変数分離形の微分方程式の解法と例題

変数分離形

変数分離形

変数分離形の微分方程式とは,
dydx=p(x)q(y)\dfrac{dy}{dx}=p(x)q(y)
のように,dydx=\dfrac{dy}{dx}=(xx の関数)×(yy の関数)と表せる微分方程式のこと。

微分方程式の最も基本的なパターンの一つ変数分離形微分方程式について解説します。数検1級や大学の期末試験でも頻出です。

変数分離形の微分方程式について

  • 微分方程式とは,大雑把に言うと,dydx=2xy2\dfrac{dy}{dx}=2xy^2 のように,関数 yy と,その導関数(高階導関数も含む)が含まれているような関数方程式です。

  • 微分方程式の中でも,変数分離形は「簡単に解ける」かつ「多くの微分方程式が変数分離形に帰着できる」のでとても大事です。

  • dydx=x2(y2+5y)\dfrac{dy}{dx}=x^2(y^2+5y)
    は,右辺が「xx の関数(x2x^2)」と「yy の関数(y2+5yy^2+5y)」の積なので変数分離形

  • dydx=y\dfrac{dy}{dx}=y
    は,右辺が「xx の関数(11)」と「yy の関数(yy)」の積なので変数分離形

注:最後の例のように「xx の関数」の部分が 11 である場合が頻出です。例えば,後述する空気抵抗がある場合の自由落下など,物理でも登場します)。

変数分離形の解法と例題

変数分離形の微分方程式の解き方を説明します。

変数分離形の解き方

dydx=p(x)q(y)\dfrac{dy}{dx}=p(x)q(y) という微分方程式は,以下の2ステップで解ける。

  1. 1q(y)dydx=p(x)\dfrac{1}{q(y)}\dfrac{dy}{dx}=p(x) と変形する

  2. 両辺を xx で積分する:1q(y)dydxdx=p(x)dx\displaystyle\int \dfrac{1}{q(y)}\dfrac{dy}{dx}dx=\displaystyle\int p(x)dx

左辺は置換積分の公式により 1q(y)dy\displaystyle\int \dfrac{1}{q(y)}dy と等しい。よって両辺ともに普通に積分すればよい。

例題1

微分方程式 dydx=y(x)\dfrac{dy}{dx}=y(x) を解け。ただし,x=0x=0 のとき y=1y=1 とする。

解答

1ydydx=1\dfrac{1}{y}\dfrac{dy}{dx}=1 と変形し,両辺を xx で積分すると,

1ydydxdx=1dx\displaystyle\int\dfrac{1}{y}\dfrac{dy}{dx}dx=\displaystyle\int 1dx

logy=x+C\log |y|=x+C

y=ex+Cy=e^{x+C}

x=0x=0 のとき y=1y=1 より,C=0C=0,よって答えは y=exy=e^x

例題2

y=2xy2y'=2xy^2 を満たす xx の(微分可能な)関数 yy を求めよ。さらに,このような関数の中で x=0x=0 のとき y=1y=-1 であるようなものを求めよ。

解答

これは変数分離形の微分方程式である。両辺を y2y^2 で割る(y=0y=0 という関数は明らかに解であるのでそれ以外の解を求める&注参照)と,

yy2=2x\dfrac{y'}{y^2}=2x

両辺を xx で積分すると,

dyy2=2xdx\displaystyle\int \dfrac{dy}{y^2}=\displaystyle\int 2x dx

よって積分定数を CC として,1y=x2+C-\dfrac{1}{y}=x^2+C

つまり, y=1x2+Cy=-\dfrac{1}{x^2+C}

xx の連続関数となるには C>0C > 0 が必要。

さらに,x=0x=0 のとき y=1y=-1 となる場合は,1=1C-1=-\dfrac{1}{C} となるので C=1C=1

つまり求める関数は, y=1x2+1y=-\dfrac{1}{x^2+1}

注(追記):厳密には「yy0000 以外も取りうる関数」を排除する必要があります。 これを厳密に行うには「(初期値問題の)微分方程式の解の一意性」という大学で習う難しい定理が必要になります(y=0y=0 という解があることと,解の一意性より「yy0000 以外も取りうる関数」は存在しない)。

物理の例題(空気抵抗がある場合の自由落下)

変数分離形微分方程式のさらなる応用例として,空気抵抗がある場合の自由落下を表す方程式を解いてみます。

例題3

mdvdt=mgkvm\dfrac{dv}{dt}=mg-kv

を満たす tt の関数 vv を求めよ。ただし,t=0t=0 のとき v=0v=0 とする。

vv は物体の速さ,tt は時刻,m,g,km,g,k は定数です。(mm は質量,gg は重力加速度,kk は空気抵抗の強さを表す定数)

解答

左辺に tt は登場せず vv のみの関数であるので変数分離形である。

よって,両辺を mgkvmg-kv で割って(注),

mmgkvdvdt=1\dfrac{m}{mg-kv}\dfrac{dv}{dt}=1

両辺を tt で積分すると,

mdvmgkv=dt\displaystyle\int\dfrac{mdv}{mg-kv}=\displaystyle\int dt

よって積分定数を CC として,logmgkv=ktm+C\log |mg-kv|=-\dfrac{kt}{m} +C

ここで,t=0t=0 のとき v=0v=0 より logmg=C\log mg=C

よって,さきほどの式を vv について解くと, v=mgk(1ektm)v=\dfrac{mg}{k}(1-e^{-\frac{kt}{m}})

注: v=mgkv=\dfrac{mg}{k} (定数)という関数も解ですが,t=0t=0 のとき v=0v=0 という初期条件を満たさないので他の解を探しました。

物理の基本方程式の多くは微分方程式です。

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