オイラーの定理とその証明〜外心と内心の距離を求める〜

更新日時 2021/03/07

内心と外心の距離を求める公式です。

(初等幾何における)オイラーの定理

内接円の半径を rr,外接円の半径を RR とおくとき,外心 OO と内心 II との距離 dd は以下の式で表される:

d2=R22Rrd^2=R^2-2Rr

非常に美しい定理です。

目次
  • オイラーの定理について

  • オイラーの定理(初等幾何)の証明

  • オイラーの定理の計算による証明

  • ベクトルを用いたオイラーの定理の証明

オイラーの定理について

  • オイラーの定理と呼ばれる定理はいくつもあります。この定理は,オイラー・チャップルの定理と呼ばれることもあります。

  • 定理自体はとても美しいですが,実際に使うことはまずありません。

  • ただし,以下の初等幾何による証明はエレガントで,覚える価値は十分にあります。数学好きの方はよい練習になるので,以下の証明を見ずに自力で考えてみてください!

以下では,オイラーの定理の証明をいくつか解説します。

オイラーの定理(初等幾何)の証明

まずは初等幾何のみによる証明です。

証明

オイラーの定理の証明

図で MMAIAI と外接円の交点,DDOMOM と外接円の交点,NNABAB と内接円の接点,PPQQOIOI と外接円の交点である。

(Rd)(R+d)PI×IQAI×IM・・・(1AI×BM・・・(2DM×NI・・・(32Rr(R-d)(R+d) =PI×IQ\\ =AI×IM・・・(1)\\ =AI×BM・・・(2)\\ =DM×NI・・・(3)\\ =2Rr

この式を整理するとオイラーの定理を得る。ただし,

  • (1)への変形は,方べきの定理から

  • (2)への変形は,
    BIMBAMABIMACIBCMBCIBCIBM∠BIM=∠BAM+∠ABI\\=∠MAC+∠IBC\\=∠MBC+∠IBC=∠IBM
    より IM=BMIM=BM から

  • (3)への変形は,△ ANIANI と△ DBMDBM が以下の理由より相似だから

    • 円周角の定理から NAIBDM∠NAI=∠BDM
    • 内心,外心の定義から ANI∠ANIDBM∠DBM も直角

トリリウムの定理(余談)

(2) への変形で IM=BMIM=BM を使いましたが,これは有名な定理です。より強く,I,B,C,IAI,B,C,I_AMM を中心とする同一円周上にあるという定理(トリリウムの定理)が成立します。ただし,IAI_A は三角形 ABCABC の傍心のうち直線 AIAI 上にあるものです。

トリリウムの定理の証明は,以下のようにできます:

  • IM=BMIM=BM は上記で証明した
  • 対称性から IM=CMIM=CM
  • さらに,同様な角度に関する議論から BM=IAMBM=I_AM もわかる

オイラーの定理の計算による証明

上記の方法は技巧的なので補足します。

  • まず,(1)から(2)への変形の部分: IM=BMIM=BM は頻繁に使うので覚えておくとよいでしょう。

  • (2)までたどりついたときに三角形の相似に気がつくのも難しいです。そこで,AIAIBMBM の長さを気合いで計算することでも証明できます。

証明

AI×BM=2RrAI\times BM=2Rr を証明する。

三角形の五心と頂点までの距離の公式より,AI=4RsinB2sinC2AI=4R\sin\dfrac{B}{2}\sin\dfrac{C}{2}

また,三角形 OBMOBM に注目すると,BM=2RsinA2BM=2R\sin\dfrac{A}{2}

よって,AI×BM=8R2sinA2sinB2sinC2AI\times BM=8R^2\sin\dfrac{A}{2}\sin\dfrac{B}{2}\sin\dfrac{C}{2}

さらに,外接円の半径と内接円の半径の関係r=4RsinA2sinB2sinC2r=4R\sin\dfrac{A}{2}\sin\dfrac{B}{2}\sin\dfrac{C}{2} を用いると AI×BM=2RrAI\times BM=2Rr が分かる。

ベクトルを用いたオイラーの定理の証明

内心の位置ベクトルの公式を知っていれば,OIOI は簡単に計算できます!→三角形の五心の覚えておくべき性質の整理の内心の部分参照。

証明

内心の位置ベクトルの公式より,OIundefined=aOAundefined+bOBundefined+cOCundefineda+b+c\overrightarrow{OI}=\dfrac{a\overrightarrow{OA}+b\overrightarrow{OB}+c\overrightarrow{OC}}{a+b+c}

次に長さを計算するために長さと内積を求める。

OAundefined=OBundefined=OCundefined=R|\overrightarrow{OA}|=|\overrightarrow{OB}|=|\overrightarrow{OC}|=R および,

OAundefined\overrightarrow{OA}OBundefined\overrightarrow{OB} のなす角が 2C2C であることから,OAundefinedOBundefined=R2cos2C\overrightarrow{OA}\cdot\overrightarrow{OB}=R^2\cos 2C などが分かる。

よって,OIundefined2=(a2+b2+c2)R2+2R2(abcos2C+bccos2A+cacos2B)(a+b+c)2|\overrightarrow{OI}|^2=\dfrac{(a^2+b^2+c^2)R^2+2R^2(ab\cos 2C+bc\cos 2A+ca\cos 2B)}{(a+b+c)^2}

ここで,倍角の公式と正弦定理を用いて角の情報を辺の情報に変換する:

2R2cos2C=R2(24sin2C)=2R2c22R^2\cos 2C=R^2(2-4\sin^2 C)=2R^2-c^2

などより,

OIundefined2=(a2+b2+c2)R2+2R2(ab+bc+ca)abc(a+b+c)(a+b+c)2|\overrightarrow{OI}|^2=\dfrac{(a^2+b^2+c^2)R^2+2R^2(ab+bc+ca)-abc(a+b+c)}{(a+b+c)^2}

  • 分子の前半二項をまとめると (a+b+c)2R2(a+b+c)^2R^2 となる
  • 最終項については,S=r2(a+b+c)S=\dfrac{r}{2}(a+b+c) および S=abc4RS=\dfrac{abc}{4R}→外接円の半径と三角形の面積の関係)より,
    abca+b+c=4RSr2S=2Rr\dfrac{abc}{a+b+c}=4RS\cdot\dfrac{r}{2S}=2Rr

以上から OIundefined2=R22Rr|\overrightarrow{OI}|^2=R^2-2Rr となり,オイラーの定理が示された。

ベクトルによる方法はいくつか前提知識が必要ですが,思いつきやすいです。

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