分解で証明する不等式の例
例題1
x1+y1+z1=1,x,y,z>0
のとき
(x−1)(y−1)(z−1)≥8
を示せ。
方針
右辺の8という数字を見たときに,23 だ!と気づけば不等式を3つ掛け合わればうまく行きそうな気がします。
解答
条件式が使いやすくなるように示すべき不等式の両辺を
xyz
で割る:
(1−x1)(1−y1)(1−z1)≥xyz8
つまり,
(y1+z1)(z1+x1)(x1+y1)≥xyz8
を示せばよい。
上の不等式は,相加相乗平均の不等式から導かれる以下の3つの不等式を掛けあわせれば示される:
y1+z1≥2yz1
z1+x1≥2zx1
x1+y1≥2xy1
例題2
x+y+z=1,x,y,z>0
のとき
zxy+xyz+yzx≥1
を示せ。
方針
左辺の項をかけ合わせると分母分子でキャンセルされるので相加相乗平均の不等式が使えそうです。しかし,いきなり3変数の相加相乗平均の不等式を用いてもうまく行かないので,2項ずつのセットにして考えてみます。
解答
相加相乗平均の不等式より導かれる以下の3つの不等式を足しあわせて両辺2で割ると求める不等式を得る:
zxy+xyz≥2y,xyz+yzx≥2z,yzx+zxy≥2x
例題3
x,y,z>0
のとき
x2+y22x3+y2+z22y3+z2+x22z3≥x+y+z
を示せ。
方針
2変数の3つの不等式を足しあわせたらうまく行きそうです。
x2+y22x3≥ax+by,(a+b=1)
となる
a,b
が発見できれば同様な不等式を3つ足しあわせて証明できます。
そこで,3次の項が消えるように
a=2
としてやるとうまく行きます。
解答
不等式:
x2+y22x3≥2x−y は分母を払い整理すると
y(x−y)2≥0
と同値であり,簡単に証明できる。
同様にして,
y2+z22y3≥2y−z
z2+x22z3≥2z−x
も成立し,以上3つの不等式を足しあわせて求める不等式を得る。
この他にも3つに分解して証明する方法として,isolated fudging や Cauchy Reverse Technique があります。