単調増加・単調減少の意味と覚えておくべき性質

関数および数列の単調増加単調減少について,定義・具体例・関連する性質を紹介します。

単調増加・単調減少の意味

関数 y=f(x)y=f(x) について,

  • xx が増えれば yy も増えるとき,その関数は単調増加と言います。
  • グラフが右上がりになるような関数です。
  • 式で書くと,
    x1<x2x_1 < x_2 ならば f(x1)f(x2)f(x_1)\leq f(x_2)
    を満たすような関数です。

単調増加・減少の意味

単調減少も同様です。

  • xx が増えれば yy が減るとき,その関数は単調減少と言います。
  • グラフが右下がりになるような関数です。
  • 式で書くと,
    x1<x2x_1 < x_2 ならば f(x1)f(x2)f(x_1)\geq f(x_2)
    を満たすような関数です。
例1

y=2xy=2x という関数は,xx が増えると yy も増えるので単調増加

広義と狭義

より正確には,単調増加には「広義」と「狭義」の2種類があります。

  • 広義単調増加: x1<x2x_1 < x_2 ならば f(x1)f(x2)f(x_1)\leq f(x_2)
  • 狭義単調増加: x1<x2x_1 < x_2 ならば f(x1)<f(x2)f(x_1)<f(x_2)

等号を含むかどうかの違いです。広義は「広い意味」→「等号も増加とみなす」という立場です。狭義は「狭い意味」→「等号は増加とみなさない」という立場です。

  • 「広義」「狭義」を省略して,単に「単調増加」「単調減少」と言うことも多いです。文脈からどちらを表すのか判断する必要があります。
  • 広義単調増加は「単調非減少」と言うこともあります。

減少についても同様です。

例2

y=2xy=2x という関数は,x1<x2x_1 < x_2 ならば f(x1)<f(x2)f(x_1)<f(x_2) を満たすので狭義単調増加。

例3

y=3y=3 などの定数関数は,x1<x2x_1 < x_2 ならば f(x1)f(x2)f(x_1)\leq f(x_2) を満たすので広義単調増加。ただし,狭義単調増加ではない。同様に,広義単調減少でもあるが,狭義単調減少ではない。

考えている区間による

関数の単調性は,考えている区間によります。

例4

y=x2y=x^2 という関数について考える。

  • 実数全体では,単調増加でも単調減少でもない。
  • x0x\geq 0 の範囲では単調増加
  • x0x\leq 0 の範囲では単調減少

単調増加・減少の例

ここまでの内容をふまえて,単調増加についてきちんと定義を述べておきます。

単調増加の定義

関数 y=f(x)y=f(x) と区間 II について,

  • 任意の x1,x2Ix_1,x_2\in I に対して,x1<x2x_1 < x_2 ならば f(x1)f(x2)f(x_1)\leq f(x_2) を満たすとき,y=f(x)y=f(x) は区間 II広義単調増加という。

  • 任意の x1,x2Ix_1,x_2\in I に対して,x1<x2x_1 < x_2 ならば f(x1)<f(x2)f(x_1)< f(x_2) を満たすとき,y=f(x)y=f(x) は区間 II狭義単調増加という。

減少についても同様です。

数列の単調増加,単調減少

ここまでは関数について考えましたが,数列 {an}\{a_n\} についても同様です。

  • nn が増えれば ana_n が増えるとき,その数列は単調増加と言います。
  • 式で書くと(考えている区間で)n1<n2n_1 < n_2 ならば an1an2a_{n_1}\leq a_{n_2} を満たすとき,ana_n は(その区間内で)広義単調増加,と言います。

数列の広義単調減少,狭義単調増加,狭義単調減少も同様に定義されます。

単調増加・単調減少に関連する性質

単調増加に関連する性質を紹介します。減少についても同様です。性質2までは確実に覚えておきましょう。

性質1(微分と単調性)

区間 II で微分可能な関数 y=f(x)y=f(x) について,

  • 区間 II 内の任意の xx についてf(x)>0f'(x)>0 なら,f(x)f(x) は狭義単調増加
  • 区間 II 内の任意の xx についてf(x)<0f'(x)<0 なら,f(x)f(x) は狭義単調減少

つまり,導関数がプラスなら増加,マイナスなら減少というわけです。微分係数が接線の傾きを表していることを考えれば納得できる事実ですが,一応証明しておきましょう。

性質1の証明

区間 II 内の x1,x2x_1,x_2 について x1<x2x_1<x_2 のとき,平均値の定理より,

f(x2)f(x1)=f(c)(x2x1)f(x_2)-f(x_1)=f'(c)(x_2-x_1)

を満たす ccx1<c<x2x_1<c<x_2 の範囲に存在する。よって,

  • 区間 II 内で微分がプラスなら f(c)>0f'(c)>0 なので,f(x2)f(x1)>0f(x_2)-f(x_1) > 0,つまり f(x)f(x) は狭義単調増加
  • 区間 II 内で微分がマイナスなら f(c)<0f'(c)<0 なので,f(x2)f(x1)<0f(x_2)-f(x_1) < 0,つまり f(x)f(x) は狭義単調減少
性質2(逆関数と単調性)

(考えている区間において)y=f(x)y=f(x) が狭義単調増加なら y=f(x)y=f(x) には逆関数が存在する。

狭義単調増加なら,f(x1)=f(x2)f(x_1)=f(x_2) となる相異なる x1,x2x_1,x_2 は存在しません(単射)。よって,逆関数を考えることができます。→逆関数の3つの定義と使い分け

同じく,狭義単調減少でも逆関数が存在します。

性質3(収束と単調性)
  • 上に有界で(広義)単調増加な数列は収束する
  • 下に有界で(広義)単調減少な数列は収束する

これは実数の公理の1つと考えることもできますし,定理と考えることもできます。例えば自然対数の底(ネイピア数)の定義:収束することの証明に登場します。

ちなみに,広義積分という概念もあります(狭義積分とはあまり言わない気がします)。