ガウス積分の公式の2通りの証明
ガウス積分とは,以下のような定積分のことです。
(ただし )
ガウス積分は,統計学や物理学で登場する有名な定積分の公式です。この記事では, ガウス積分の2通りの証明方法 と, ガウス積分の応用 について詳しく解説します。
ガウス積分の証明1:重積分を用いる
ガウス積分の証明2:ガンマ関数を用いる
ガウス積分の応用
ガウス積分の変形
ガウス積分の証明1:重積分を用いる
ガウス積分の証明方法のうち,まずは重積分を用いた方法を解説します。表記は少しゴツイですが,内容は単純です。
方針: を出現させるために極座標を用います。極座標が使える形にするために最初にあえて二乗します。
ガウス積分の値を とおく。
ここで と置換すると,ヤコビアンは なので,
よって,
注:最初の部分で
とできることを用いました。(フビニの定理)これは,シグマの二重和が分解できることの一般形です。シグマ計算を機械的に行うための3つの公式の最後の部分。
注:重積分の変数変換,ヤコビアンに関しては厳密には大学内容が必要です。→ヤコビ行列,ヤコビアンの定義と極座標の例
平面上において から の間にある部分の面積が と近似できることに由来しています。全平面上で積分する際に を固定して で積分し,最後に で積分します。
ガウス積分の証明2:ガンマ関数を用いる
ガウス積分は,高校数学の範囲内で証明することもできます。
ただし(高校生でも頑張れば理解できるが少し難しい)前提知識として「ガンマ関数とベータ関数の関係」を使います。
参考:ベータ関数の積分公式の下の方を参照してください。
方針:階乗の一般化であるガンマ関数 を利用します。ガンマ関数は直接計算できないので,ベータ関数に変換してから置換積分で計算します。
ガンマ関数の定義より
であり, と置換すると,
一方,ガンマ関数とベータ関数の関係より,
ここで と置換すると,
より,
以上より,
方法1は有名な方法ですが重積分の分解を用いるので, 高校数学の範囲では方法2の方が納得しやすいと思います。
※積分区間が有限でないのでガウス積分は広義積分です。そのため,厳密には高校数学範囲外です。
ガウス積分の応用
ガウス積分の代表的な応用例は,正規分布(ガウス分布)についてのいろいろな計算です。
ガウス積分について知っていれば,ガウス分布の確率密度関数:
の理解が深まります。→正規分布の基礎的なこと
ガウス積分の変形
ガウス積分の積分範囲を半分にした,
という定積分もときどき見かけます。 は偶関数なので積分値が半分になっています。
ガウス積分で,被積分関数に や をかけたものも見かけます:
例えば,正規分布の分散の計算に使えます。
また,多変数のガウス積分の公式もあります: →多変数のガウス積分
置換積分のオンパレードでした
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