相加相乗平均の不等式:意味・例題・おもしろい証明
相加相乗平均の不等式についてくわしく解説します。
相加平均・相乗平均の意味からはじめて,応用問題・n変数の証明まで紹介します。
相加平均・相乗平均
相加平均・相乗平均
- 2つの正の数 に対して, のことを相加平均と言います。「普通の平均」です。
- 一方, のことを相乗平均と言います。
- と の相加平均は
- と の相乗平均は
この例では,相加平均は で,相乗平均の よりも大きいです。実は,これはいつでも成立します。
相加平均相乗平均
つまり,すべての に対して
「相加平均・相乗平均の不等式」「AM-GM不等式」など他にもいろいろな言い方があります。
等号成立条件
等号成立条件
相加相乗平均の不等式において,等号が成立する必要十分条件は, です。
-
のとき,相加平均は ,相乗平均は で同じ値になります。
-
逆に「等号を満たすなら である」ことは,後述の証明を読めばわかります。
相加相乗平均の不等式の証明(2変数)
相加相乗平均の不等式の証明(2変数)
は明らかに成立。左辺を展開すると,
移項して で割ると,
となり相加相乗平均の不等式を得る。
等号成立条件は,,つまり
応用問題
応用問題
- 相加相乗平均の不等式の の両辺を2倍して という形で使われることが多いです。
のとき, を証明せよ。
とした相加相乗平均の不等式より,
このように,かけ算して定数になるような2つの数に対して相加相乗平均の不等式が使われることが多いです。
他の応用例
-
相加相乗平均の不等式は, などの,関数の最小値を計算するのに使える場合があります。
→相加相乗平均の不等式の応用〜関数の最小値を求める〜 -
相加相乗平均の不等式は,さらに複雑な不等式の証明に使われることが多いです。
→有名不等式a^2+b^2+c^2≧ab+bc+caのいろいろな証明
→重み付き相加相乗平均の不等式の証明
3変数・n変数への拡張
3変数・n変数への拡張
のとき, が成立する。等号成立条件は,
左辺が相加平均で,右辺が相乗平均です。3変数の場合の証明は,因数分解の公式とテクニック一覧の記事の後半で紹介しています。
のとき, が成立する。等号成立条件は,
ただし, は 乗根を表し, は から までの全ての積を取ったものを表します。
相加相乗平均の不等式の証明(n変数)
相加相乗平均の不等式の証明(n変数)
相加相乗平均の不等式はとても有名であり,証明方法はたくさんあります。例えば,
- 一般的な数学的帰納法を用いる方法
- forward-backward-induction(双方向帰納法)を用いる方法
- (左辺)ー(右辺)を の関数だと思って微分する方法
- 指数関数を用いる方法
などがあります(参照:wikipedia)。
今回はその中でも,個人的に好きな「指数関数を用いる方法」を紹介します。
※数Ⅲの知識が必要です。見やすくするために のことを と書きます。
指数関数の有名な不等式
を用いる。この不等式は有名なマクローリン型不等式である。
表記簡略化のため, とおき, を に代入する。
この式を から までつくり辺々掛け合わせると以下のようになる。
上の不等式において,左辺の指数の中身は の定義より と等しいので以下の式を得る。
両辺の 乗根をとると
となる。
次に等号成立条件について考える。 の等号成立条件は である。つまり,全ての に対して が成立することであり,これは であることと同値である。
横浜市立大学や徳島大学の入試問題として,この証明に関連する出題があったようです。
相加平均は一般的によく使う平均です。算術平均とも言います。相乗平均は「成長率」や「収益率」の計算のときなどに使います。幾何平均とも言います。