二項定理の意味と係数を求める例題・2通りの証明
二項定理とは, 乗の式を展開するための以下の公式のこと:
二項定理(英:binomial theorem)は見た目が少し複雑ですが,慣れてしまえば難しくありません。二項定理の意味と,二項定理の2通りの証明を解説します。
二項定理の公式の意味
例題
パスカルの三角形と二項係数の関係
二項定理の頻出形
二項定理の証明1
二項定理の証明2
二項定理の公式の意味
二項定理は,
「 を展開したときの各項の係数は になる」
という定理です。
例えば,二項定理で の場合を書き下してみると,
となります。
二項定理を理解するために必要な知識
とは「 に から まで順番に代入して足し算する」という意味です。
また, とは, 個から 個を選ぶ組合せの数(二項係数)です。 →順列と組合せの違いと例題
例題
二項定理を用いて係数を計算する
を展開したときの の係数を計算せよ。
二項定理より, となる。よって, が現れる項は の部分であり,係数は
である。
を展開したときの の係数を計算せよ。
二項定理より, となる。よって, が現れる項は の部分であり,係数は
数列の和への応用
を求めよ。
二項定理をうまく当てはめます。
を求めよ。
例3 の計算と同様にすると です。これらを足すと となります。よって です。
パスカルの三角形と二項係数の関係
以下の2つの規則から作られる三角形をパスカルの三角形という。
- 最頂点の数と,各行の左右の端の数は全て
- 各行の左右の端以外は,左上の数と右上の数の和
パスカルの三角形における 行目の数の並びが, の係数になっています。例えば, ですが,係数の は 行目に対応しています。
があまり大きくない時には,パスカルの三角形の図を書いて計算できます。
パスカルの三角形の面白い性質について,パスカルの三角形の性質とフラクタルの記事で解説をしています。合わせて読んでみてください。
二項定理の頻出形
二項定理で, としたバージョン: も頻出です。
ちなみに,上式は二項定理の特殊ケースに見えますが,こちらからもとのバージョンを導出することもできます( とおいて両辺に をかける)。
を展開したときの の係数を計算せよ。
答えは,
二項定理の証明1
二項定理の証明を2つ紹介します。
なので,二項定理を
と書いてもOKです。後者の式を証明します。
まずは,教科書にも載っている定番の方法です。組合せの議論を用います。
の場合を図に示す。
を展開したときに出てくる1つの項は,
「 と のうちどちらかを選ぶ」という操作を各カッコに対して行い,選んだものを全てかけあわせたもの。このようにして出てくる項を全て( 個)足し合わせると展開式が得られる。
よって,展開後は というタイプの項のみが存在し,その係数は ( 個のうちどの 個のかっこから を選ぶのかで 通り)である。
二項定理の証明2
教科書には載っていませんが,二項定理を数学的帰納法で証明することもできます。「任意の自然数に対して〜を証明せよ」というタイプの問題で困ったら帰納法にトライです。 →数学的帰納法のパターンまとめ
-
のときは成立する。
-
のとき二項定理が成立していると仮定する。 両辺に をかける。 右辺を展開したときには というタイプの項のみが登場し,その係数は である。ここで,二項係数の公式より なので のときにも二項定理が成立することが分かった。
最後に用いた二項係数の公式は二項係数の有名公式一覧と2つの証明方針で解説しています。
2つの証明のうちどちらが分かりやすいかは人による気がしますが,ぜひ両方とも理解してください。
帰納法は泥臭い最後の手段だから推奨しないという方もいますし,帰納法が大好きな友人もいます。私は中立派です。