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ガウス積分の公式の2通りの証明

更新日時 2021/03/07

ガウス積分とは,以下のような定積分のことです。

eax2dx=πa\displaystyle\int_{-\infty}^{\infty}e^{-ax^2}dx=\sqrt{\dfrac{\pi}{a}}

(ただし a>0a > 0

ガウス積分は,統計学や物理学で登場する有名な定積分の公式です。この記事では, ガウス積分の2通りの証明方法 と, ガウス積分の応用 について詳しく解説します。

目次
  • ガウス積分の証明1:重積分を用いる

  • ガウス積分の証明2:ガンマ関数を用いる

  • ガウス積分の応用

  • ガウス積分の変形

ガウス積分の証明1:重積分を用いる

ガウス積分の証明方法のうち,まずは重積分を用いた方法を解説します。表記は少しゴツイですが,内容は単純です。

方針: π\pi を出現させるために極座標を用います。極座標が使える形にするために最初にあえて二乗します。

証明

ガウス積分の値を II とおく。

I2=eax2dxeay2dy=eax2ay2dxdyI^2=\displaystyle\int_{-\infty}^{\infty}e^{-ax^2}dx\int_{-\infty}^{\infty}e^{-ay^2}dy\\ =\displaystyle\int_{-\infty}^{\infty}\int_{-\infty}^{\infty}e^{-ax^2-ay^2}dxdy

ここで x=rcosθ,y=rsinθx=r\cos\theta,y=r\sin\theta と置換すると,ヤコビアンは rr なので,

I2=002πear2rdθdr=2π0ear2rdr=2π[ear22a]0=πaI^2=\displaystyle\int_{0}^{\infty}\int_{0}^{2\pi}e^{-ar^2}rd\theta dr\\ =2\pi\displaystyle\int_{0}^{\infty}e^{-ar^2}rdr\\ =2\pi\left[\dfrac{e^{-ar^2}}{-2a}\right]_0^{\infty}\\ =\dfrac{\pi}{a}

よって,I=πaI=\sqrt{\dfrac{\pi}{a}}

gauss 注:最初の部分で AB=AB\displaystyle\int A\int B=\displaystyle\int\int AB とできることを用いました。(フビニの定理)これは,シグマの二重和が分解できることの一般形です。シグマ計算を機械的に行うための3つの公式の最後の部分。

注:重積分の変数変換,ヤコビアンに関しては厳密には大学内容が必要です。→ヤコビ行列,ヤコビアンの定義と極座標の例

平面上において rr から r+drr+dr の間にある部分の面積が 2πrdr2\pi rdr と近似できることに由来しています。全平面上で積分する際に rr を固定して θ\theta で積分し,最後に rr で積分します。

ガウス積分の証明2:ガンマ関数を用いる

ガウス積分は,高校数学の範囲内で証明することもできます。

ただし(高校生でも頑張れば理解できるが少し難しい)前提知識として「ガンマ関数とベータ関数の関係」を使います。

参考:ベータ関数の積分公式の下の方を参照してください。

方針:階乗の一般化であるガンマ関数 Γ(x)=0tx1etdt\Gamma(x)=\displaystyle\int_0^{\infty}t^{x-1}e^{-t}dt を利用します。ガンマ関数は直接計算できないので,ベータ関数に変換してから置換積分で計算します。

証明

ガンマ関数の定義より Γ(12)=0ettdt\Gamma(\dfrac{1}{2})=\displaystyle\int_0^{\infty}\dfrac{e^{-t}}{\sqrt{t}}dt

であり,t=ax2t=ax^2 と置換すると,

Γ(12)=0eax2ax2axdx=2a0eax2dx=aI\Gamma(\dfrac{1}{2})=\displaystyle\int_0^{\infty}\dfrac{e^{-ax^2}}{\sqrt{a}x}2axdx\\ =2\sqrt{a}\int_0^{\infty}e^{-ax^2}dx\\ =\sqrt{a}I

一方,ガンマ関数とベータ関数の関係より,

Γ(12)2=Γ(1)β(12,12)=01dxx(1x)\Gamma(\dfrac{1}{2})^2=\Gamma(1)\beta(\dfrac{1}{2},\dfrac{1}{2})=\displaystyle\int_0^1\dfrac{dx}{\sqrt{x(1-x)}}

ここで x=sin2θx=\sin^2\theta と置換すると,

dxdθ=2sinθcosθ\dfrac{dx}{d\theta}=2\sin\theta\cos\theta より,

01dxx(1x)=0π22sinθcosθsinθcosθdθ=π\displaystyle\int_0^1\dfrac{dx}{\sqrt{x(1-x)}}=\displaystyle\int_0^{\tfrac{\pi}{2}}\dfrac{2\sin\theta\cos\theta}{\sin\theta\cos\theta}d\theta=\pi

以上より,

I=1aΓ(12)=πaI=\dfrac{1}{\sqrt{a}}\Gamma(\dfrac{1}{2})\\ =\sqrt{\dfrac{\pi}{a}}

方法1は有名な方法ですが重積分の分解を用いるので, 高校数学の範囲では方法2の方が納得しやすいと思います。

※積分区間が有限でないのでガウス積分は広義積分です。そのため,厳密には高校数学範囲外です。

ガウス積分の応用

ガウス積分の代表的な応用例は,正規分布(ガウス分布)についてのいろいろな計算です。

ガウス積分について知っていれば,ガウス分布の確率密度関数:

f(x)=12πσexp{(xμ)22σ2}f(x)=\dfrac{1}{\sqrt{2\pi}\sigma}\exp\left\{-\dfrac{(x-\mu)^2}{2\sigma^2}\right\}

の理解が深まります。→正規分布の基礎的なこと

ガウス積分の変形

ガウス積分の積分範囲を半分にした,

0eax2dx=12πa\displaystyle\int_{0}^{\infty}e^{-ax^2}dx=\dfrac{1}{2}\sqrt{\dfrac{\pi}{a}}

という定積分もときどき見かけます。 eax2e^{-ax^2} は偶関数なので積分値が半分になっています。

ガウス積分で,被積分関数に xxx2x^2 をかけたものも見かけます:

0xeax2dx=12a\displaystyle\int_0^{\infty}xe^{-ax^2}dx=\dfrac{1}{2a}

x2eax2dx=12aπa\displaystyle\int_{-\infty}^{\infty}x^2e^{-ax^2}dx=\dfrac{1}{2a}\sqrt{\dfrac{\pi}{a}}

例えば,正規分布の分散の計算に使えます。

また,多変数のガウス積分の公式もあります: →多変数のガウス積分

置換積分のオンパレードでした

Tag:正規分布の基礎的な知識まとめ

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