相加相乗平均の不等式とそのエレガントな証明

更新日時 2021/03/07

a,b0a, b\geq0 のとき,

a+b2aba+b\geq 2\sqrt{ab}

という不等式が成立します。これを相加相乗平均の不等式と言います。

この記事では,相加相乗平均の不等式について詳しく解説します。

目次
  • 相加相乗平均の不等式の具体例

  • 等号成立条件

  • なぜ相加相乗平均の不等式と言うのか

  • 二変数の場合の相加相乗平均の不等式の証明

  • 相加相乗平均の不等式の応用

  • 3変数への拡張

  • n変数への拡張

  • n変数の相加相乗平均の不等式の証明

相加相乗平均の不等式の具体例

相加相乗平均の不等式:

a+b2aba+b\geq 2\sqrt{ab}

が成立していることを,具体例で確認してみましょう。

a=2,b=8a=2,b=8 としてみると。

2+8>22×82+8> 2\sqrt{2\times 8}

が成立しています(左辺は10で右辺は8)。

等号成立条件

相加相乗平均の不等式:

a+b2aba+b\geq 2\sqrt{ab}

において,等号が成立する必要十分条件は,a=ba=b です。

a=ba=b のときに等号が成立することは簡単に確認できます。逆に「等号を満たすなら a=ba=b である」ことは,後半の証明を読めば分かります。

なぜ相加相乗平均の不等式と言うのか

不等式の左辺を 22 で割った a+b2\dfrac{a+b}{2} のことを相加平均と言います。

また,不等式の右辺を 22 で割った ab\sqrt{ab} のことを相乗平均と言います。

つまり, a+b2aba+b\geq 2\sqrt{ab} という不等式は, 相加平均は相乗平均以上であることを表しています。

二変数の場合の相加相乗平均の不等式の証明

証明

証明したい不等式:

a+b2aba+b\geq 2\sqrt{ab}

の両辺を二乗する:

a2+2ab+b24aba^2+2ab+b^2\geq 4ab

移項すると以下と同値:

(ab)20(a-b)^2\geq 0

これは明らかに成立する!

そして,等号成立条件は a=ba=b である。

相加相乗平均の不等式の応用

相加相乗平均の不等式は,x+2xx+\dfrac{2}{x} などの,関数の最小値を計算するのに使える場合があります: 相加相乗平均の不等式の応用〜関数の最小値を求める〜

また,相加相乗平均の不等式は,さらに複雑な不等式の証明に使われることが多いです: 有名不等式a^2+b^2+c^2≧ab+bc+caのいろいろな証明 重み付き相加相乗平均の不等式の証明

3変数への拡張

a,b,c0a, b, c\geq0 のとき,

a+b+c3abc3a+b+c\geq 3\sqrt[3]{abc}

が成立します。等号成立条件は, a=b=ca=b=c です。

3変数の場合の相加相乗平均の不等式です。

この不等式の証明は,因数分解公式(3つの立方和)の中ほどで証明しています。

n変数への拡張

a1,a2,,an0a_1, a_2, \cdots, a_n\geq0 のとき,

i=1naini=1nain{\displaystyle \sum_{i=1}^n a_i\geq n\sqrt[n]{\prod_{i=1}^n a_i}}

が成立します。等号成立条件は, a1=a2==ana_1=a_2=\cdots=a_n です。

ただし,n\sqrt[n]{\:}nn 乗根を表し,i=1nai\displaystyle{{\prod_{i=1}^n a_i}}a1a_1 から ana_n までの全ての積を取ったものを表します。

n変数の相加相乗平均の不等式の証明

相加相乗平均の不等式は,有名な不等式であり,証明方法はたくさんあります。例えば,

  • 一般的な数学的帰納法を用いる方法
  • forward-backward-induction(双方向帰納法)を用いる方法
  • (左辺)ー(右辺)を ana_n の関数だと思って微分する方法
  • 指数関数を用いる方法

などがあります。(参照:wikipedia

今回はその中でも最もエレガントな指数関数を用いる方法を紹介します。

(誘導付きで横浜市立大学の入試問題として出題されている

追記:誘導なしで徳島大学でも出題されたことがあるらしい)

※数Ⅲの知識が必要です。見やすくするために exe^x のことを exp(x)\exp(x) と書きます。

証明

指数関数の有名な不等式

exx+1e^x\geq x+1 ・・・(※)

を用いる。この不等式は有名なマクローリン型不等式である。

表記簡略化のため,

m=i=1nain{\displaystyle m=\dfrac{\sum_{i=1}^{n}a_i}{n}}

とおき,x=aim1x=\dfrac{a_i}{m}-1 を(※)に代入する:

exp(aim1)aim\exp\left(\dfrac{a_i}{m}-1\right)\geq \dfrac{a_i}{m}

この式を i=1i=1 から nn までつくり辺々掛け合わせると以下のようになる:

exp(i=1naimn)i=1naimn\exp\left(\dfrac{\sum_{i=1}^{n}a_i}{m}-n\right)\geq \dfrac{\prod_{i=1}^n a_i}{m^n}

上の不等式において,左辺の指数の中身は mm の定義より 00 と等しいので以下の式を得る:

mni=1naim^n\geq {\displaystyle \prod_{i=1}^n a_i}

両辺の nn 乗根をとり,両辺 nn 倍して mm をもとに戻すと

i=1naini=1nain{\displaystyle \sum_{i=1}^n a_i\geq n\sqrt[n]{\prod_{i=1}^n a_i}}

となる。

次に等号成立条件について考える。(※)の等号成立条件は x=0x=0 である。つまり,全ての ii に対して aim1=0\dfrac{a_i}{m}-1=0 が成立することであり,これは a1=a2==ana_1=a_2=\cdots=a_n であることと同値である。

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