不等式証明のコツ3:Ravi変換

Ravi変換

三角形の各辺の長さが変数の不等式証明問題は,Ravi変換と呼ばれる以下の置き換えを用いるとほとんどの場合でうまくいく。

Ravi変換:a=x+y, b=y+z, c=z+xa=x+y,\:b=y+z,\:c=z+x

Ravi変換を用いるとうまくいく理由

「三角形の各辺の長さを a,b,ca, b, c とおくとき以下の不等式を証明せよ」 という問題は数学オリンピックで頻出です。大学入試問題でもまれに出題されます。

「三角形の各辺の長さ」なので,三角不等式が条件として課せられることになります: a+b−c>0, b+c−a>0, c+a−b>0a+b-c>0,\:b+c-a>0,\:c+a-b>0

しかし,三角不等式の制約を直接扱おうとすると泥沼にハマることが多いです。そこで, a+b−c=2y, b+c−a=2z, c+a−b=2x⋯(1)a+b-c=2y,\:b+c-a=2z,\:c+a-b=2x\cdots(1) と置くことで,制約を x,y,z>0x, y, z>0 と扱いやすい形に変換します。

(1)(1) を a,b,ca, b, c について解いたものがRavi変換です。

三角不等式というめんどうな制約のもとで f(a,b,c)≧0f(a, b, c)\geqq 0 を示すよりも,変数が0より大きいという簡単な制約のもとで f(x+y,y+z,z+x)≧0f(x+y, y+z, z+x)\geqq 0 を示す方が簡単な場合が多いです。

斉次式化することで証明する不等式の例

1964年国際数学オリンピックロシア(旧ソ連)大会の第2問です。

問題1

a,b,ca, b, c が三角形の各辺の長さのとき,

a2(b+c−a)+b2(c+a−b)+c2(a+b−c)≦3abca^2(b+c-a)+b^2(c+a-b)+c^2(a+b-c)\leqq 3abc

を証明せよ。

方針

三角形の辺の長さの不等式証明問題は,まずRavi変換を試しましょう。整理すると「和 ≧\geqq 積」という形が出てくるので相加相乗平均が使えることに気づきます。

解答

Ravi変換を用いると,x,y,z>0x, y, z>0 のもとで以下の不等式を示せばよい:

2z(x+y)2+2x(y+z)2+2y(z+x)2≦3(x+y)(y+z)(z+x)2z(x+y)^2+2x(y+z)^2+2y(z+x)^2\leqq 3(x+y)(y+z)(z+x)

整理する:

x2y+xy2+y2z+yz2+z2x+zx2≧6xyzx^2y+xy^2+y^2z+yz^2+z^2x+zx^2\geqq 6xyz

これは相加相乗平均の不等式より成立。

別解

目標の不等式を展開する:

a3+b3+c3+3abc≧a2b+ab2+b2c+bc2+c2a+ca2a^3+b^3+c^3+3abc\geqq a^2b+ab^2+b^2c+bc^2+c^2a+ca^2

これは,r=1r=1 の場合のSchurの不等式そのものである。

※実は,この不等式は a,b,ca, b, c が三角形の各辺の長さでなくても非負なら成立します。

そういう意味で,問題1は少しつまらないかもしれません。次の問題は1983年の国際数学オリンピックの問題です。

問題2

a,b,ca, b, c が三角形の各辺の長さのとき,

a2b(a−b)+b2c(b−c)+c2a(c−a)≧0a^2b(a-b)+b^2c(b-c)+c^2a(c-a)\geqq 0

を証明せよ。

方針

Ravi変換を用いて整理するところまでは機械的にできます。巡回式ですが対称式ではないのでSchurの不等式は使えません。

解答

Ravi変換を用いると,x,y,z>0x, y, z>0 のもとで以下の不等式を示せばよい:

(x+y)2(y+z)(x−z)+(y+z)2(z+x)(y−x)+(z+x)2(x+y)(z−y)≧0(x+y)^2(y+z)(x-z)+(y+z)^2(z+x)(y-x)+(z+x)^2(x+y)(z-y)\geqq 0

巡回式であることに注意しながら気合で整理する:

xy3+yz3+zx3≧xyz(x+y+z)xy^3+yz^3+zx^3\geqq xyz(x+y+z)

両辺 xyzxyz で割る

y2z+z2x+x2y≧x+y+z⋯(A)\dfrac{y^2}{z}+\dfrac{z^2}{x}+\dfrac{x^2}{y}\geqq x+y+z\cdots(A)

この不等式は以下のようにシュワルツの不等式を用いて示せる:

(z+x+y)(y2z+z2x+x2y)≧(y+z+x)2(z+x+y)(\dfrac{y^2}{z}+\dfrac{z^2}{x}+\dfrac{x^2}{y})\geqq(y+z+x)^2

シュワルツの不等式を使う部分は,シュワルツの有名な応用パターンの1つ:「分数の和を下から抑える」なのでできるようになっておきましょう。

また,シュワルツの不等式を思いつかなくても,3つに分解して示す方針で考えてもよいです。つまり,相加相乗平均の不等式より,y2z+z≧2y\dfrac{y^2}{z}+z\geqq 2y なので,そのような不等式を3つ足し合わせることで不等式 (A)(A) は証明できます。

ただ,相加相乗平均をこのように用いるのもなお技巧的に感じられるかもしれません。以下の補足のように考えれば自然に上の不等式が導けます。

補足

不等式 y2z≧ay+(1−a)z\dfrac{y^2}{z}\geqq ay+(1-a)z が成立する aa を発見できれば,そのような不等式を3つ足し合わせることで目標の不等式は証明される。そこで,そのような aa を見つけるために上の不等式を整理して平方完成する:

(y−a2z)2+(−1+a−a24)z2≧0(y-\dfrac{a}{2}z)^2+(-1+a-\dfrac{a^2}{4})z^2\geqq 0

−1+a−a24≧0-1+a-\dfrac{a^2}{4}\geqq 0 ならよいので,a=2a=2 とすればok.

Ravi変換を知っていると一発で解ける問題,昔は多かったですが,最近はあまり見かけないです。

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