逆関数の3つの定義と使い分け
このページでは逆関数について,基礎からわかりやすく解説します。
逆関数とは
逆関数とは
逆関数とは,ある関数に対して「もとにもどす」関数のこと
という関数の逆関数を求めよ。
この関数は「 を に」「 を に」…するような関数。つまり「3倍する」関数。
もとにもどす関数は「 を に」「 を に」…するような関数。つまり「 倍する」関数。式で書くと
逆関数の求め方
逆関数の求め方
逆関数を求めるとき「もとにもどす操作」を毎回考えるのは大変です。
実は, の逆関数は,以下の性質1を使って計算できます。
を について解いて となったときの が の逆関数。つまり, と を交換したら逆関数
という関数の逆関数を求めよ。
を について解くと なので,逆関数は と を交換して となる。
逆関数のグラフ
逆関数のグラフ
ある関数のグラフと,その逆関数のグラフは, に関して対称になる。
例えば, のグラフと,その逆関数 のグラフは, に関して対称です。
を折り紙の折り目だと思って折ると,2つのグラフは重なります。
逆関数のいろいろな例
逆関数のいろいろな例
-
の逆関数は, のもとで です。
-
の逆関数は, です。
-
三角関数の逆関数については逆三角関数(Arcsin,Arccos,Arctan)の意味と性質に記載しています。
-
の逆関数は です。有名な逆関数です。計算は双曲線関数(sinh,cosh,tanh)の意味・性質・楽しい話題まとめに記載しています。これを利用して, のグラフの概形を書くことができます。直接微分して概形を描こうとすると結構めんどうですが,その逆関数 のグラフの概形は簡単にかけるので,それを に関して折り返せばよいです。
逆関数の3つの姿
逆関数の3つの姿
ここまで,「逆関数の定義」と「性質1」「性質2」を紹介してきましたが,実はこの3つのいずれも逆関数の定義と考えることができます。
-
ある関数に対して「もとにもどす」関数を逆関数と呼ぶ。
-
を について解き となったとき, を の逆関数と呼ぶ。
-
に関して対称なグラフを逆関数と呼ぶ。
この3つが「同じ定義」であることを確認しておきます。
- 1と2が同値であることの説明:
1の「もとにもどす操作」はもとの関数の式で と を交換したものと一致するので,1と2は同じものを表しています。 - 2と3が同値であることの説明:
上の点 を に関して折り返すと となります。この点は 上にあります。
3つの定義のメリット,デメリット
- 1「もとにもどす」
メリット:定義域や値域が明確に分かる。(単射なら)どんな関数でも使える。
デメリット:抽象的なので具体的な式やグラフの形が分からない。 - 2「 について解く」
メリット:実際に逆関数の関数形をきちんと与えることができる。
デメリット: について解ける場合しか使えない。 - 3「グラフによる定義」
メリット:グラフを使うのでイメージしやすい。
デメリット:グラフが簡単に描ける場合しか使えない。
逆関数のいろいろな性質
逆関数のいろいろな性質
逆関数の重要な性質を3つ紹介します。
-
逆関数は, となる が存在しない場合にのみ定義できます。 これは1で理解するのがよいでしょう。つまり,行き先が一致するような異なる2点がある場合「もとにもどす操作」はどちらにもどせばよいのか分からないので逆関数は定義できません。難しい言葉を使えば「逆関数は単射の場合にしか定義できない」と言うこともできます。
-
逆関数の定義域,値域はもとの関数の値域と定義域になります。 これも1で理解すれば当たり前の性質です。
-
逆関数の逆関数はもとの関数です。 これは1か3で理解すれば当たり前の性質です。
特に大学数学では,1つの概念を様々な角度から理解しておくことが非常に重要になってきます。