逆関数の3つの定義と使い分け
逆関数には3つの定義(特徴付け)が存在します。このページでは,逆関数について,3つの特徴を意識しつつ,基礎から詳しく解説します。
逆関数とは
逆関数の3つの姿
逆関数の例
逆関数の様々な性質
逆関数の3つの定義の比較
逆関数とは
1. 逆関数とは,ある関数に対して「もとにもどす」関数のことです。
例えば, という関数は, を に, を に, ,するような関数です。よって,もとにもどす関数は, を に, を に, ,するような関数です。
2. 逆関数の計算: を について解き となったときの が逆関数です。
例えば, の逆関数を計算してみましょう。 を について解くと なので,逆関数は となります。 を に, を に, ,するような関数になっています。
3. ある関数のグラフと,その逆関数のグラフは, に関して対称になります。
例えば, のグラフと,その逆関数 のグラフは, に関して対称です。 を折り紙の折り目だと思って折ると,2つのグラフは重なります。
逆関数の3つの姿
上記の逆関数の説明1, 2, 3はいずれも逆関数の定義と考えることができます。
- ある関数に対して「もとにもどす」関数を逆関数と呼ぶ。
2. を について解き となったとき, を の逆関数と呼ぶ。
3. に関して対称なグラフを逆関数と呼ぶ。
この3つが同じものを表しているということを確認しておきます。
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1と2が同値であること 1の「もとにもどす操作」はもとの関数の式で と を交換したものと一致するので,1と2は同じものを表しています。
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2と3が同値であること 上の点 を に関して折り返すと となります。この点は 上にあります。
逆関数の例
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の逆関数は, のもとで です。
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の逆関数は, です。
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三角関数の逆関数については逆三角関数の重要な性質まとめに記載しています。
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の逆関数は です。有名な逆関数です。計算は双曲線関数にまつわる重要な公式まとめに記載しています。これを利用して, のグラフの概形を書くことができます。直接微分して概形を描こうとすると結構めんどうですが,その逆関数 のグラフの概形は簡単にかけるので,それを に関して折り返せばよいです。
逆関数の様々な性質
逆関数の重要な性質を3つ紹介します。
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逆関数は, となる が存在しない場合にのみ定義できます。 これは1で理解するのがよいでしょう。つまり,行き先が一致するような異なる2点がある場合「もとにもどす操作」はどちらにもどせばよいのか分からないので逆関数は定義できません。難しい言葉を使えば「逆関数は単射の場合にしか定義できない」と言うこともできます。
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逆関数の定義域,値域はもとの関数の値域と定義域になります。 これも1で理解すれば当たり前の性質です。
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逆関数の逆関数はもとの関数です。 これは1か3で理解すれば当たり前の性質です。
逆関数の3つの定義の比較
今までの説明をもとに,逆関数の3つの姿のメリット,デメリットを挙げてみます。
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1「もとにもどす」 メリット:定義域や値域が明確に分かる。(単射なら)どんな関数でも使える。 デメリット:抽象的なので具体的な式やグラフの形が分からない。
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2「 について解く」 メリット:実際に逆関数の関数形をきちんと与えることができる。 デメリット: について解ける場合しか使えない。
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3「グラフによる定義」 メリット:グラフを使うのでイメージしやすい。 デメリット:グラフが簡単に描ける場合しか使えない。
特に大学数学では,1つの概念を様々な角度から理解しておくことが非常に重要になってきます。