コーシーシュワルツの不等式とそのエレガントな証明

更新日時 2022/04/08
コーシーシュワルツの不等式

任意の実数 ai,bia_i , b_i に対して, (a12+a22)(b12+b22)(a1b1+a2b2)2(a12+a22+a32)(b12+b22+b32)(a1b1+a2b2+a3b3)2 (a_1^2+a_2^2)(b_1^2+b_2^2) \geqq (a_1b_1+a_2b_2)^2\\ (a_1^2+a_2^2+a_3^2)(b_1^2+b_2^2+b_3^2) \geqq (a_1b_1+a_2b_2+a_3b_3)^2 という不等式が成立する。 より一般に,任意の正の整数 nn に対して, (i=1nai2)(i=1nbi2)(i=1naibi)2 \left( \sum_{i=1}^n a_{i}^2 \right) \left( \sum_{i=1}^n b_{i}^2 \right) \geqq \left(\sum_{i=1}^n a_i b_i \right)^2 という不等式が成立する。

この記事では,シュワルツの不等式について詳しく解説します。

目次
  • n=2 の場合の証明

  • コーシーシュワルツの不等式のエレガントな証明

  • 等号成立条件

  • シュワルツの不等式の幾何学的な意味

  • シュワルツの不等式についての補足

n=2 の場合の証明

まずは,n=2n=2 の場合のシュワルツの不等式: (a12+a22)(b12+b22)(a1b1+a2b2)2(a_1^2+a_2^2)(b_1^2+b_2^2) \geqq (a_1b_1+a_2b_2)^2 を証明します。

証明

求める不等式の左辺と右辺の差を取る。

(a12b12+a12b22+a22b12+a22b22)(a12b12+2a1b1a2b2+a22b22)=a12b22+a22b122a1b1a2b2=(a1b2a2b1)20\begin{aligned} &(a_1^2 b_1^2 + a_1^2 b_2^2 + a_2^2 b_1^2 + a_2^2 b_2^2)\\ &\quad -(a_1^2 b_1^2 + 2a_1 b_1 a_2 b_2 + a_2^2 b_2^2)\\ &=a_1^2b_2^2+a_2^2b_1^2-2a_1b_1a_2b_2\\ &=(a_1b_2-a_2b_1)^2 \geqq 0 \end{aligned}

となり証明された。等号成立条件は,a1b2a2b1=0a_1 b_2 - a_2 b_1 = 0 である。

等号成立条件については,後でもう少し詳しく述べます。

また,n=3n=3 の場合のシュワルツの不等式: (a12+a22+a32)(b12+b22+b32)(a1b1+a2b2+a3b3)2 (a_1^2+a_2^2+a_3^2)(b_1^2+b_2^2+b_3^2) \geqq (a_1 b_1 + a_2 b_2 + a_3 b_3)^2 も同様に両辺の差を「二乗の和」の形に変形することで証明できます。n=2n=2 の場合より少し難しいですが,練習問題にどうぞ。

コーシーシュワルツの不等式のエレガントな証明

上記では,両辺の差が 00 以上になることを直接示すことで,n=2n=2 の場合のシュワルツの不等式を証明しました。

次は,一般の nn に対するシュワルツの不等式: (i=1nai2)(i=1nbi2)(i=1naibi)2 \left(\sum_{i=1}^n a_{i}^2 \right) \left(\sum_{i=1}^n b_{i}^2 \right) \geqq \left( \sum_{i=1}^n a_i b_i \right)^2 を証明します。ここでは2次方程式の判別式を用いたエレガントな証明を紹介します。

表記簡略化のためシグマの上下の添字を省略しますが,和は 11 から nn までとっています。

証明

2次方程式 (aixbi)2=0\sum(a_ix-b_i)^2=0 を考えると,この式の左辺は 00 以上である。よって(二次関数のグラフをイメージすると)方程式の解は多くても1つである。つまり,この方程式の判別式 DD00 以下である。

実際に左辺を計算すると (aixbi)2=(ai2)x22(aibi)x+(bi2) \sum(a_ix-b_i)^2=\left( \sum a_i^2 \right) x^2 - 2 \left( \sum a_i b_i \right) x+ \left(\sum b_i^2 \right)

となるので判別式を DD とすると D4=(aibi)2(ai2)(bi2) \dfrac{D}{4}=\left(\sum a_i b_i\right)^2-\left(\sum a_i^2\right) \left(\sum b_i^2\right)

となる。 DD00以下であることからシュワルツの不等式が示された。

ちなみに,ラグランジュの恒等式を用いたシュワルツの不等式の証明もエレガントです。 →ラグランジュの恒等式とその仲間

等号成立条件

上記の判別式による証明をもとに,シュワルツの不等式の等号成立条件を考えます。

等号が成立するのは,判別式 DD が0となるとき,すなわち2次方程式 (aixbi)2=0\sum(a_ix-b_i)^2=0

が解を持つときです。これは aixbi=0(i=1,2,n)a_ix-b_i=0\:(i=1, 2, \cdots n) と同値です。つまり, シュワルツの不等式: (i=1nai2)(i=1nbi2)(i=1naibi)2 \left(\sum_{i=1}^n a_{i}^2 \right) \left(\sum_{i=1}^n b_{i}^2 \right) \geqq \left( \sum_{i=1}^n a_i b_i \right)^2 の等号成立条件は,すべての i=1,2,,ni=1,2,\cdots,n に対して aix=bia_ix=b_i となる xx が存在することと言えます。これは,各 ai0a_i\neq 0 の場合には b1a1=b2a2==bnan\dfrac{b_1}{a_1}=\dfrac{b_2}{a_2}=\dots =\dfrac{b_n}{a_n} と表すこともできます。

シュワルツの不等式の幾何学的な意味

シュワルツの不等式は,幾何学的な意味を考えるとより深く理解できます。

イメージが湧きやすいように n=3n=3 の場合を考えます。

aundefined=(a1,a2,a3),bundefined=(b1,b2,b3)\overrightarrow{a}=(a_1,a_2,a_3), \overrightarrow{b}=(b_1,b_2,b_3) と定めると,シュワルツの不等式はベクトルの長さと内積を用いて以下のように書けます。

aundefined2bundefined2(aundefinedbundefined)2 |\overrightarrow{a}|^2|\overrightarrow{b}|^2\geq(\overrightarrow{a}\cdot\overrightarrow{b})^2

上記の不等式が成立するのは,内積の定義 (aundefinedbundefined)=aundefinedbundefinedcosθ(\overrightarrow{a}\cdot\overrightarrow{b})=|\overrightarrow{a}||\overrightarrow{b}|\cos\theta より明らかでしょう。

(ここで,ベクトル aundefined,bundefined\overrightarrow{a},\overrightarrow{b} のなす角を θ\theta とおきました。どちらかが0ベクトルの場合はなす角が定義できませんが,その場合はシュワルツの不等式の両辺は0となり成立します)

また,等号成立条件は cosθ=±1\cos\theta=\pm 1,すなわちふたつのベクトルが平行な場合です。

シュワルツの不等式についての補足

代数的な事実と幾何的なイメージを関連付けて互いに変換しようとすると理解が深まります。

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