix}a&b\\c&d\end{pmatrix} の逆行列は,A1=1adbc(dbca)A^{-1}=\dfrac{1}{ad-bc}\begin{pmatrix}d&-b\\-c&a\end{pmatrix}

2×2行列の逆行列の公式

2×2の場合は覚えれば大丈夫です。高校数学の旧課程では重要な公式でした。

証明

実際に積を計算してみると,

(abcd)(dbca)=(adbc00adbc)\begin{pmatrix}a&b\\c&d\end{pmatrix}\begin{pmatrix}d&-b\\-c&a\end{pmatrix}=\begin{pmatrix}ad-bc&0\\0&ad-bc\end{pmatrix} (dbcd)(abcd)=(adbc00adbc)\begin{pmatrix}d&-b\\-c&d\end{pmatrix}\begin{pmatrix}a&b\\c&d\end{pmatrix}=\begin{pmatrix}ad-bc&0\\0&ad-bc\end{pmatrix}

となり,AA1=A1A=IAA^{-1}=A^{-1}A=I が成立している。

ちなみに,adbc=0ad-bc = 0 のときは AA には逆行列が存在しません。

2×2行列の逆行列の公式を用いた例題

A=(1234) A = \begin{pmatrix}1&2\\3&4\end{pmatrix}

の逆行列を求めよ。

解答

公式より, A1=11423(4231)=(213212) \begin{aligned} A^{-1} &= \dfrac{1}{1 \cdot 4 - 2\cdot 3}\begin{pmatrix}4&-2\\-3&1\end{pmatrix}\\ &= \begin{pmatrix}-2&1\\\dfrac{3}{2}&-\dfrac{1}{2}\end{pmatrix} \end{aligned}

逆行列の求め方1:掃き出し法による計算

以下,一般の n×nn\times n の正方行列の逆行列を求める二通りの方法を解説します(具体例は3×3の場合のみ)。

単位行列を II とします。

横長の行列 (AI)(A\:\:I) に行基本変形を繰り返し行って (IB)(I\:\:B) になったら,BBAA の逆行列である。

行基本変形とは以下の三つの操作です。

  • 操作1:ある行を定数倍する
  • 操作2:二つの行を交換する
  • 操作3:ある行の定数倍を別の行に加える

掃き出し法を実際にやってみます!

例題

A=(111201021)A=\begin{pmatrix}1&1&-1\\-2&0&1\\0&2&1\end{pmatrix} の逆行列を求めよ。

(AI)=(111100201010021001)(A\:I)=\begin{pmatrix}1&1&-1&1&0&0\\-2&0&1&0&1&0\\0&2&1&0&0&1\end{pmatrix}

行基本変形を適用して左半分を II にするのが目標。まず一列目を見て,1行目の2倍を2行目に加える:

(111100021210021001)\begin{pmatrix}1&1&-1&1&0&0\\0&2&-1&2&1&0\\0&2&1&0&0&1\end{pmatrix}

次に,二列目(の第2成分以外)に 00 を並べるように操作3を行う:

(10120120021210002211)\begin{pmatrix}1&0&-\frac{1}{2}&0&-\frac{1}{2}&0\\0&2&-1&2&1&0\\0&0&2&-2&-1&1\end{pmatrix}

同様に,三列目(の第3成分以外)に 00 を並べるように操作3を行う:

(10012341402011212002211)\begin{pmatrix}1&0&0&-\frac{1}{2}&-\frac{3}{4}&\frac{1}{4}\\0&2&0&1&\frac{1}{2}&\frac{1}{2}\\0&0&2&-2&-1&1\end{pmatrix}

最後に操作1を二行目と三行目に適用して左側を単位行列にする:

(10012341401012141400111212)\begin{pmatrix}1&0&0&-\frac{1}{2}&-\frac{3}{4}&\frac{1}{4}\\0&1&0&\frac{1}{2}&\frac{1}{4}&\frac{1}{4}\\0&0&1&-1&-\frac{1}{2}&\frac{1}{2}\end{pmatrix}

この右半分が A1A^{-1} である。

逆行列の求め方2:余因子を用いて計算

余因子を用いる方法では(3×3の)行列式についての知識を前提とします。

AA の逆行列の ijij 成分は ΔjidetA\dfrac{\Delta_{ji}}{\det A}

ただし,detA\det AAA の行列式,

Δij\Delta_{ij}AAii 行目と jj 列目を除いた行列の行列式を (1)i+j(-1)^{i+j}したもの(余因子)

余因子の定義がやや厄介です。3×3の場合で計算してみます。

例題(再掲)

A=(111201021)A=\begin{pmatrix}1&1&-1\\-2&0&1\\0&2&1\end{pmatrix} の逆行列を求めよ。

解答

まず AA の行列式を計算する。

detA=(1)(2)211211(2)=4\det A=(-1)(-2)\cdot 2-1\cdot 1\cdot 2-1\cdot 1\cdot (-2)=4

余因子は

Δ11=(1)2det(0121)=2\Delta_{11}=(-1)^2\det\begin{pmatrix}0&1\\2&1\end{pmatrix}=-2

Δ21=(1)3det(1121)=3\Delta_{21}=(-1)^3\det\begin{pmatrix}1&-1\\2&1\end{pmatrix}=-3

Δ31=(1)4det(1101)=1\Delta_{31}=(-1)^4\det\begin{pmatrix}1&-1\\0&1\end{pmatrix}=1

残り6個も同様に計算できて,逆行列は

A1=14(231211422)A^{-1}=\dfrac{1}{4}\begin{pmatrix}-2&-3&1\\2&1&1\\-4&-2&2\end{pmatrix}

補足
  • どちらの方法にせよ計算ミスしやすいので,必ず検算しましょう(AAA1A^{-1} の積が単位行列になっていることを確認!)
  • 4×4以上だと余因子による方法はかなり厳しいです。掃き出し法をマスターしてください。

なお,逆行列の求め方の正しさの証明は線形代数の教科書を参照して下さい。

私はサイズ3なら余因子,サイズ4以上なら掃き出し法を使います。