ルートの和とシュワルツの不等式
ルートの和を上から押さえたいときに使える不等式です。
応用例として東大の有名な入試問題を紹介します。
ルートの和の扱いと公式の証明
ルートの和の扱いと公式の証明
不等式証明の基本は「両辺の差を取って 以上を示す」です。不等式にルートが含まれている場合は,両辺を二乗すれば解消される場合もあります。
しかし,ルートの和が登場する場合,二乗しても根号が外れません。 の二乗には が含まれるからです。
そこで登場するのがシュワルツの不等式です。シュワルツの不等式を用いることで「ルートの和 和のルート」という不等式を作り出せます。
シュワルツの不等式より,
ここで とおいて両辺の平方根を取ると である。
シュワルツの不等式を知らない方は,シュワルツの不等式とそのエレガントな証明を参照してください。
以下では,この公式を用いる例題を2問紹介します。
応用例1:東大の入試問題
応用例1:東大の入試問題
1問目は東大の入試問題です。
任意の正の実数 に対して が成立するような実数 の最小値を求めよ。
ルートの和と和のルートが登場した瞬間に上記の公式を連想しましょう。右辺に を作りだすために とおきます。あとは を調整します。
公式において とおくと,
である。
さらに左辺の の係数と の係数をそろえるために とおくと,
よって, ならOKである。
また, とすれば等号が成立する(注)ので が より小さいときは条件を満たさない。
よって求める の値は である。
注:実際の答案では上記の公式は証明してから用いましょう。その際にシュワルツの等号成立条件を考えることで のとき等号が成立することが自然に分かります。
→高校数学の問題集 ~最短で得点力を上げるために~のT36も参照してみてください。
応用例2:アジア太平洋数学オリンピックの問題
応用例2:アジア太平洋数学オリンピックの問題
1996年のアジア太平洋数学オリンピック(APMO)の第5問です。
が三角形の辺の長さのとき以下の不等式を証明せよ。
三角形の辺の長さなので,とりあえずRavi変換を用います。すると上記の公式が使えそうな形が出現します。3つに分解するテクニックを用います。
Ravi変換を用いると, に対して以下の不等式を証明すればよいことが分かる。
上記公式により,
であり,これと同様な式をもう2つこしらえて足し合わせると目標の不等式を得る。
また,Karamataの不等式を用いた別解もあります。→karamataの不等式
イェンゼンの不等式との関係
イェンゼンの不等式との関係
冒頭の公式の別証明も紹介しておきます。イェンゼンの不等式を用います。
は上に凸な関数なのでイェンゼンの不等式より,
両辺 倍して とおくと,
ここで とおくと目標の式を得る。
なお,項が3つ以上の場合も同様の不等式が成立します。
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