指数関数の微分を用いる数オリの応用問題

一変数関数の最小値は,多くの場合微分を用いて求めることができる。

指数関数の微分

まずは一般的な指数関数 y=axy=a^x の微分が

y=axlogay'=a^x\log a

(対数の底はネイピア数 ee です。)

となることに注意しておきます。

また,合成関数の微分公式も使うことで,より複雑な関数:

y=af(x)y=a^{f(x)} の微分が

y=f(x)af(x)logay'=f'(x)a^{f(x)}\log a

となることにも注意しておきます。

このページでは,これらの基本的な公式を用いる応用問題を解説します。

以下で紹介する問題は日本数学オリンピック予選の問題です。難易度は難関大学の入試レベルです。入試対策にもどうぞ。

2005年日本数学オリンピック予選第6問

問題

実数 a,ba,ba+b=17a+b=17 を満たすとき,2a+4b2^a+4^b の最小値を求めよ

まずは本題に入る前に,微分を用いないエレガントな解答を紹介します(おそらくこちらが想定解法です)。

解答1

2a+4b=2a+22b=2a2+2a2+22b322a+2b43=32323=3072432^a+4^b\\ =2^a+2^{2b}\\ =\dfrac{2^a}{2}+\dfrac{2^a}{2}+2^{2b}\\ \geq 3\sqrt[3]{\dfrac{2^{2a+2b}}{4}}\\ =3\sqrt[3]{2^{32}}\\ =3072\sqrt[3]{4}

等号成立条件は 2a2=22b\dfrac{2^a}{2}=2^{2b} のとき,つまり a1=2ba-1=2b

a=353,b=163a=\dfrac{35}{3},b=\dfrac{16}{3} のとき。

三行目で相加相乗平均の不等式を用いました。相加相乗平均の不等式の応用〜関数の最小値を求める〜で紹介したテクニックを知っていればひらめくかもしれませんが,難易度が高いです。

微分を用いた方法

次に微分を用いて機械的に計算する方法です。1変数関数にするために bb を消去します。これなら入試レベルです。

解答2

bb を消去すると目的の関数は,

f(a)=2a+2342af(a)=2^a+2^{34-2a}

となる。この関数の最小値を求めたいので aa で微分する:

f(a)=2alog2+(2)2342alog2=2a(12353a)log2f'(a)=2^a\log 2+(-2)2^{34-2a}\log 2\\ =2^a(1-2^{35-3a})\log 2

これは a<353a <\dfrac{35}{3} で負,a>353a > \dfrac{35}{3} で正なので,f(a)f(a)a=353a=\dfrac{35}{3} で最小値を取る。

実際代入して計算すると,

f(353)=307243f\left(\dfrac{35}{3}\right)=3072\sqrt[3]{4} となる。

指数関数の微分を知っている人なら,こちらの方針の方が簡単に思いつくでしょう。

「思いつきにくいエレガントな解法」よりも「思いつきやすい愚直な解法」を重視した方が得点はアップします。

数オリ予選で微分はいるのか

数学オリンピックの問題は基本的に微分など数3Cの知識を用いないで解けるように設定されています。

しかし,特にJMOの予選では

・微分を用いないエレガントな解法(想定解法)

だけでなく

・微分を用いて愚直に計算する方法

で突破できる問題がしばしば出題されます(例えば上記の例以外にも2002JMO予選問6など)。

そして,前者はひらめきが必要ですが,後者は計算するだけなので簡単です。

つまり,微分を知らなくても数オリ突破は目指せるが,微分を知っていたほうがより有利であると言えます。

ちなみに数オリで積分を知っていて役立つことはほとんどありません。

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