双曲線関数(sinh,cosh,tanh)の意味・性質・楽しい話題まとめ

双曲線関数

双曲線関数と呼ばれる重要な関数 cosh,sinh,tanh\cosh,\sinh,\tanh が以下の式で定義される:

  • coshx=ex+ex2\cosh x=\dfrac{e^x+e^{-x}}{2}
  • sinhx=exex2\sinh x=\dfrac{e^x-e^{-x}}{2}
  • tanhx=sinhxcoshx=exexex+ex\tanh x=\dfrac{\sinh x}{\cosh x}=\dfrac{e^x-e^{-x}}{e^x+e^{-x}}

双曲線関数に関する知識を整理しました。

双曲線関数とは

指数関数 exe^x をもとに定義される以下の関数を双曲線関数と言います。

  • coshx=ex+ex2\cosh x=\dfrac{e^x+e^{-x}}{2}
  • sinhx=exex2\sinh x=\dfrac{e^x-e^{-x}}{2}
  • tanhx=sinhxcoshx=exexex+ex\tanh x=\dfrac{\sinh x}{\cosh x}=\dfrac{e^x-e^{-x}}{e^x+e^{-x}}

双曲線関数は高校数学では習いません。しかし双曲線関数を背景とした大学入試問題は複数あり,双曲線関数の定義と基本的な性質を知っていれば見通しがよくなることがあります。例えば,高校数学の問題集 ~最短で得点力を上げるために~ のT195では,そのような問題を紹介しています。

  • cosh\cosh の読み方は「ハイパボリックコサイン」です。「コッシュ」と言う人もいます。
  • sinh\sinh の読み方は「ハイパボリックサイン」です。「シャイン」と言う人もいます。
  • tanh\tanh の読み方は「ハイパボリックタンジェント」です。

双曲線関数のグラフ

双曲線関数のグラフの概形は覚えておくとよいです。 双曲線関数のグラフ

  • y=coshxy=\cosh x のグラフは紫です。coshx=cosh(x)\cosh x=\cosh(-x) なので偶関数です。x=0x=0 で最小値 11 を取ります(相加相乗平均の不等式より,ex+ex2e^x+e^{-x}\geq 2

  • y=sinhxy=\sinh x のグラフは赤です。sinhx=sinh(x)\sinh x=-\sinh (-x) なので奇関数です。

  • y=tanhxy=\tanh x のグラフは緑です。奇関数です。極限は,x+x\to +\inftytanhx1\tanh x\to 1 です。

双曲線関数の相互関係

双曲線関数について,以下の関係式が成立します!

  • cosh2xsinh2x=1\cosh^2 x-\sinh^2 x=1
  • 1tanh2x=1cosh2x1-\tanh^2 x=\dfrac{1}{\cosh^2x}
  • 11tanh2x=1sinh2x1-\dfrac{1}{\tanh^2x}=-\dfrac{1}{\sinh^2 x}

いずれも簡単な計算で確認できます。三角関数の相互関係と非常に似ています! このように,三角関数の性質と双曲線関数の性質は非常に似ています(符号が少し異なるだけ)。

また,1つめの式から,(coshx,sinhx)(\cosh x,\sinh x) は直角双曲線 X2Y2=1X^2-Y^2=1 上にあることがわかります。双曲線関数と呼ばれるゆえんです。

ちなみに,三角関数の加法定理に似た関係式も成立します。→双曲線関数の加法定理とその証明

双曲線関数の微分・積分

  • (coshx)=sinhx(\cosh x)^{\prime}=\sinh x
  • (sinhx)=coshx(\sinh x)^{\prime}=\cosh x,
  • (tanhx)=1cosh2x(\tanh x)^{\prime}=\dfrac{1}{\cosh^2 x}

微分公式も三角関数に似ています。coshx\cosh x の微分でマイナスがつかない点だけ注意が必要です。

また,微分をもとにマクローリン展開できます。→双曲線関数(sinh,cosh,tanh)のマクローリン展開を3通りの方法で計算

  • coshxdx=sinhx+C\displaystyle\int \cosh xdx=\sinh x+C
  • sinhxdx=coshx+C\displaystyle\int \sinh xdx=\cosh x+C
  • tanhxdx=log(coshx)+C\displaystyle\int \tanh xdx=\log(\cosh x)+C

積分公式も三角関数と似ています。tanxdx=logcosx+C\displaystyle\int\tan x dx=-\log|\cos x|+C でしたが,coshx>0\cosh x>0 なので tanhx\tanh x の積分中に絶対値は不要です。

双曲線関数の逆関数

双曲線関数の逆関数を背景とした問題も入試問題で頻出です。逆関数の導出方法を覚えておきましょう。

定理
  • y=sinhxy=\sinh x の逆関数は y=log(x+x2+1)y=\log(x+\sqrt{x^2+1})
  • y=coshxy=\cosh x の逆関数は y=log(x±x21)y=\log(x\pm\sqrt{x^2-1}) ,(特にプラスの符号を採用して議論の対象を第一象限に限定することが多い)
  • y=tanhxy=\tanh x の逆関数は y=12log1+x1xy=\dfrac{1}{2}\log\dfrac{1+x}{1-x}
証明

y=sinhx=exex2y=\sinh x=\dfrac{e^x-e^{-x}}{2}xx について解く。まずは式を整理する: e2x2yex1=0 e^{2x}-2ye^x-1=0

これは exe^x についての2次方程式なので解の公式より,

ex=y±y2+1 e^x=y\pm \sqrt{y^2+1}

ex>0e^x>0 より+側を採用して逆関数の表式を得る。

同様に,y=coshx=ex+ex2y=\cosh x=\dfrac{e^x+e^{-x}}{2}exe^x について解くと,

ex=y±y21e^x=y\pm \sqrt{y^2-1} となり,求める表式を得る。

tanhx\tanh x の逆関数の導出と,関連する入試問題を双曲線関数(sinhx, coshx, tanhx)の逆関数で紹介しています。

双曲線関数にまつわる積分公式

dxx2+a=log(x+x2+a)+C(a>0)\displaystyle\int \dfrac{dx}{\sqrt{x^2+a}}=\log(x+\sqrt{x^2+a})+C\:(a>0)

この積分は覚えていないと非常に難しいです。難関大学を受験する人はこの公式を丸ごと覚えておくとよいです。

右辺を微分したら左辺と一致することが確認できるので,証明自体は簡単です。

ここでは,より一般に双曲線関数を用いた置換積分の手筋を紹介します。

x2+A2x^2+A^2 というかたまりを含む積分は x=Asinhyx=A\sinh y と置換するとうまくいくことが多い。

高校数学では x=atanyx=a\tan y と置換するのが一般的ですが,それでも解けない場合は sinh\sinh による置換を試すと解けるかもしれません。実際上記の積分公式は sinh\sinh による置換を用いて以下のように導けます。

積分公式の導出

x=asinhyx=\sqrt{a}\sinh y と置換すると,

x2+a=a(1+sinh2y)=acosh2y\begin{aligned} x^2+a &= a(1+\sinh^2 y)\\ &= a\cosh^2 y \end{aligned}

dxdy=acoshy \dfrac{dx}{dy}=\sqrt{a}\cosh y より,

dxx2+a=coshydycoshy=y+C \int \dfrac{dx}{\sqrt{x^2+a}}= \int \dfrac{\cosh ydy}{\cosh y}=y+C

ここで,さきほど示したハイパボリックサインの逆関数の公式を用いて

y=log(xa+x2a+1)=log(x+x2+a)+C\begin{aligned} y&=\log\left(\dfrac{x}{\sqrt{a}}+\sqrt{\dfrac{x^2}{a}+1}\right)\\ &=\log(x+\sqrt{x^2+a})+C^{\prime} \end{aligned}

となる。

ちなみに,sinh\sinh による置換を使うと不定積分 x2+a2dx\displaystyle\int\sqrt{x^2+a^2}dx も計算できます。→ルートx^2+a^2の積分計算の2通りの方法

関連する楽しい話題

シャインっていうならコッシュよりもコチャインって言いたいです。

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