相加相乗平均の不等式とそのエレガントな証明

更新日時 2022/04/07
相加相乗平均の不等式

a,b0a, b\geqq 0 のとき, a+b2ab \dfrac{a+b}{2} \geqq \sqrt{ab} という不等式が成立する。これを相加相乗平均の不等式と言う。

この記事では,相加相乗平均の不等式について詳しく解説します。

目次
  • 相加相乗平均の不等式の具体例

  • 等号成立条件

  • 二変数の場合の相加相乗平均の不等式の証明

  • 相加相乗平均の不等式の応用

  • 3変数への拡張

  • n変数への拡張

  • n変数の相加相乗平均の不等式の証明

相加相乗平均の不等式の具体例

相加相乗平均の不等式が成立していることを,具体例で確認してみましょう。

a=2,b=8a=2,b=8 としてみると,

2+82=52×8=42+82>2×8 \dfrac{2+8}{2}=5\\ \sqrt{2 \times 8} = 4\\ \dfrac{2+8}{2} > \sqrt{2 \times 8}

が成立しています。

なぜ相加相乗平均の不等式と言うのか

  • 不等式の左辺を 22 で割った a+b2\dfrac{a+b}{2} のことを相加平均と言います。
  • 不等式の右辺を 22 で割った ab\sqrt{ab} のことを相乗平均と言います。

つまり,a+b2ab\dfrac{a+b}{2} \geqq \sqrt{ab} という不等式は,相加平均は相乗平均以上であることを表しています。

等号成立条件

相加相乗平均の不等式において,等号が成立する必要十分条件は,a=ba=b です。

a=ba=b のときに等号が成立することは簡単に確認できます。逆に「等号を満たすなら a=ba=b である」ことは,後半の証明を読んでください。

二変数の場合の相加相乗平均の不等式の証明

証明

a,b>0a,b > 0 とする。

(a+b)2(2ab)2=(a2+2ab+b2)4ab=a22ab+b2=(ab)20\begin{aligned} (a+b)^2 - (2\sqrt{ab})^2 &= (a^2 + 2ab + b^2) - 4ab\\ &= a^2 - 2ab + b^2\\ &= (a-b)^2 \geqq 0 \end{aligned}

である。よって (a+b)2(2ab)2(a+b)^2 \geqq (2\sqrt{ab})^2 となる。a,b>0a,b > 0 であるため a+b2ab a+b \geqq 2\sqrt{ab} すなわち a+b2ab \dfrac{a+b}{2} \geqq \sqrt{ab} である。

等号が成立するとき,(ab)2=0(a-b)^2 = 0 である。これは a=ba=b のときである。ゆえに等号成立条件は a=ba=b となる。

相加相乗平均の不等式の応用

3変数への拡張

a,b,c0a, b, c \geqq 0 のとき, a+b+c3abc3 \dfrac{a+b+c}{3} \geqq \sqrt[3]{abc} が成立します。等号成立条件は,a=b=ca=b=c です。

3変数の場合の相加相乗平均の不等式です。

この不等式の証明は,因数分解公式(3つの立方和)の中ほどで証明しています。

n変数への拡張

a1,a2,,an0a_1, a_2, \cdots, a_n \geqq 0 のとき, 1ni=1naii=1nain \dfrac{1}{n} \sum_{i=1}^n a_{i} \geqq \sqrt[n]{\prod_{i=1}^n a_i} が成立します。等号成立条件は, a1=a2==ana_1=a_2=\cdots=a_n です。

ただし,n\sqrt[n]{\:}nn 乗根を表し,i=1nai\displaystyle{{\prod_{i=1}^n a_i}}a1a_1 から ana_n までの全ての積を取ったものを表します。

n変数の相加相乗平均の不等式の証明

相加相乗平均の不等式は有名な不等式であり,証明方法はたくさんあります。例えば,

  • 一般的な数学的帰納法を用いる方法
  • forward-backward-induction(双方向帰納法)を用いる方法
  • (左辺)ー(右辺)を ana_n の関数だと思って微分する方法
  • 指数関数を用いる方法

などがあります(参照:wikipedia)。

今回はその中でも,個人的に好きな「指数関数を用いる方法」を紹介します。

※数Ⅲの知識が必要です。見やすくするために exe^x のことを exp(x)\exp(x) と書きます。

証明

指数関数の有名な不等式

exx+1() e^x\geq x+1 \quad\cdots\cdots (\ast)

を用いる。この不等式は有名なマクローリン型不等式である。

表記簡略化のため, m=1ni=1nai\displaystyle m=\dfrac{1}{n} \sum_{i=1}^{n}a_i とおき,x=aim1x=\dfrac{a_i}{m}-1()(\ast) に代入する。

exp(aim1)aim \exp\left( \dfrac{a_i}{m}-1 \right) \geqq \dfrac{a_i}{m}

この式を i=1i=1 から nn までつくり辺々掛け合わせると以下のようになる。

exp(1mi=1nain)1mni=1nai \exp \left( \dfrac{1}{m} \sum_{i=1}^{n} a_{i} -n \right) \geqq \dfrac{1}{m^n}\prod_{i=1}^n a_i

上の不等式において,左辺の指数の中身は mm の定義より 00 と等しいので以下の式を得る。

mni=1nai m^n \geqq {\displaystyle \prod_{i=1}^n a_i}

両辺の nn 乗根をとると

1ni=1naii=1nain \dfrac{1}{n} \sum_{i=1}^n a_{i} \geqq \sqrt[n]{\prod_{i=1}^n a_i}

となる。

次に等号成立条件について考える。()(\ast) の等号成立条件は x=0x=0 である。つまり,全ての ii に対して aim1=0\dfrac{a_i}{m}-1=0 が成立することであり,これは a1=a2==ana_1=a_2=\cdots=a_n であることと同値である。

横浜市立大学や徳島大学の入試問題として,この証明に関連する出題があったようです。

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