微分を用いた不等式証明の問題

更新日時 2021/03/07
問題

f(x)=(x+12)log(1+1x)1 f(x)=\left(x+\dfrac{1}{2}\right)\log\left(1+\dfrac{1}{x}\right)-1

とおくとき,x1x \geq 1 において

0<f(x)<14x(x+1)0 <f(x) <\dfrac{1}{4x(x+1)} が成立することを示せ。

受験で出てきそうな問題です。やや難問。

ちなみに,この不等式はスターリングの公式の証明で使います(詳しくは→スターリングの公式とその証明)。

左側の不等式の証明

方針

対数関数と1次関数の積なので,2階微分は扱いやすい式(有理式)になることが分かります。多少計算は大変ですが, 見通しが立っているので安心して計算できます。

証明

f(x)=log(1+1x)2x+12x(x+1)f'(x)=\log\left(1+\dfrac{1}{x}\right)-\dfrac{2x+1}{2x(x+1)}

f(x)=12(x2+x)2f''(x)=\dfrac{1}{2(x^2+x)^2}

よって,f(x)>0f''(x) > 0 より f(x)f'(x) は単調増加。

また,limxf(x)=0\displaystyle\lim_{x\to\infty}f'(x)=0 なので

f(x)<0f'(x) <0

よって,f(x)f(x) は単調減少。

あとは limxf(x)0\displaystyle\lim_{x\to\infty}f(x) \geq 0 を示せば良い。

実際,xx\to\inftylog(1+1x)1x\log\left(1+\dfrac{1}{x}\right)\fallingdotseq \dfrac{1}{x} (注)より,

limxf(x)=0\displaystyle\lim_{x\to\infty}f(x)=0

(注)対数関数の x=0x=0 での微分係数から,

limt0log(1+t)t=1\displaystyle\lim_{t\to 0}\dfrac{\log(1+t)}{t}=1

が分かり,t=1xt=\dfrac{1}{x} として示すのがよいでしょう。マクローリン展開を使う手もあります。

このあたりの話は指数関数と対数関数の極限の公式を参照してください。

右側の不等式の証明

方針

右側もほとんど同様にして証明できます。微分を計算するときに分数を使うよりも負の指数を使った方が楽です。

証明

f(x)f(x) の二階微分は求めているので再右辺(の 44 倍): g(x)=1x(x+1)g(x)=\dfrac{1}{x(x+1)} の二階微分を計算する。

g(x)=2x+1(x2+x)2g'(x)=-\dfrac{2x+1}{(x^2+x)^2}

g(x)=6x2+6x+2(x2+x)3g''(x)=\dfrac{6x^2+6x+2}{(x^2+x)^{3}}

よって,最右辺ー中辺: h(x)=14g(x)f(x)h(x)=\dfrac{1}{4}g(x)-f(x) の二階微分は,

(2x+1)2+14(x2+x)3>0\dfrac{(2x+1)^2+1}{4(x^2+x)^3} > 0 となる。

よって,h(x)>0h''(x) > 0 より h(x)h'(x) は単調増加。

また,limxh(x)=0\displaystyle\lim_{x\to\infty}h'(x)=0 なので

h(x)<0h'(x) <0

よって,h(x)h(x) は単調減少。

あとは limxh(x)0\displaystyle\lim_{x\to\infty}h(x) \geq 0 を示せば良いが,

limxf(x)=limxg(x)=0\displaystyle\lim_{x\to\infty}f(x) =\lim_{x\to\infty}g(x)= 0

なので,limxh(x)=0\displaystyle\lim_{x\to\infty}h(x)=0

となりOK。

対数関数は何回か微分してやれば有理式になるので,不等式証明の文脈ではいいやつ。