コーシーシュワルツの不等式とそのエレガントな証明
任意の実数 に対して, という不等式が成立する。より一般に,任意の正の整数 に対して, という不等式が成立する。
シュワルツの不等式は,二乗の和と積の和を結びつける不等式です。コーシーの不等式,コーシーシュワルツの不等式とも呼ばれます。 と が同じ問題に出てきたときや,和の最大値・最小値を求めたいときに役立ちます。
この記事では, と の証明,一般の場合の証明,等号成立条件,具体的な使い方を順に解説します。
シュワルツの不等式とは:形と見分け方
シュワルツの不等式とは:形と見分け方
よく使う形は です。左辺は「二乗の和どうしの積」,右辺は「積の和の二乗」です。たとえば を評価するなら, と を組み合わせて とできます。どの数を ,どの数を に置くかが使い方のポイントです。
n=2 の場合の証明
n=2 の場合の証明
を証明します。左辺から右辺を引いて,二乗に変形します。
よって不等式が成立する。等号成立条件は である。
公式を忘れたときも,「左辺-右辺」が平方になることから復元できます。
n=3 の場合の証明
n=3 の場合の証明
一般の n に対する証明:判別式を使う方法
一般の n に対する証明:判別式を使う方法
一般の に対しては, の式 を考えます。以下, は から までの和を表します。
のときは,すべての が であり,不等式の両辺は となる。
のとき,任意の実数 に対して が成立する。この2次式は常に 以上なので,判別式 は 以下である。一方, である。よって が示された。
シュワルツの不等式の等号成立条件
シュワルツの不等式の等号成立条件
がすべて なら, の値によらず等号が成立します。 がすべて ではない場合,上の証明で等号が成立するのは ,つまりある実数 について となるときです。平方の和が になるには,各項が である必要があります。したがって となる実数 が存在するときに等号が成立します。
まとめると, と の一方がすべて ,または一方が他方の実数倍であることが等号成立条件です。両方とも でない場合は「比例する」と覚えておけば十分です。各 なら, とも書けます。ただし, を含む場合にこの比の式は使えません。
シュワルツの不等式の使い方と例題
シュワルツの不等式の使い方と例題
例題1:一次式の最大値
のとき, の最大値を求めます。
より, です。等号は のときに成立します。したがって最大値は です。
例題2:逆数の和の最小値
正の実数 が を満たすとき, の最小値を求めます。
とおくと, です。 より 。等号は のときに成立するので,最小値は です。
シュワルツの不等式の幾何学的な意味
シュワルツの不等式の幾何学的な意味
とし, とおくと,不等式は と書けます。両方が0ベクトルでなければ,なす角を として です。 から不等式が従います。等号が成立するのは ,つまり2つのベクトルが平行なときです。どちらかが0ベクトルの場合も等号が成立します。
よくある質問
よくある質問
コーシーの不等式とシュワルツの不等式は違いますか?
この記事で扱った式は,コーシーの不等式,シュワルツの不等式,コーシーシュワルツの不等式という名前で呼ばれます。まずは式の形と等号成立条件を押さえましょう。
いつ使えばよいですか?
「二乗の和」と「積の和」が一緒に現れるとき,あるいは条件に があり を評価したいときが目安です。分数の和では,例題2のように平方根を組み合わせる方法もあります。
シュワルツの不等式は「二乗の和どうしの積 積の和の二乗」。使うときは式の対応を決め,最後に等号成立条件を確認しましょう。