円に内接する三角形の面積の最大値
定円に内接する三角形の中で,面積が最大のものは正三角形である。
この定理を3通りの方法で証明します!
証明1.微分を使う
証明1.微分を使う
以下,円の半径を ,円の中心を ,三角形の各頂点を とします。
図形的な考察から二等辺三角形であることが分かる → 自由度が1になれば単純な計算問題になる!
を固定したとき,直線 から最も遠くなるように を取ると面積最大になる。このとき,三角形 は の鋭角二等辺三角形。
次に,上記の制約のもと として三角形 の面積 を表す。
の中点を とすると, より,
これを 倍して で微分すると,
よって を変形していくと,
符号に注意すると,
これと, の符号に注意する ( が に近いと , が に近いと かつ は連続) と で面積最大となることが分かる。
このとき が正三角形になることは,簡単に分かる(例えば,正弦定理: より が分かる)。
コメント:発想は難しくありませんが,対称性を崩しているので計算はあまり美しくないです。
証明2.イェンゼンの不等式を使う
証明2.イェンゼンの不等式を使う
いろいろな道具を使って,対称性を崩さない計算で証明します。上級者向けですが,美しいです。
使う道具は, 外接円の半径と三角形の面積の関係,相加相乗平均の不等式,イェンゼンの不等式(凸関数の不等式)です。
と正弦定理より
ここで,相加相乗平均の不等式より
さらに,( は で上に凸なので)イェンゼンの不等式より
以上より
等号成立条件は ,つまり正三角形のとき。
証明3.きわどい証明
証明3.きわどい証明
考え方はシンプルですが,厳密な証明にするためには高校範囲を逸脱してしまいます。
が正三角形でないとき, としても一般性を失わない。このとき が となる鋭角二等辺三角形になるような を円周上に取れば の面積を の面積より大きくできる。
つまり,正三角形でないときは,より面積の大きな三角形を構成できるので,面積を最大にするのは正三角形である(注)。
重要な注:最後の議論では,最大値の存在を仮定しています。
1.正三角形でないときは改善できる
2.最大値が存在する
の両方が言えてはじめて正三角形の場合が最大と言うことができます。最大値が存在することは直感的に当たり前な気もしますが,厳密には「コンパクト集合上の連続関数は最大値を持つ」という大学数学の定理(高校数学で触れる一変数関数の最大値の原理の一般化)が必要になります。
なお,高校数学の問題集 ~最短で得点力を上げるために~ のT185では,関連する問題を紹介しています。
自分は証明2が一番好きです。