0の階乗を1と定義する理由
の階乗は と定義する。なぜなら,そう定義すると都合がよいから。
正の整数の階乗は,例えば のように「 からその数までの整数の積」で定義されます。では の階乗,つまり はなぜ と定義するのか,4通りの説明を紹介します。
0の階乗を1とする理由(高校範囲内)
0の階乗を1とする理由(高校範囲内)
理由1. 階乗の再帰式
という式が,階乗の定義から成り立ちます。これをもう一行下に続けると が成り立ってほしいですね。これは, と定義すれば成り立ちます。
つまり, と定義することで, という式(階乗の再帰式)が でも成り立つので嬉しいです。
理由2. コンビネーション
個のものから 個選ぶ場合の数を とすると, のとき, を満たします。 →順列と組合せの違いと例題
この式が のときにも成り立ってほしいです。つまり, が成り立ってほしいです。 個のものから 個選ぶ方法は一通りであり左辺は なので, とする必要があります。
0の階乗を1とする理由(高校範囲外)
0の階乗を1とする理由(高校範囲外)
理由3. マクローリン展開
と定義することでマクローリン展開の公式を と簡潔に書くことができます。
例えば, という式を と書くことができます。調和が取れていて美しいです!
理由4. ガンマ関数
実は, に対して という関係式が成立します。
と定義すれば,この関係式が でも成立します。
詳しくは ガンマ関数(階乗の一般化)の定義と性質 をどうぞ。
0の階乗の定義まとめ
0の階乗の定義まとめ
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と定義したくなる気持ちも分かりますが, と定義した方がいろいろ都合がよいです。
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どう都合がよいかと言うと, とすることで,正の整数の階乗を含む「様々な関係式」が の階乗の場合にも成立するようになり統一的に扱える(場合分けが不要)となります。
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この記事では「様々な関係式」を説明することで, という定義を納得してもらうのが目標でした。
定義は約束事であって証明すべきことではありません。 を証明して下さいって言われると困っちゃいます。