懸垂線の2通りの導出
ひもの両端を手で持ってたらした曲線の式は この曲線を懸垂線またはカテナリーと呼ぶ。
懸垂線に関する入試問題はたまに出題されます。懸垂線の知っておくべき性質と導出を紹介します。
懸垂線の有名な性質
懸垂線の有名な性質
微分方程式を用いた導出
微分方程式を用いた導出
ひもの両端を手で持ってたらした曲線の式が になることを2通りの方法で導出します。
まずは,微分方程式を使う方法です。微分方程式は高校範囲外ですが,数3まで知っていれば以下の導出はなんとなく理解できると思います。
長いひもの一部 の区間を考える。両端にかかる張力を ,ひもにかかる重力を , でのひもの角度を とおく。
は によらない定数なので(注),力の釣り合いから以下の式が成立する:
よって,
ここで, は線の長さ に比例するので, ( は定数)と書ける。
注:もし を にしたときに が に変化してしまうと,ひもの から の部分に関して水平方向の釣り合いが成り立ちません。なぜなら,その部分では左側に の力が,右側には の力がかかるからです。よって, は によらず定数です。
より,
よって,
左辺の積分計算がめんどうなので詳細は省略するが,両辺積分して整理すると,
(境界条件は で )
同様に,
から,
の両辺を積分して
以上2式より を消去すれば懸垂線の式が得られる。
微分方程式を解く部分は,変数分離形の微分方程式の解法と例題 を知っていると理解しやすいです。
変分法を用いた導出
変分法を用いた導出
こちらの証明方法は高校範囲では理解できないかもしれません。大学の数学で習う「変分法」という汎関数の値を停留させる関数を求める手法を用います。
ひもに蓄えられた位置エネルギーは以下の式で表される:
よって, とおいてオイラーラグランジュ方程式を用いるのが筋。
ただし, は を含まないので,ベルトラミの公式 が使える:
上式を整理する:
よって,この式を積分することにより,懸垂線の一般式が得られる:
特に, 軸対称な場合が重要で,そのときには積分定数は となり,目標の式を得る。
懸垂線の弧長
懸垂線の弧長