相加相乗平均の不等式を用いて関数の最小値を求める
相加相乗平均の不等式(AM-GM不等式)の応用の一例として,特殊な形の関数の最小値を求める方法を紹介します。
関数の最小値は微分法を使えば求めることができるが,以下のような特殊な形をしていればAM-GM不等式を用いて解くこともできる。
(ただし は正の有理数)
そのエレガントな方法とは(大雑把に言うと), 個の と 個の ,つまり 積が定数になるように調節した 個の非負の数にAM-GM不等式を用いるというものです。(上の説明は が整数のときのみ通用しますが,一般の有理数に対しても同様の手法が使えます。)
上の説明では抽象的でわかりにくいと思うので,具体例で説明します。
の の範囲での最小値とそのときの を求めよ。
等号成立条件は,
つまり, のとき。
1行目から2行目にかけてAM-GM不等式が使えるように変形するのがポイントです。
また, がともに負の場合の関数の最大値を求めるのも同様にできます。
の最大値とそのときの を求めよ。
等号成立条件は,
つまり, のときに最大値 を取る。
ただし,項が3つ以上ある場合にはこの小技は使えないので注意しましょう。(等号成立条件を満たす が存在しなくなる)
まあ実用上は微分法だけ知っていれば問題ありませんが,この方法を覚えると以下の様な嬉しい事があります!
- 微分法を用いるよりも若干速く解ける
- 検算に使える
- エレガント
ちなみに,この考え方を工夫すると分母は二次,分子が一次の分数関数の極値を求めることもできます。→分数関数の極値を求める2つのテクニック
また, というように 「分解する手法」は様々な応用例があります。例えば→自然対数の底に収束することの証明や,以下の数学オリンピックの問題。
数オリの問題に挑戦
追記:項が3つ以上あると使えない理由
数オリの問題に挑戦
2012年国際数学オリンピックアルゼンチン大会の第2問です。
以上の整数 と,正の実数 が を満たしているとき以下の不等式を証明せよ:
方針:両辺の対数を取りたくなりますが条件式がうまく使えません。そこで,相加相乗平均の不等式を用いて1項ずつ評価することを考えます。累乗根とべき乗が相殺するように を分解します。
相加相乗平均の不等式より,
・・・
これらを辺々掛けあわせれば題意の不等式を得る。
(等号成立条件が全て満たされることはないのでがになる)
追記:項が3つ以上あると使えない理由
読者の方に質問を頂いたので補足します。
の での最小値を求めよ
この問題に相加相乗平均の不等式を用いると となります。この不等式は正しいのですが, 等号を満たす が存在しないのです。
実際に等号成立条件を確認してみると, となり,どのように を選んでも等号成立条件を満たすことはできません。
上記のような質問は大変ありがたいです。質問お待ちしています!
Tag:国際数学オリンピックの過去問