数学オリンピック突破のための有名不等式まとめ

有名な不等式を紹介していきます。(主観的ですが……)重要度が高い順に並べました。あなたはいくつ知っていますか?

1:相加相乗平均の不等式

i=1naini=1nain{\displaystyle \sum_{i=1}^n a_i\geq n\sqrt[n]{\prod_{i=1}^n a_i}}

AM-GM不等式とも呼ばれます。最も基本的な不等式ですが,応用される際にはいろいろな形で登場してくるので使いこなすにはたくさん経験を積む必要があります。 →相加相乗平均の不等式:意味:例題:おもしろい証明 →重み付き相加相乗平均の不等式の証明

2:コーシー:シュワルツの不等式

(i=1nai2)(i=1nbi2)(i=1naibi)2{\displaystyle(\sum_{i=1}^n a_i^2)}{\displaystyle(\sum_{i=1}^n b_i^2)}\geq{\displaystyle(\sum_{i=1}^n a_ib_i)^2}

これも基本的な公式ですが,使いこなすのは意外と大変。 →シュワルツの不等式とそのエレガントな証明 →シュワルツの不等式の応用公式

3:イェンゼンの不等式(凸関数の不等式)

f(x)f(x) が凸関数のとき,

任意の λi0,xi(i=1,,n),i=1nλi=1\lambda_i\geq 0, x_i (i=1,\cdots,n), \displaystyle\sum_{i=1}^n\lambda_i=1 に対して,

i=1nλif(xi)f(i=1nλixi){\displaystyle\sum_{i=1}^{n}\lambda_if(x_i)}\geq f({\displaystyle\sum_{i=1}^{n}\lambda_ix_i})

イェンゼンの不等式は式で書くとゴツくて分かりにくいので直感的に理解しましょう。 →イェンゼンの不等式の3通りの証明

4:Muirheadの不等式

[a][b][a]\succeq [b] ならば

symi=1nxiaisymi=1nxibi\displaystyle\sum_{sym}\prod_{i=1}^nx_i^{a_i}\geq\displaystyle\sum_{sym}\prod_{i=1}^nx_i^{b_i}

対称式に対して使える強力な不等式です。数学オリンピックの不等式証明問題の多くがMuirheadの不等式に帰着されます。これも式で覚えるとゴツいので,「対称式ならベキが偏っている方が大きい」と覚えましょう。 →Muirheadの不等式と具体例

5:Schurの不等式

r>0,x,y,z0r>0, x, y, z\geq0 に対して,

xr(xy)(xz)+yr(yz)(yx)+zr(zx)(zy)0x^r(x-y)(x-z)+y^r(y-z)(y-x)+z^r(z-x)(z-y)\geq 0

こちらも対称式の不等式証明問題に使える重要な不等式です。 →Schurの不等式の証明と例題

6:並べ替え不等式

x1x2xny1y2ynx_1\geq x_2\geq\cdots\geq x_n\\y_1\geq y_2\geq\cdots \geq y_n

1,2,,n1, 2, \cdots, n の並べ替え σ(1),σ(2),,σ(n)\sigma(1), \sigma(2), \cdots, \sigma(n) に対して,

i=1nxiyii=1nxiyσ(i)i=1nxiyni+1\displaystyle\sum_{i=1}^nx_iy_i\geq\sum_{i=1}^nx_iy_{\sigma(i)}\geq\sum_{i=1}^nx_iy_{n-i+1}

→並べ替え不等式の証明と例題

7:チェビシェフの不等式

x1x2xny1y2ynx_1\geq x_2\geq\cdots\geq x_n\\y_1\geq y_2\geq\cdots \geq y_n

に対して,

1ni=1nxiyi(1ni=1nxi)(1ni=1nyi)1ni=1nxiyn+1i\dfrac{1}{n}\displaystyle\sum_{i=1}^nx_iy_i\geq(\dfrac{1}{n}\sum_{i=1}^nx_i)(\dfrac{1}{n}\sum_{i=1}^ny_i)\geq\dfrac{1}{n}\sum_{i=1}^nx_iy_{n+1-i}

並べ替え不等式の特殊ケースに相当します。対称式の不等式証明に威力を発揮します。 →チェビシェフの不等式の2通りの証明と例題

8:ヘルダーの不等式

複雑なのでリンク先参照!

このページで紹介する不等式の中では最もレアな不等式です。数学オリンピックではヘルダーの不等式を用いて証明できる問題がたまに出題されます。 →ヘルダーの不等式のエレガントな証明と頻出形

9:Nesbittの不等式

a,b,c>0a,b,c > 0 のとき,

ca+b+ab+c+bc+a32\dfrac{c}{a+b}+\dfrac{a}{b+c}+\dfrac{b}{c+a}\geq \dfrac{3}{2}

これも数学オリンピックの不等式証明の途中でよく使います。 Nesbittの不等式の証明

相加相乗平均とシュワルツは知っておくべきです。難関大学受験者はイェンゼンの不等式もおさえておきましょう。それ以外は数学オリンピック受験者やマニアックな不等式好きな人向け。

不等式を整理してぼんやりと眺めるのが目的なので,自明な前提条件は省略しています。詳細はリンク先をご覧ください。

これだけ覚えておけば不等式証明問題の前提知識はばっちり!