オイラーの定理とその証明〜外心と内心の距離を求める〜
内心と外心の距離を求める公式です。
内接円の半径を ,外接円の半径を とおくとき,外心 と内心 との距離 は以下の式で表される:
非常に美しい定理です。
オイラーの定理について
オイラーの定理(初等幾何)の証明
オイラーの定理の計算による証明
ベクトルを用いたオイラーの定理の証明
オイラーの定理について
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オイラーの定理と呼ばれる定理はいくつもあります。この定理は,オイラー・チャップルの定理と呼ばれることもあります。
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定理自体はとても美しいですが,実際に使うことはまずありません。
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ただし,以下の初等幾何による証明はエレガントで,覚える価値は十分にあります。数学好きの方はよい練習になるので,以下の証明を見ずに自力で考えてみてください!
以下では,オイラーの定理の証明をいくつか解説します。
オイラーの定理(初等幾何)の証明
まずは初等幾何のみによる証明です。
図で は と外接円の交点, は と外接円の交点, は と内接円の接点, と は と外接円の交点である。
この式を整理するとオイラーの定理を得る。ただし,
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(1)への変形は,方べきの定理から
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(2)への変形は,
より から -
(3)への変形は,△ と△ が以下の理由より相似だから
- 円周角の定理から
- 内心,外心の定義から も も直角
トリリウムの定理(余談)
(2) への変形で を使いましたが,これは有名な定理です。より強く, は を中心とする同一円周上にあるという定理(トリリウムの定理)が成立します。ただし, は三角形 の傍心のうち直線 上にあるものです。
トリリウムの定理の証明は,以下のようにできます:
- は上記で証明した
- 対称性から
- さらに,同様な角度に関する議論から もわかる
オイラーの定理の計算による証明
上記の方法は技巧的なので補足します。
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まず,(1)から(2)への変形の部分: は頻繁に使うので覚えておくとよいでしょう。
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(2)までたどりついたときに三角形の相似に気がつくのも難しいです。そこで, と の長さを気合いで計算することでも証明できます。
ベクトルを用いたオイラーの定理の証明
内心の位置ベクトルの公式を知っていれば, は簡単に計算できます!→三角形の五心の覚えておくべき性質の整理の内心の部分参照。
内心の位置ベクトルの公式より,
次に長さを計算するために長さと内積を求める。
および,
と のなす角が であることから, などが分かる。
よって,
ここで,倍角の公式と正弦定理を用いて角の情報を辺の情報に変換する:
などより,
- 分子の前半二項をまとめると となる
- 最終項については, および (→外接円の半径と三角形の面積の関係)より,
以上から となり,オイラーの定理が示された。
ベクトルによる方法はいくつか前提知識が必要ですが,思いつきやすいです。
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