1. 高校数学の美しい物語
  2. 相加相乗平均の不等式を用いて関数の最小値を求める

相加相乗平均の不等式を用いて関数の最小値を求める

更新日時 2021/03/07

相加相乗平均の不等式(AM-GM不等式)の応用の一例として,特殊な形の関数の最小値を求める方法を紹介します。

関数の最小値は微分法を使えば求めることができるが,以下のような特殊な形をしていればAM-GM不等式を用いて解くこともできる。

f(x)=axm+bxn(a,b>0)f(x)=ax^m+bx^{-n}\hspace{10mm} (a,b > 0)

(ただし m,nm,n は正の有理数)

そのエレガントな方法とは(大雑把に言うと),nn 個の anxm\dfrac{a}{n}x^mmm 個の bmxn\dfrac{b}{m}x^{-n} ,つまり 積が定数になるように調節した(m+n)(m+n) 個の非負の数にAM-GM不等式を用いるというものです。(上の説明は m,nm,n が整数のときのみ通用しますが,一般の有理数に対しても同様の手法が使えます。)

上の説明では抽象的でわかりにくいと思うので,具体例で説明します。

問題1

f(x)=x+1x2f(x)=x+\dfrac{1}{x^2}x>0x>0 の範囲での最小値とそのときの xx を求めよ。

解答

x+1x2=x2+x2+1x23x2x21x23=3143x+\dfrac{1}{x^2}\\=\dfrac{x}{2}+\dfrac{x}{2}+\dfrac{1}{x^2}\\ \geq 3\sqrt[3]{\dfrac{x}{2}\cdot \dfrac{x}{2}\cdot \dfrac{1}{x^2}}\\ =3\sqrt[3]{\dfrac{1}{4}}

等号成立条件は,x2=1x2\dfrac{x}{2}=\dfrac{1}{x^2}

つまり,x=23x=\sqrt[3]{2} のとき。

1行目から2行目にかけてAM-GM不等式が使えるように変形するのがポイントです。

また,a,ba, b がともに負の場合の関数の最大値を求めるのも同様にできます。

問題2

f(x)=x21xf(x)=-x^2-\dfrac{1}{\sqrt{x}} の最大値とそのときの xx を求めよ。

解答

x2+1x=x2+14x+14x+14x+14x5x214x14x14x14x5=54455=5445x^2+\dfrac{1}{\sqrt{x}}\\ =x^2+\dfrac{1}{4\sqrt{x}}+\dfrac{1}{4\sqrt{x}}+\dfrac{1}{4\sqrt{x}}+\dfrac{1}{4\sqrt{x}}\\ \geq 5\sqrt[5]{x^2\cdot \dfrac{1}{4\sqrt{x}} \cdot\dfrac{1}{4\sqrt{x}}\cdot\dfrac{1}{4\sqrt{x}}\cdot\dfrac{1}{4\sqrt{x}}}\\ =5\sqrt[5]{\dfrac{4}{4^5}}\\ =\dfrac{5}{4}\sqrt[5]{4}

等号成立条件は,x2=14xx^2=\dfrac{1}{4\sqrt{x}}

つまり,x=425x=4^{-\frac{2}{5}} のときに最大値 5445-\dfrac{5}{4}\sqrt[5]{4} を取る。

ただし,項が3つ以上ある場合にはこの小技は使えないので注意しましょう。(等号成立条件を満たす xx が存在しなくなる)

まあ実用上は微分法だけ知っていれば問題ありませんが,この方法を覚えると以下の様な嬉しい事があります!

  • 微分法を用いるよりも若干速く解ける
  • 検算に使える
  • エレガント

ちなみに,この考え方を工夫すると分母は二次,分子が一次の分数関数の極値を求めることもできます。→分数関数の極値を求める2つのテクニック

また,1=12+121=\dfrac{1}{2}+\dfrac{1}{2} というように 「分解する手法」は様々な応用例があります。例えば→自然対数の底に収束することの証明や,以下の数学オリンピックの問題。

目次
  • 数オリの問題に挑戦

  • 追記:項が3つ以上あると使えない理由

数オリの問題に挑戦

2012年国際数学オリンピックアルゼンチン大会の第2問です。

問題

33 以上の整数 nn と,正の実数 a2,a3,,ana_2,a_3,\cdots,a_na2a3an=1a_2a_3\cdots a_n=1 を満たしているとき以下の不等式を証明せよ:

(a2+1)2(a3+1)3(an+1)n>nn(a_2+1)^2(a_3+1)^3\cdots(a_n+1)^n > n^n

方針:両辺の対数を取りたくなりますが条件式がうまく使えません。そこで,相加相乗平均の不等式を用いて1項ずつ評価することを考えます。累乗根とべき乗が相殺するように 11 を分解します。

解答

相加相乗平均の不等式より,

(a2+1)222a2(a_2+1)^2\geq 2^2a_2

(a3+1)3=(a3+12+12)33322a3(a_3+1)^3=(a_3+\dfrac{1}{2}+\dfrac{1}{2})^3\geq \dfrac{3^3}{2^2}a_3

・・・

(an+1)n=(an+1n1++1n1)nnn(n1)n1an(a_n+1)^n=(a_n+\dfrac{1}{n-1}+\cdots+\dfrac{1}{n-1})^n\,\geq \dfrac{n^n}{(n-1)^{n-1}}a_n

これらを辺々掛けあわせれば題意の不等式を得る。

(等号成立条件が全て満たされることはないので\geq>>になる)

追記:項が3つ以上あると使えない理由

読者の方に質問を頂いたので補足します。

2x+x2+1x32x+x^2+\dfrac{1}{x^3}x>0x>0 での最小値を求めよ

この問題に相加相乗平均の不等式を用いると 2x+x2+1x33232x+x^2+\dfrac{1}{x^3}\geq 3\sqrt[3]{2} となります。この不等式は正しいのですが, 等号を満たす xx が存在しないのです。

実際に等号成立条件を確認してみると,2x=x2=1x32x=x^2=\dfrac{1}{x^3} となり,どのように xx を選んでも等号成立条件を満たすことはできません。

上記のような質問は大変ありがたいです。質問お待ちしています!

Tag:国際数学オリンピックの過去問

人気記事
  1. 高校数学の美しい物語
  2. 相加相乗平均の不等式を用いて関数の最小値を求める